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8.マリオンの事情


「ただいま。グリーン母さん帰ったよ」

グリーンは、また大はしゃぎだ。


「もうこの子ったら、お父さんなんだからお婆ちゃんに抱き着かないの」


双子は、リッチーの足に絡みついていたが、腕を広げるマリオンを素通りしてユームンに抱き着いた。

ちょっと寂しそうなマリオンだった。


「ハーズレの町で聞いたんだけど、1か月も閉鎖されたんだって、それも疫病だとか言っていたけど、誰も真相を話してくれないんだ」


「世の中には、本当の事を知らない方がいい場合もあるんだよ」


「子供じゃないんだからさ、もしだよ、そんな事がまた起こっても親父の俺が知らなかったら誰がこの子たちを守るの」


「ああそうだな、でも二度と起こらないんだけどな。それでも聞く?」


「リッチー何かやったな」

リッチーは、頭をぽりぽりしながら、マリオンに言った。

「ほら、お前も肝試しに食ったクサイアの干物があったろ。一日白目剥いて気絶したやつ」


「あれは、人間が食ったら、と言うより嗅いだら絶対にいけないものだよ。口の中にあの臭いが1週間は残るんだ。

脳の中で、この臭いを我慢しようと言う思いと、もうこれは普段の臭いと思おうと、葛藤するんだよ。

この臭いが普通ならきっと幸せだろうなーと思ったら、そこで人生終わっちゃうんだよ。

まさか・・・・」


「うん、まあ、ちょっと三日ほどS級冒険者を漬けておいたら、幸せ―な顔になっちゃって街に帰っていったんだ」


「まさか、3日も漬けて町に帰したって事?、あれ、ウXコとオシXコを数百倍、3日漬けると数千倍?に濃縮した臭いだよ。

クサイア3日漬けの生人間が街を歩いたら、想像しただけでリバース(嘔吐)するぞ」


「まあ、そんな事がちらっとあって、“S級冒険者”と言っただけで子供が百叩きの上1日中門に吊るされたそうだ。本当にあの町の人間は野蛮だな」


「ハーズレの町最強の冒険者クラン・ジェノサイが壊滅したのは何で?」


「本当は、その冒険者の為にクサイアの野ツボ、いやクサイアの泉を造ったんだが、5m手前までは来たんだが、そこで休憩されてしまってな、昼時にちょっと半生の干し肉を食べだしたんだ。クサイアは、肉(たんぱく質)を分解する細菌だからそれに当たったんだろう。

勝手に来て帰れなくなったんで、ノブアロ呼んで街まで送ってやったんだぞ」


リッチーは、ふーと息を吐きだしまた喋り出した。

「全く!、ハッチ・ジョーとニージマンが数万年掛けて毎日継ぎ足しして作ったクサイアを分けて貰ったのに使わない訳に行かんだろ。

この森や地下壕には、虫も変な細菌も寄り付かないし、特にスケルトンの最大の敵である骨を溶かすバクテリアも寄ってこないのは、このクサイアがあるからなのに。もし二人に臍曲げられたら、皆虫食いになってボロボロだぞ。

S級冒険者が来てくれて本当に助かったよ。やっと二人に感謝状を渡せたよ。」

「それより、旅はどうだった」


「ああ、みんな死んでたよ。祖父母と実母にはお参りできた。

当時執事だった人から話が聞けたんだけど、どうも俺を逃がす為に自ら命を絶ったようだ。

自分たちが人質になる可能性があるからと、俺が生きていると信じてたって言ってた。

それから、この辺に子供のころ住んでたと誤魔化していたんだけど、執事にはばれてしまって、この胸にある紋章は、王家の者にだけ現れる紋章なんだそうで。

それと、この短剣と指輪を渡されたんだけど分かる奴いるかな」


リッチーは、徐にマリオンが持つ短剣を持った。

中々しっくり吸い付くような短剣だ。

それを見たリッチーは、100年前に森の前で拾った王子を思い出した。

「おーいブルー、100年くらい前森の前で白いもっこりタイツ履いた奴拾ったろ、あいつ輪廻に戻ったか覚えてるか」


「あいつは、今イエローの所で修業してますよ。昔いろいろあって王城から追い出されたんで名前を変えてましたね。」

暫く考えたブルーだったが、

「あ、思い出した。マスターがモッコリ・モッコリって言っていたんで、イエローがモッコリーって名前をつけたんだ。イエローに言って連れてきますね」

暫くしてモッコリーは現れた。

「こんにちわっす。マスター何の御用でしょうか」


「この指輪と短剣を見て欲しい。」

モッコリーが手に取り話し始めた。


「これは、代々伝わる王家の秘宝ですね。これはとんでもない代物ですよ。

先ずこの短剣は、主の短剣と言いまして、先代の王が認めたもの以外が柄の部分を持つと

干からびて骨になると言われています。

王位継承者は、命がけでこの短剣を握り、何も起きなければ王として名乗り所有者になるんです」


「え?骨になっちゃうの」

リッチーは、短剣を持ちながら

「あ、私、骨だった。」

つまらない小芝居でした。すみません。


「次にその指輪ですが、厄災の宝物庫の鍵です。」


「なんだその物騒な金庫は」


「その金庫は、王のみが開けられる金庫で、オリハルコンとアダマンタイトの合金ではないかと言われていました。とにかく固くドラゴンのブレスでも焦げ跡一つ付きません。

後、金庫を守る番人はいません。その指輪を持つものがいないで近づくと干からびて骨だけになってしまうそうです。

その金庫が厄災と呼ばれるのは、この金庫は地下にあり、真上に一般的に使われる国の金庫があります。

その真上の金庫に10万枚の金貨、10万枚の銀貨を必ず1月1日に置くといつの間にか下の金庫に移ります。

王が下の金庫から出して上に置けば普通に使えるので儀式と呼ばれています。

この儀式をしないと厄災が起こります。」


「おい、見て来たような言い方だな」


「ええ、私の父親が迷信だと言い出し、1月1日にお金を置かなかった次の日、金庫から黒い霧が発生し、王城の上に大きな黒い煙が立ち昇りました。

その時は、偶々北から南に強い風が吹いていたので、南の穀物畑の方に飛んで行きました。

その後、千キロ以上つまり隣の国に至るまで、黒い大地になり、そこに居た人々は、全て干からびて死んでしまったのです。

死亡者の数は、数十万か数百万を超えたかあまりに膨大過ぎて分かりませんでした。

お酒を飲んでバカ騒ぎをしていた父は失脚し、父の弟つまり王弟が王となりました。バカ王の息子として私も父・母と並んで斬首となる予定でしたが、母が手回しをして逃げたのですが追手に追われる生活が嫌になり、この森の前で命を絶った訳です。」


「モッコリー、そうするとこの指輪がここにあるという事は、その金庫には毎年十万枚の金銀が吸い込まれているという事か?」


「今まで厄災の話は聞きませんからそうなると思います。

ちなみに当時の国家予算が100万枚くらいでした。今も国の経済状況は変わっていませんし新しい金山が見つかってはいないので、同じかそれ以下の予算だと思います。

つまり、毎年国家予算の一割が減っていきますから、マリオンが16年前に失踪したら160万枚が入っていることになりますね。

当然国は、それを補うため1割の増税を課すと思います」


マリオンが、

「何かそっと短剣と指輪を返して来たいですね」


「それは、無理です。その指輪と短剣が揃わないと金庫は開きませんし、誰かに渡したいときは、指輪と短剣を持ち、その人と手を合わせ“汝に、国の正しき番人を命じる”と言葉で無くとも良いのですが、本心で念じないと渡すことが出来ません。

すると胸に国王の印と呼ばれる痣が出来ます」


マリオンは、2歳で来た時既に痣があった。本人は覚えはないだろうが、王様は本気でマリオンに後を継がせたかったようだな。


「マリオンが死んだらどうなるの?」


「引継ぎをしないで死ぬと一番血の濃い子供に移ります。恐らく双子のどちらかになります」


「じゃあ、双子が死んだら?」


「どちらかと言うと母方の男子に行く傾向が強いので、ユームンさんの兄弟、従弟ではないですかね。ここら辺は、事例が殆どないので確かな事は誰にも分かりません」


ブラックが出てきて皆に聞こえない様に小声で話し始めた。

「付けていた護衛からの話ですが、マリオンと話した元執事は、その後即殺されました。その後から、3日に一回は、敵の攻撃を受けました。

執事を張っていれば辿り着くと思ったのでしょう。

持っていた装備からすると生け捕り目的と思われます。

既にマリオンが生きていることは、敵にバレました。

ここにいる事は分からないでしょうが、ハーズレの町にいる事は分かったと思います。」


「マリオン、ちょっとまずい事になった。公爵派か宰相派かは分からないが、追手にマリオンが生きていることが知られてしまったようだ。

暫く、対策が出来るまでは、家族全員ここに居るしかないな」


「そんな気はしていたけど、いつもブラック達には、頭が上がらいないな

しかし、何時までもこうしていると国民にしわ寄せばかり行ってしまって

この国は駄目になってしまいそうだ」


確かに、これは何らかの手を打たないと拙そうだが、相手の情報もそうだが主だった行動が無いと指針も定めにくい。

幸か不幸かマリオンがこの辺にいる事が相手にバレている事、金鉱のため、必ずここを攻めて来る事から、情報が寄って来る。


ここは、急がば回れで、出方を見てから考えないと徒労に終わりそうだ。


日記には、何も解決できていないが、急がば回れと記述した。



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