3.マリオン
あれから時が経ち、マリオンは15才になった。
乳母は、暫くして恋人が出来て、子育てを離脱し、グリーンが継続して育てた。
乳母の彼氏は、1200年前の演劇役者で、鎖骨の湾曲がセクシーなんだと。
我々では、年の差1000歳以上は、珍しくもないが、御盛んだ。
読者の皆は、マリオンが凄い達人になったり、野山を疾走する情景を浮かべただろう。
全く、あり得ない。
まず、スケルトンなんて、何千年もの間、死んでも生きてるのに自己中でない訳がない。
「グリーン、マリオンが饅頭みたいになっているんだが、食べ過ぎじゃないのか」
「私が作る料理が美味しいって食べちゃうんです。もう、本当にこの子ったら。」
頬を赤らめるような仕草をしているが、頬など無い。
あー、やっぱりこうなったか、丸投げは拙かったか。
「少し運動したらどうだ。なあ、ゴールド」
「拙者も何度も誘ったのだが、グリーンがなあ過保護過ぎて」
「何言ってるの。5才の子に腕立て1000回とか腹筋1000回なんて出来る訳無いでしょう。うちの子が怪我でもしたらどうすんのよ。うちの子に近寄らないで、この脳筋スケベ!」
うーん。そろそろ乳離れさせないと拙いな。
「ブラック、この前、殺さず返してやった冒険者がいただろ、あいつ等とは繋ぎが付くのだろ。」
この冒険者は、“ノーブロークンアロウ”と言うF級冒険者で、枯れ木の森に来て、“リッチ出て来い膾にしてやる”と騒いでいたので、シルバーが対応した。
ノーブロクンアロー通称“ノブアロ”は、男一人、女三人の見た目はいわゆるハーレムパーティーなのだが、16才で男女関係はないらしい。
女の子に格好いいとこ見せようとしたのだろう。出て来ないと思って帰る予定だったらしいが、偶々、シルバーが通りかかってしまい。
試し切りの一瞬で、全員の鎧などを切って、真っ裸にしてしまった。
「膾にすればいいのか?」
とシルバーが聞いたら、“ジョー”っと全員黄色い噴水ショーになってしまった。
ブラックが、“ヘタレだが使い道がありそうだ”という事で、以来、使い走りにしている。
ちゃんとお金は、多めに払っているので、彼らにとっても大事な稼ぎになっている。
「は、ノブアロは、何時でも呼び出せます。いう事は何でも聞きますが、相当ヘタレですよ。」
「構わん、取り敢えず、年齢も近いし、マリオンを預けて鍛えさせよう。
あの子も生きた人間だ。そろそろ、人里に帰さなければなるまい。」
おろおろしながらグリーンが
「そんな。あの子はまだまだ子供ですよ。この前お乳を離したばかりなのに」
お前に乳はないだろ。これ以上話すと、お腹を痛めたとか言いそうなので、
「15才と言えば、人間では成人だ。これ以上ここに居れば、人間としての人生が送れなくなってしまうぞ。親がそんな事していいのか?グリーン」
グリーンは、黙ってしまった。よし、上手く行った。
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「旦那、今日の呼び出しは何ですか、酒はこの前樽で持ってきましたよ。」
ブラックの横に私とマリオンが現れ、話をした。
「こいつの事を頼みたいんだが、名はマリオンと言う。15才童貞彼女無しだ。
年齢も近い、ちょっとヘタレだが、一緒に冒険して鍛えて欲しい」
最初、フルプレートアーマーと自分と同じぐらい大きなリュックを背負ってきたが、動けないようだ。グリーンお前どこの“おかあ”だ。
皮の軽鎧と1日分だけの食料を背負わせた。
「旦那、彼は、人間か」
「彼は、普通の人間だ。過去に訳アリだが、余り詮索しないでやって欲しい。
彼が普通に暮らせるようになれば、私は何も言わん。
無理にとは言わんが、友人になってくれるなら直嬉しい。
但し、彼を囮に使ったり、不誠実な態度があった場合は、こちらの住人にして、永遠に後悔する事になるからな。」
ちょっとだけ脅して、彼らに連れて行って貰う事にした。
「リッチー、今までありがとう。グリーン母さん、今までありがとう。
きっと冒険者になって恰好良くなったら会いに来るね。」
とさばさばした雰囲気で、マリオンは森を出て行った。
子供は、小さいときはいいが、やはり大きくなると自分で羽ばたかないとな。
暫く、ブラックたちに監視させておけばいいだろう。
子育ても終わり、紅茶を飲みながら一日を振り返る。
今日の日記はここまでだ。