第一章<終焉>
「それでは次のニュースです。昨晩○○県××市にある柳工業で倉庫が燃える大きな火災がありました。火は消されたものの、倉庫には違法薬物が大量に保管されていたとの情報もあり…」
熊野家の地下室ではニュース番組が流れており、いつものように5人揃って夕食を食べている。
「警察はきちんと仕掛けた情報見つけてくれたの?」
いつもの茶髪姿に戻った玲奈が言う。
「匿名で青葉の情報が入ったUSBを送っておいたよ。」
陸人がお茶を飲みながら答えた。
そのUSBは秋鷹が青葉のアジトに侵入した際に佐田のパソコンからコピーしたものだ。その中には様々な顧客情報や悪事が入っていた。
「佐田は?」
秋鷹が目の前の大盛ご飯を口に放り込みながら聞く。
「それもぬかりない。父さんが佐田の部屋の電話から刑事に電話した履歴が残ってるから、佐田は青葉の上層部から追われてるみたい。佐田が青葉のことをリークしたってね。」
「それは大変ねぇ。警察に捕まるより青葉に捕まる方がよっぽど酷い目に遭いそうだわ。」
凛子がそう言うが、全然同情しているようには見えない。
「薬物依存症になった子たちはどうなるんだろう…。」
玲奈が声を落として言う。
実際に学校で水仙ヶ丘学園で薬物依存で苦しんでいる生徒を見てきたので心配なのだろう。
返事をしたのは源五郎だった。
「警察に違法薬物を服用した生徒の情報は渡しておいたから、しかるべき対応を取ってくれるじゃろう。今回秋鷹が盗んだ情報で青葉の口座から多額の金ももらったし、十分な金額を更生施設に匿名の寄付をしておいたしの。」
「これからが大変だろーが、しっかり更生してほしいもんだぜ。子どもは子どもらしくいるのが一番だ。」
「ふふ…本当の親みたいなこと言っちゃって。」
秋鷹の言葉に凛子は微笑む。
秋鷹は凛子の言葉に少し照れた表情をしていた。
こうして熊野家の日常は戻った。
青葉から大金をもらったので、しばらくの生活費も安泰だ。