12.勇者とのお遊戯会
決戦に入ろうとした時、リッチーの家の二階から白旗が挙がった。
「おい、始まっていないのに負けとはどう言う訳だ」
良く見るとそれは、白いパンツだった。
それを見たメリエンヌは、顔が茹でダコの様に真っ赤になった。
「いやーやめて、何でそんなところに干すのよ。もう信じらんない。
・・・・・・・・やっぱりリッチは敵だ。絶対殺す」
マリオンが叫んだ。
「メリエンヌー、茶色い染みも黄色い染みも綺麗に落ちたぞー」
後でユームンから”何でこんなところに干すのよ。早く裏干しして“と怒られていた。
「何か行き違いがあったようだ。気にせず始めよう」
「ああ、いいぞ、こちらが一人でも負けたらそちらの勝ちでいい。ダーク軽く相手してやれ」
第一回戦 ダークVSブラックの新人ディースイ
ダークは、黒い煙幕を貼り、“ぼー”と立っているディースイの後ろに音も無く立ち短剣で首を切ろうとしたが、空振りした。
後からディースイは、「おい、そんなゆっくり動いてちゃ牛も逃げるぞ」
振り返りざま短剣を振ったが、後ろから「だからそんなゆっくりじゃナマコも逃げるぞ」
ディースイは後頭部を軽く“トン”と叩いた。
ディースイは、300年前幻のディースイと呼ばれ、真昼の王城ですら誰にも知られず、王様の首を刈れるほどの暗殺者だった。
存在すら悟られない彼は、伝説にもならない幻として誰も知らない存在なのだ。
黒い弾幕が晴れるとダークは倒れ、ディースイが立っていた。
「何か、足を滑らせたようで、頭打ってましたよ。では、ブラック師匠の所に帰りますね」
と言ってディースイは帰っていった。
・・・・・・・
「何でダークが足を滑らせる?あり得んだろう。アイツは、暗殺王だぞ」
「滑らっしゃたものは仕方ないね。次行きましょう」
聖騎士王バカ―カスVSゴールドの若手解体屋ドンさん
「何処からでもかかってこい。スケルトン如きに後れを取る私ではない。」
バカ―カスは、相手の一撃をシールドバッシュで吹き飛ばす構えだ。
解体屋ドンさんは、木槌を軽く振った。
“ズドーン”
バカーカスは、星となった。とまではなかいが、枯れ木の森の木に激突して気を失った。
「いやー、軽い人だな。もっと食べた方がいいぞ。
じゃあ師匠と一緒に腹筋の時間なので帰りますね。」
解体屋ドンさんは、ゴールドの所で300年毎日筋トレ?骨トレをしていた。
彼は、王城の石垣を3日で立ち上げ、一日で解体できる伝説の石工職人の名工だった。
彼が持つハンマーは、魔法すら叩き割る。ドラゴンなど片手でペシャンコにする。
「普通木槌で人が飛ぶか?」
「気を取り直して、次行って見よう」
大魔導士ビューニーVSグリーン新人アキュア
「アキュア久しぶりだから軽くな」
「何、名前が300年前の史上最強の超天才大魔導士と同じだからってスケルトンが強い訳無いでしょう。いくわよ」
“全ての火の力よ、我に宿りその力を顕現せよ。ヘルファイアー”
魔術の伝説級魔法ヘルファイアー。ターゲットを焼き尽くすまでその炎は絶対に消えない炎獄の最大魔法で習得者は、現在彼女のみだ。
“リムブ”
一瞬にして炎獄の炎はマッチ棒の火の大きさになりアキュアの人差し指で小さく燃えている。
アキュアは、息で“フッ”と消した。肺も無いのに息をどうするんだろう。
「ヘルファイアーは、一か所だけだと逃げられちゃうから8方から同時に発動しないとだめよ。」
彼女は、手をかざした。無詠唱魔法。
瞬時にビューニーの周り八方向から先ほどの数十倍の大きさで威力も数百倍ありそうな炎獄の炎が襲った。マントをちょっと焦がし、止めた。
無詠唱魔法は、詠唱魔法に比べ威力が大幅に落ちてしまう。ただアキュアの場合これでも本気で放っていない。
「ね、分かった?逃がしちゃ駄目なの。グリーン師匠は、この程度なら千個瞬時に出せるわよ。もっと精進しないと歴史に名を残せないわよ。
あ、お使いの時間だからごめんね。じゃあ」
そう言ってアキュアは、帰って言った。
「あちっ、あちっ、マントが焦げちゃった。あれは私が尊敬するアキュア様以上の大魔導士だわ。グリーン師匠ってどんな化け物なの。勝てる訳ないじゃない」
「お嬢ちゃんそんな短いスカート履くからパンツ焦げてるよ。ユームンのパンツもう透けてるか、紐しかないよ」
「戦意喪失みたいだから、次行って見よう。」
大賢者アヌベスVS不出来の弟子オアーホ
「オアーホ、実験じゃないからね。派手にやったらだめだよ」
「師匠大丈夫です。てんとう虫君しか持ってきていませんから」
「また、大層な名前だな、100年前の史上最強の錬金術の天才大賢者オアーホ様と同じとは、私はオアーホアカデミーの主席卒業生だぞ。名誉のためにも骨を粉々にしてあげよう。
出でよ。暴風竜アソブリュート あのスケルトンを踏みつぶせ。」
暴風竜アソブリュートは全長30m体高15mの竜だ。
こちらに迫る竜。
オアーホは、てんとう虫君を放ったと同時にてんとう虫君は、100mの大きさになり、一瞬にして竜を食べてしまった。
食べ終わると1cmにも満たないてんとう虫に戻りオアーホの指に止まった。
「また失敗だよ。相手が30mなら10mくらいで全部食べちゃわないと格好良くないでしょ。小さいのに全部食べれるのがいいのに。どこで計算を間違ったんだろう。」
「あ、まだやる?ちょっと調子が悪そうなので、寸止め出来ないで食べちゃいそうなんだ」
「いえ、結構です。私の負けです」
「じゃあ師匠、お掃除に戻ります」
「ああ、埃残したらお尻ぺんぺん1000回だからな。100年近くも掃除やっていて未だに端っこの隅に埃が残るんだから本当に使えない奴だ。お前脳筋だろ全く」
最早、勇者アクアリス何も語らなかった。
「じゃあ次行こう」
剣聖カッティーVSシルバー所属若手タケンゾ
勝負は一瞬だった。
カッティーが素早い出足で、タケンゾの胴を切り裂く。
カッティーが通り過ぎるとカッティーが痙攣しながら倒れた。
タケンゾは一歩も動かず怪我もない。
カッティーは、オシッコ漏らしながら恍惚の表情をして気絶した。
カッティーは、気絶する寸前、「こんなの初めて」と言っていた。
至るとこから、小さな血糊がじわーと浮いて来た。
「マスターすみません。便所掃除が終わっていないので帰ります」
「ああ、シルバーは問答無用で切り刻むからな。切ってからごめんするタイプだし早く帰って磨き上げろよ」
「じゃあ、次行って見よう。しかし、もうパンツは紐しかないな」
大聖女メリエンヌVSイエロー所属若手マリエッタ
「マリエッタ、とにかく優しくな。優しくだぞ。いつも厳しくイエローにけちょんけちょんにやられているのは知っているが、憂さ晴らしは駄目だぞ」
「伝説の大聖女と同じ名前なの。死んだ人まで生き返らせた伝説が語られ、聖女大学の教本を書いた。いわば聖女のお手本と同じ名前なんてどこまでふざけてるのここのスケルトン。だいたいスケルトンの弱点は、聖魔法よ。私は、現世界の聖魔法の最高位にいるのよ。」
“聖なる輪よ、全ての悪を滅せよ。エクストラホーリーサークル”
マリエッタの前で光の環は踊り出した。嬉しそうにマリエッタの手の平に吸い込まれていった。
「中々上手よ。ただねあなたの魔法には、嬉しさが無いわ。貴方は大分欲求不満が溜まっているようだから、エチエチを入れた喜びをあげるね。師匠みたいに上手くできないけど、少しは、聖魔法の神髄が分かると思うわ」
そう言ってマリエッタの手の平から音符のような光がメリエンヌに入り込んでいった。
メリエンヌは、パンツをびしょびしょにしながら“にへらー”とした顔のままへそ天でひくひくしている。
「良かったな。もうパンツは乾いてるぞ」
マリエッタは、いそいそと何も言わず帰っていった。
「じゃあ、次行って見よう」
勇者アクアリスVSゴールド所属若手ヨワッピー
「く、俺が負けたら全滅とは、世界最強のパーティーなんだぞ。」
「次は勝てるかも知れんぞ、50年前に仲間になった。うちで一番弱い奴だ。今でも鍛錬にもついていけず、膝を抱えて何時も泣いてるヨワッピーだ。何か名前があったが、弱すぎるのが恥ずかしいのか名前を言わない奴だ。
剣士らしいから可愛がってくれ」
アクアリスは聖剣エクスカウパーを抜いた。
「悪いが、ここまでメンバーをコケにされて、本気で行かぬと気が済まない。
膾になるが運が悪かったと諦めて貰おう。」
“限界突破!唸れエクスカウパー” 勇者本気の全身全力スキルを発動した。
ヨワッピーは、自前の剣を抜いた。その輝きは、全ての魔を滅すると言われた伝説の聖剣スペルンマだった。
この聖剣は、50年前突然世を去った伝説の大勇者エクエリオンだけが扱えた最強の剣。
白い光りが剣先から飛び出すと如何なるものも穿つ。剣を合わせればその剣を吹き飛ばす。
アクアリスは、大上段からヨワッピー目がけて振り下ろした。
ヨワッピーは。剣をスッと合わせた。
エクスカウパーは、“ガイイーン”と音がし、枯れ木の森の木に“ズドン”と突き刺さった。勇者は、両腕が痺れ、両膝をついて手を広げていた。
ヨワッピーは、勇者の首に剣を当て、
「勇者よ。世の中は広い、聖剣と共に研鑽を積みもっと高みを目指せ。」
「はい、エクエリオン師匠」
「おいヨワッピー、カッコいい事言ってないで、うさぎ跳び1時間で1万回出来ないとまたゴールドにクサイア漬けにされるぞ。早く鍛錬に行ってこい」
「はいーー」
ヨワッピーは去っていった。本当の名前を名乗れるのは、500年かかるかもな。
今日は、勇者たちと新人のお遊戯会をしたと日記には書いておこう。




