16.王国オウトン
リッチーは、今の王国の現状をマリオンに話した。
公爵軍と王国軍は内乱の末、第二王子ダビンは看病むなしく死亡し、これによって、公爵軍は解散寸前である事。
王国軍は、ほぼ壊滅し、1万ちょっとしか残らなかった事。
ゴーツク王国軍40万があと1週間の距離まで来ている事。
ゴーツク王国は、オウトン王国の全国民を底辺奴隷として死ぬまでこき使う事。
国王アインは、既に王都を離れ、国外に逃げようとしている事。
国王軍は既になく、王城は4千の兵がゴーツク王国と玉砕覚悟で戦おうとしている事。
を話した。
マリオンは、一日膝を抱え考え込んでしまった。
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「リッチー、今までありがとう。最後にお願いがあるんだけどいいかな」
「おい、何を言い出すんだ、まさかお前王城に行って玉砕するつもりか」
「ああ、なんだかんだ言っても俺は、王子だったんだ。国民が奴隷になるのを見ながら生きろと言われても無理だよ。
俺を逃がしてくれた、母さん、お爺ちゃん。それでも国を守る兵士達。
何があっても俺はこの国の王子、逃げ出すことは出来ない。
リッチー頼むユームンと子供たちを守ってくれないか。
御願いします。」
そう言ってマリオンは、頭を下げた。
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「なあ、マリオン、俺たちは家族だよな。お前だけ行かせらると思っているのか」
「リッチー分かってくれ、俺は行かねばならん。引き留められても意思は変わらない」
「いや、引き留める気はないよ。一緒に戦おうと思ってね」
「え?いいの。下手すると死んじゃうよ。あ、死んでたのか」
「そのつまんないギャグいいから、ここシリアスな場面だから」
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既にゴーツクの先兵たち5万は、城門の1km先の広大な草原に到達していた。
王城からもその全容がわかる。
野営テントを貼り、本軍が来るのを待っている状況だ。
「王太子が到着するまで、絶対手を出すなとの事だ。いいな」
「いや、あれだったら俺達だって一日で落とせますよ」
「そんなの知っている。王太子も知ってるから手を出すなと言っているんだ。もし手を出したら、一族郎党首を飛ばされるぞ。
きっと、前の蛮族と同じように一人ずつなぶり殺しにするつもりだろ。」
「くわばら・くわばら」
3日後には全軍が集結する。
・・・・・マリオンは、・・・・・・・
マリオンは、リッチー達と共に王城に来ていた。そのスケルトンの数2万体
マリオンは、守備隊長を見つけ、皆に集まるようお願いした。
後のスケルトンを見てビビりながら皆を集めた。
「我は、前国王第3王子、マリオン・オウトン
この短剣と、前国王に授かった指輪に誓おう。
今ここにこの国の王となり、皆の者と戦う事を。
後ろにいるスケルトンは、共に戦ってくれる私の友人たちだ。
どうだ、旗印があった方が気持ちがいいだろ。
みんな最後まで一緒に戦ってくれるか。」
「「「「おー!」」」」
「我らオウトンを守る兵士、逃げも隠れも致しません。最後の一人になろうと足が折れようと腕が捥げようと相手の喉元を食い千切って一人でも道連れにしてあげますよ」
死を覚悟した兵士は強い。ただひたすら倒すのみ。
ここで、ブラックが20人ほどを縄で縛って連れ出した。
「何をする。こいつら敵の手先だ。助けてくれ」
「煩いから黙らせろ。こいつらの顔見た事ある奴手を挙げろ」
・・・
「誰も挙げないな、こいつらは、ゴーツク王国の間者だ。未だ居るかなブラックの目は、嘘を見抜く目を持っている。皆を見回すぞ」
嘘である。単なる揺動だ。
3人程が後ずさりした。
「そこと、そことそこ」
結局25人が間者とわかった。牢屋にぶち込んでおくことにした。
しかし、王城には、4千いる内2千は、先の戦いで負傷した兵士たちだ。
負傷後2,3か月は経っているが、杖をついたり、立っているのもやっとの者もいる。
「負傷している者、手をあげてください。腰痛でも何でも少しでも負傷していたら手を挙げてくださいね。これから戦ですから」
イエローのグループが手を挙げた人たちを治し始めた。
目が見えないもの、右手が無い者、足が片方ない者など様々だが、1時間してみると誰も負傷者はいなかった。
「奇跡だ。欠損まで治せるなんて、今いる大聖女様でも直せないのに。それを全員治してしまうなんて」
「後は居ませんか、じゃあ最後に」
“エリア・ハイヒール”
そして全員が元気になった。
「じゃあ皆さん食事を摂って決戦に備えましょう」
グリーンたちのグループが大釜を王城から持ち出し、煮炊きを始めた。
皆がウトウトし始めたが、見張りはスケルトンが行うので床に寝始めた。
そこには、今生では、聞いたことのない美声で歌姫が歌っていた。その夜には、横笛と古琴が奏でられ、皆その音色にうっとりしていた。
骨しかないのにどうやって歌っているのだろうか。
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・・・・ゴーツク陣営・・・
「何だ、あの美声は、俺絶対あの娘貰う。」
「いや、あれは、隊長の俺が嫁さんに貰う」
「何言ってんすか、嫁さんいるでしょ。鬼瓦煎餅に似た美人さんが、歌姫は私のものですよ」
「「いや、俺が・・」」
もう先陣の者達で大盛り上がりになっているが相手はスケルトンである。
・
陣営は、ほぼ40万人が揃い、王太子も本陣に入った。
夜になり、王城から歌姫の美声と美しい楽器の音色が陣営にも聞こえて来た。
「こんな歌姫がいるとは、妹は言わなかったぞ。これは傷つけずにお持ち帰り一択だな。これがあるから侵略は辞められんのだ。義弟などどうでも良いわ。毎夜聞いて寝たいものだ。今回の最高の宝物だな」
そして決戦の日はやって来た。
前線には5万のゴーツクの兵が並び進軍してきた。
その横には、城壁崩しの大型投石機が前に出された。
前衛歩兵連隊5万率いる隊長が、叫んだ。
「今から投降するなら歌姫を連れて来い、楽団も付きでだぞ。そうすれば最初の百人は殺さない。いいか百人だぞ」
朝6時、そこにぞろぞろと40人のゴールドの部隊と10人のグリーンの部隊のスケルトンが現れた。
「今日の訓練は、いかに早く殲滅するかだ。君たち新人の実力では、30分以内に殲滅できれば、ゴールド師匠から黄金風呂の使用許可が下りる事になっている。
グリーン師匠の部隊は、矢を全部手前で撃ち落とすのと、重機類などを殲滅するのに5分以内と言われてきた。成功すれば野外訓練に移る許可が下りる事になっている
皆、日ごろの成果を発揮するように」
「「「おおー」」」
「あのスケルトンたち何言ってんだ。30分に内に殲滅だと。全員配置につけ、スケルトンを粉々に磨り潰し、城内に入るぞ。
銅鑼を鳴らせ、投石機に石を詰めろ」
“ガラン”・“ガラン”・“ガラン”
第一陣の戦いが始まった。
「「「「ヘルファイアー」」」」」
グリーンのチームが最上級魔法を投石機にぶっ放した。大型の投石機は1分で煉獄の炎で焼き尽くされた。
後方に陣取る弩弓隊5千は、矢を番え始めた。
「「「「シンクロ・アースストーム」」」」」
5人のグリーンのチームは、同調形の大規模石礫が宙を舞い殲滅した。そこには人のいた形跡すらなかった。
「失敗しちゃった。1万人消し飛んだわ。」
「だから、5000人くらいなら2人でいいって言ったのよ。あーあ外いけないかも」
「俺たちどうすんだよ。5千人減っちゃったじゃないか」
「仕方ない。20分で殲滅しろ」
ヨワッピーは、閃光一閃10分で100人を倒した。解体屋ドンさんは200人を倒した。
新人でも先輩たちは、10分で39、700人を38人で倒してしまった。一人頭1000人強である。
「悪いな、ヨワッピー、ドン 他全部切っちゃって、数足んないよな」
「まあいい、ヨワッピー、ドン以外合格とする」
・
・ゴーツク陣営
「おい、前衛がいない、投石機が炭になってるぞ。王太子に報告しろ」
「王太子、前衛が消えました」
「はあ、お前目が悪いのか、今いたろ目の前に、消えるわけ・・・いない」
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「全軍戦闘配置に付け、重騎兵10万前へ矢の陣形へ、中に歩兵部隊13万、両側騎馬隊10万全軍前へ進め、弩弓隊1万城門へ向け発射準備、後方魔法部隊1万援護射撃準備、射程に入り次第発射しろ 前進!」
城門から20人ほどスケルトンが出て来た。
「おい、マリオンの部下用に朝飯の用意しろ、俺達飯食ったのいつだったか忘れてしまってな。飯の作り方も分からん。頼むぞ」
「「「はーい」」」
新人たちは、飯づくりに帰っていった。
スケルトン達は、若手と呼ばれるグループの一員だった。
「だいたい、若手って3000人いるんだよ。くじ引きで20人に入るなんて本当付いてねーな。大体直ぐ若手が行けとか言ってさ、面倒くさいだけじゃん。
3000年経って若手じゃあ何時になったら中堅になれんだよ。」
「じゃあ、ジャンケンで負けた人から頑張るっていうのはどうだろ」
みんなでジャンケンしたらアイスドールが負けた。
「もう、面倒くさい」
“天の雫”
「やばい、みんな飛べ!」
彼女の人差し指から一滴の雫が地面に落ちた。
“ぴきーん”と音がして、一瞬のうちに地面は凍りついた。
前から来る重騎兵・歩兵は、凍ったまま固まった。
横から来る騎馬兵は馬ごと凍った。
辺りは、全て彫刻の様に固まっていた。
上に飛んだスケルトンが地上に降りた。
“ストーンボム”
“ドゴーン”地面は震度4の地震程揺れ、彫刻達は粉々に砕けた。
7万人は死んだろうか。
王太子が、
「何が起こった。また消えたぞ。砂の様に崩れたぞ。一体我々は何と戦っているんだ」
次に負けたのは、サイゾウ。彼は刀を使う居合斬りの達人だった
サイゾウが刀の鯉口を切った。
「一閃!」
“シャキイーン”
彼が刀を振った一線上遥か先まで、全てが切られていた。あるものは、胴から上半身がずり落ち、頭が、半分にズレ落ちる者、残20万人となった。
次に負けたのが、ドラゴニュートのスケルトンのドラガー、彼は、強靭な体躯でブレス系が得意だ。
「おい、ドラガー。王太子は消し炭にするなよ」
「ああ、だが人数がちっと多いな。ダラガーよ、一緒に極大ブレスぶっ放すか」
ダラガーは、ドラガーの双子の弟だ。
「「エクストーリーム・ビーム・ブレス」」
“キーーン”・・”ズドゴゴーン”
彼らの口から白い閃光が左右同時に放たれた。
辺り一面が爆風で吹っ飛んだ。王太子も爆風で後ろに10m吹っ飛んだ。
残8万人となった。
腰を抜かした王太子は、尻もちをついた姿勢で後ずさりながら号令を出した。
「ヒー、撤退だ。全軍撤退せよ」
次に負けたのが、天空の剣アクレアリオン
1000以上の剣を自在に操り滅殺する。
「飛べ、千剣万化」
死んでいる兵士たちの剣が宙に舞う。
チリジリになり、逃げ惑う8万の斬兵に襲い掛かること10分、王太子を残しゴーツク軍は全滅した。
スケルトン皆で王太子モットーを囲んだ。
「ヒー、化け物だ。40万の兵が1時間で消えてしまった。
助けてくれ、もうしないから家に帰してくれ」
スケルトンを代表してアクレアリオンが話すことになった。
「うん、いいよ帰って。馬も残してあるから乗っていってね。
それから、マスターからの伝言なんだけど、いい?」
「は、はい」
「うちの息子マリオンに手を出しそうだから、今度挨拶に行くね。
粗相があったら更地にして皆この世に居なかったことにするからよろしくね。
って言ってたから伝えてね。」
そう言って皆は王都に帰っていった。
オウトン王国VSゴーツク軍40万の戦いは終わった。
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