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41、新たな問題




「……奴隷の契約をしろとは言ったけど、連れてこいとは言ってないよね? どういうこと?」


 いつもの結界をはったノエルが、黒いオーラを放ちながら笑顔で説明を求めてくる。



「ごめんなさい! レオン様は悪くないんです!」


「ボクたちが勝手についてきちゃったんです! レオンさまを怒らないでください!」


「ライル、アシェル、ありがとう。でも大丈夫だよ。ここにいる人たちは、みんな味方で優しいから」



 宿屋の部屋にはノエルをはじめ、隊長たちやベリアルたちもそろっていた。多分この建物で一番広くていい部屋なんだけど、ちょっと狭く感じてしまう。


「実はさ、俺の知らないうちに血の契約されてて、この子たちの主人になっちゃったんだよね」


「はぁ……悪魔族と契約したと思ったら、今度は獣人族まで……本当にレオンって、どこに行っても変わらないね」


(昔から、いろんなところで人をたらし込んで来るんだよね……まぁ、この程度のイレギュラーなら問題ないか)


「そうか? じゃぁ、ふたりともみんなに自己紹介して」



「はい! オレはライルです。十三歳でホワイトタイガーに獣化できます。出来ることはなんでもやります。よろしくお願いします」


「ボクはアシェルです。十一歳になったばかりです。兄ちゃんと同じでホワイトタイガーになれます。レオンさまのために一生懸命、頑張ります」



「我はベルゼブブじゃ。主人殿の補佐をしておる。お主たちの役割は後で考えよう」


「私はアスモデウスよ。怪我した時や疲れた時は教えてね。イイモノあげるわ」


 安心感のある大人の対応、さすがベルゼブブとアスモデウスだ。


「ちょっと……カワイイじゃない。私はベリアル。レオン様の一番の下僕よ」


「はいはーい! 私はグレシルだよ! ベリアルさまが一番なのは下僕になった順番の話だからね!」


「ちょっとグレシル! 順番だけじゃないでしょ!?」


 ベリアルとグレシルは、決着をつけるために隣の部屋へ移動していった。三十分もすれば、いつも通りワイワイ言いながら出てくるので仲がいいのは間違いない。



「あとは初めて会うヤツらには、挨拶するんだぞ。大事なことだからな」


「「はいっ!」」



「……ちょっと待って、ホワイトタイガーに獣化出来るって?」



 ノエルがいい事思いついたような顔してる。あ、これはもう多分ライルもアシェルも巻き込まれるの確実だな。そういう顔だ。


「うん、できるけど……まだ子供だからな」


「ねぇ、君たちはどれくらい戦える?」


「えっ……どれくらいだろう……? 実際に戦ったことがないので、よくわからないです」


 鉱山での魔石の採掘は手伝っていたが、魔物が出たら逃げていたし、戦闘などまったく未知の世界だった。


「そうか……アリシア、この子たちの実力調べて、必要なら訓練してくれる?」


「承知しました。でも、どこで……」


「それなら、俺の城の近くでやったらいいんじゃないか? 畑さえ壊さなければ構わないよ」


 そう、畑はダメだ。せっかく手塩にかけて育てた野菜を、ダメにするのだけは許せない。菜園担当の悪魔族たちが悲しむし、グレシルも落ち込んじゃうからな。


「それなら、大き目の結界張って対処するわ。じゃぁ、レオン場所借りるね」


「うん、それならいいよ。あ……そういえば俺が人族だってライルとアシェルに言ったっけ?」




「え……人族……なんですか?」


「あれ、ごめん、なんかマズかった?」


 ライルとアシェルが固まってしまった。獣人族から見たら、人族だと都合の悪いことでもあったのか?


「……ボクは、レオンさまがどの種族でも気にしません!」


「そう、だな。アシェルの言う通りだ。すみません、人族ってあんまり見たことなくて、ビックリしてしまいました」


「そっか、なんだ、よかった。人族ならここに沢山いるぞ? ノエルもそうだし、アリシアとテオ、レイシーもエレナも、みんな人族だ」


「えぇ! ノエルさんも人族なんですか……? 悪魔族じゃないんですか? オレてっきり大魔王様なのかと……」


「まさか、僕はアルブスっていう祓魔師(エクソシスト)の組織の総帥だよ。大魔王ルシフェルはレオンのことだからね」


「ウソ……ボクたちの主人さまが大魔王さま……」


 サラッとノエルが事実を告げる。ライルもアシェルも口パクパクしてるけど、大丈夫だろうか? いずれ話さないといけないから、仕方ないけど……やっぱりノエルって俺より大魔王っぽいよな。わかるわ。


「ほらほら、話が終わったなら実力テストに行くよ。こっちに来て、転移の魔術陣組むから。あ! もし訓練になったら、帰りは明日になります。お願いしますね!」


 そう言いながらも魔術陣を発動させて、三人はあっという間に消えていった。もしかして、明日まで地獄の特訓なんだろうか。

 ……アイツらの好きな、フライドチキン用意しておいてやろう。




     ***




「レオン様! お願いです、助けてください!!」


 アリシア曰く三人で軽めの運動をしてきた翌日だった。ライルとアシェルの戦闘力も考慮して、計画の練り直しをしていると、突然あらわれたサリーが、慌てた様子で駆け込んでくる。

 大急ぎで移動したのか、空間が城につながったままだ。



「どうしたんだ、そんなに慌てて。何があった?」


「城の悪魔族たちが病気みたいになって、倒れてるんです! パワードリンクを飲ませても回復しなくて……ついにはお兄ちゃんも倒れてしまって、どうしたらいいのか……」


「レオン様、これはおかしいわ。悪魔族は基本的に魔力が満ちているから、病にかからないものなのよ」


 アスモデウスが難しい顔でうなる。ベルゼブブも過去の記憶をあさっているのだろう、腕を組んで考え込んでいる。



「ノエル、悪い。ベルゼブブとアスモデウスは国に返す。緊急事態なんだ」


「んー、わかった。ライルとアシェルが協力してくれるなら、問題ないよ」


「危険なことじゃなければ、許可できる」


「もちろん、そこは配慮するから安心して」


「ベルゼブブ、アスモデウス。悪いけどサリーと一緒に城に帰って、問題を片付けてくれるか? 何かあったら相談して」


「承知した」

「承知しました」




 ベルゼブブとアスモデウスは、そのままサリーと共にルージュ・デザライトの城に戻っていった。




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