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2.リッチー?


ここは、人里に近い森の中、20km程入った所に半径20kmが枯れ木になった場所がある、そこには、生きた人は誰も近寄らない建物がある。

30m四方位の石で積み上げられた3階建ての建物だ。


グリーンが執務室にやって来た。


「マスター侵入者がここまで来ます。人間のようですが殺して仲間にしますか」


「え?ここに人間は近づけないはずなのだが」


「二歳の子を抱えた母親ですが、誰かに切られたのか、背中が真っ赤です。恐らくあと数時間の命と思われます。」


「あ、灰色ね。面白いから俺が見に行ってくるよ」

そう言って、門の外に行くと、母親が倒れていた。

横で2才児くらいの子が、“マーマ”と言いながら母親を揺すっていた。


「おい、どうした。ここは、人が来る所ではないぞ」


最早母親は目が見えていないのだろう。

「お願いします。この子を助けてください。“ごほごほ”

この方は、オウトン王国の第三王子マリオン様と申します。

刺客に追われ、ここまで逃げてまいりました。

“ごほごほ”私はもう長くは生きられません。

この森はリッチが棲むと言われています。

どうかこの子をお助け下さい。

どうか、リッチからリッチから・・・」

そう言って、息絶えてしまった。

折角だからゾンビにしてやった。

小さな子供が、“リッチー、リッチー”と言って纏わりついて来た。


「あー、お前マリオンだっけ、どうしたいと聞いても分からんか、・・・」

どうしようか考えたが、人里に帰すと殺される可能性が高い。


そうするとブルーが、

「私にくれませんか、幼児は、骨パウダーにするときめが細かいので、いい艶が出るんですよ。やる時は、毒で痛くないようにしますから」


こいつ、もう殺る気満々だな。


「ゴールドはどう思う」


「そうですね。この年から私が鍛えれば、軍団の一員くらいにはなれるかも知れません。やはり、男は男同士、鍛えて、鍛えて、ムキムキしかないでしょう」


こいつは、単に鍛えたいだけだな。脳筋だけど、お前筋肉ないし。


「ブラックは?」


「この年では酒は飲めんしな。そうだな、技を仕込んで巾着切りでもやらせるか」


おいおい、いきなり犯罪者かよ。


「シルバーは?」


「そうだなー、ゴールドと同じかな。やはり男は、切る快感を覚えるのがいい。只ブルーが綺麗になるならそれも有りかな」


こいつ何言っての。もういいや。


「まあ、ここ百年暇だったし、育ててみるか。グリーンこっち来い」


「はい、何でしょうか」


「グリーンは、子育てしたことある?母親が3年くらいしたら変わってくれると思うから

やってみない。」


そう言って、3年間丸投げにした。

いつも、俺の周りをくっ付いてくる。

“リッチー”、“リッチー”と言いながら膝に乗ってくるようになった。

ご飯のお世話は、グリーンがしてくれる。

病気になれば、イエローにお願いした。


まったく!、子供はすぐ熱出すし、執務室でオシッコするし、この前は、クレヨンで床に絵を描かれた。

落とすのに大変だったよ。


「リッチーだよ。今日は文字の勉強しようね」

でもかわいい。やっぱり子供は、5才までだね。


5才になり、母親も3年経ち、骨だけだがグリーンと一緒に面倒を見ている。

相当生意気になってきて、走るわ、壊すわ、もう面倒なので二人に丸投げした。

あー、俺のかわいいマリオンちゃんがどこ行ってしまったんだろう。


母親から当時の状況を聞いてみようと思ったら、彼女は母親では無かった。

乳母だったようだ。


側室の母親から託され、ここまで逃げてきたようだ。

当時、国王が病に伏せ、余命幾ばくもなく跡継ぎが誰かとなった。

王国名オウトン

第一王子アインは、第一側妃の息子6才

第二王子ダビンは、王妃の息子5才

第三王子マリオンは、第五側妃の息子2才

だった。

他は姫君だったので問題は起きなかったが、アインには宰相派が付き、“第一王子が慣例から言って正当な跡継ぎ”と主張した。

それに対抗して、公爵家が中心となって、“血筋的にダビンが王家を継ぐべき”と主張した。ここで二人のレースになると思われたが、王が寝床で“マリオンを次の王とせよ”とぶっこみが入った。

第五側妃は、堪ったもんじゃない。即国王に訂正を求めたが、小声で“男が王位争いもせず残ると内乱の種になる。運が無かったと諦めよ”と言われた。

マリオンの実家は侯爵家だが、兄夫婦が昨年馬車で移動中、盗賊に襲われ亡くなった。家は侯爵でも既に継ぐものは無く、王太子が決まればマリオンを侯爵家の跡取りに降家させる話になっていた。

今現在の2歳のマリオンには、後ろ盾どころか何も無い。

側妃は、強引に暇を貰い実家に帰ろうとしたが、途中で、おそらくどちらかの手の者と思われる追手が迫って来た。

分からない様に乳母の私と王子を近くの森、つまりここに逃がした。

追手も気が付き、2人がこちらに迫って来た。この森に入る手前で切られたが、この森にそのまま入ると追手は、付いてこなくなった。

母親がどうなったかは分からない。


まあ、今となっては、どちらかが王になったのだろう。

この子は、最早ただの子供だ。


「リッチー、だっこ」


「おー、かわいいなーマリオン。お父さんが抱っこしてあげまちゅねー」

もう、目に入れても痛くないかわいいマリオンだった。


俺の名前は、いつの間にかリッチーになっていた。


今日の日記は、ここまでだ。



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