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追放された殲滅の祓魔師〜悪魔達が下僕になるというので契約しまくったら、うっかり大魔王に転職する事になったけど、超高待遇なのでもう戻れません〜  作者: 里海慧
第一章 ルージュ・デザライト編

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27、始まりの場所




 俺は久しぶりに、ルシフェルに出会った『フェリガの泉』に来ていた。調印式で来たついでにと、ノエルに我儘を言って一時間だけ貸切にしてもらったのだ。


「今から一時間、それより前に出てきて下さいね」


「うん、ありがとう」


 エレナはそう言って、鍵を渡してくれた。扉を開けて中にはいり、しっかりと鍵をかける。


 ちなみにベルゼブブはノエルの屋敷で、お留守番してもらってる。今頃ミラージュ家の、特製いちごタルトを食べているだろう。


 俺にとっては、ここが始まりの場所だった。あの時、ここに来ていなかったら、俺もノエルも生き残れていたかわからない。

 始まりは俺とノエルが十二歳の時だった。




     ***




 俺たちは八歳の時に両親を流行病で亡くして、それからずっとふたりで肩を寄せ合って生きていた。

 治療費とか薬代とかで財産は残ってなかったけど、家だけはなんとか残ったのでツイてたと思う。


 ずっと日銭を稼いで食いつないでいたけど、体も大きくなってきたので、仕事の幅が増えていた。

 俺はノエルに少しでもいい暮らしをさせたくて、ある貴族の屋敷で働くことにした。ただの雑用だったけど、給料が良かったから即決だった。


 給料は一ヶ月後だと言うので、俺は一生懸命働いた。どんなに叱られても、怒鳴られても黙々と働いた。

 そして給料日がやってきた。



「……ただいま」


「レオン! おかえり! お給料たくさんもらえた?」


「あー……ごめん、もらって来たけど、これだけなんだ」


 俺がもらってきた給料は、銀貨が五枚だけだった。ノエルの稼ぎも足せば、二人で一ヶ月間食べていけるくらいにはなる。


「えっ、契約書には銀貨十五枚って書いてたのに」


「うん、そこから食事とか衣装とか、失敗した時の弁償代とか引かれて、これだけになった。明日からは来なくていいって……ごめん」


「ふーん……そう。レオンが行ったのはスコレット伯爵の屋敷だよね?」


「そうだけど……ノエル?」


 ノエルの雰囲気がいつもと違っていて、俺はビックリしたけど、すぐにいつものニコニコした笑顔になった。


「じゃぁ、今日だけ贅沢して、明日からはいつも通りだね! レオン、一ヶ月お疲れさま!」


「うん、じゃぁ、今日だけ贅沢な!」


 それから一週間後、置き手紙と金貨十枚、銀貨七枚を残してノエルはいなくなった。置き手紙には、信じられない内容が書かれていた。



 レオンへ


 実はスコレット伯爵のところに、レオンのお給料の話をしにいったんだ。そうしたら間違いがあって、正しい給料が支払われなかったみたい。

 その時に伯爵様に気に入られて、今度は僕がお屋敷で働くことになったんだ。住み込みだから家には帰れないけど、その代わりに契約金として、たくさん金貨をもらったんだよ。


 お給料の差額と金貨は置いていくから、レオンが使ってね。僕は住み込みで、お金かからないから必要ないんだ。

 じゃぁ、元気でね。


                   ノエル



 こんなの、嘘だ!! 伯爵のヤツは、本当は俺たちみたいな子供が好きな変態なんだ。俺は伯爵から逃げ出したから、クビになったのに!

 しかも、金髪碧眼の男子が一番好きなんだって、使用人仲間が話していたの聞いたことあるんだ!

 ノエルのヤツ……無茶してまで、俺の給料取り返しに……絶対、絶対に、ノエルは俺が守る!!


 ノエルがあの変態伯爵に傷つけられると思ったら、もうダメだった。

 その時だ、俺が初めてぶっ壊れたのは。スッーっと頭が冷えて、俺たちの敵を倒すことしか考えられなかった。

 だけど、なんの力もないガキだったから、どうやったら力が手に入れられるか考えた。


 ひとつ思い当たるところがある。超実力主義の組織、アルブス。そこにある特別な泉で天使の加護を受けられれば、悪魔族と戦えるくらいの力が手に入る。


 その力があれば、変態伯爵を地獄の底まで叩き落とせる。




     ***




 アルブスの本部で受付をして、泉への通行許可証を出してもらった。受付の人はビックリしてたけど「まぁ、年齢制限ないしね」といって、通してくれた。


 フェリガの泉、ここが天使の加護を受けられる、特別な泉だ。建物の中から地下に降りて、さらに洞窟のような道を進んでいった。やがて、七色に光る泉の前に出た。


 ここの泉にむかって祈ればいいって言ってたっけ。

 どうか天使さま、俺に加護をください。ノエルを助けたいんです、お願いしますーー



『祈りを捧げたのは、あなたね?』


 気づいたら、目の前の泉の上にめちゃくちゃキレイな天使がいた。早く力を手に入れて、ノエルを助けに行かないと!


「そうだけど、アンタ天使さまで一番強い?」


『え? 一番ではないけど……大天使ラファエルって言ったらわかる?』


「一番じゃないならいい。一番強い人にチェンジして」


『……へ? チ、チェンジ?』


「一番強い天使さまじゃないとダメなんだ。呼んできてくれない?」


『そんなっ……何で私じゃダメなのよー! うわーーん』


 とてもナイーブな天使さまだったみたいで、泣きながらどこかに消えていった。

 そのまま待っていると、次に現れたのは金髪に翡翠色の瞳をした天使さまだった。さっきと違って黒い翼が六枚もついている。



『呼び出したのはお前か。名を名乗れ』


「レオンだ。レオン・グライス」


『何のために力を欲する?』


「ノエルを……弟を守るためだ!」


『それならオレでなくても問題ないだろう?』


「いや、一番攻撃が強くなくちゃダメだ!」


『何故だ?』


 この質問いつまで続くんだよ! いい加減にしてくんないかな。間に合わなかったらどうするんだよ!?


「俺は! たった一人の弟を守るって、自分に誓ったからだ! 最強じゃないと全部守れない!」


『それならば、何故、盾よりも剣を選ぶ?』


「だってさ、最強の攻撃力で倒さないと、また襲ってくるかもしれないだろ? 完(・)全(・)に(・)動かなくなるまで、やっつけないと安心できないじゃん」


 あーもう、ほんとウザい! この天使さま一番かもしんないけど、話し長すぎる!!


「なぁ、力を貸してくれんの? くれないの? 俺、今すごい急いでんだよ。無理なら他当たるから、早く決めてくれよ」


『お前、オレが天使の中で一番強い大天使だって、わかって言ってるのか?』


「いくら強くても、オレの力にならないなら、どうでもいいよ。で、どっちなの?」


 ちょっとビックリしてたみたいだ。でもダメならすぐに次に行かないと、ノエルを助けられないから、早く決めてくれ!


『レオン、お前に大天使ルシフェルの加護を与える。存分に力を使え』



 ルシフェルが眩しくて見えないくらい光ったと思ったら、もう消えていた。そして、背中にある六枚の黒い翼に気がつく。あの大天使と同じだった。


 やった! 成功した! これでノエルを助けられる!!


 俺はそのまま空中に浮いて、飛んでいくことにする。最初はうまくいかなくてフラフラしたけど、すぐに慣れた。

 受付の人にものすごく驚かれて、ルシフェルの加護をもらったと言ったら、なんか周りが大騒ぎしてた。


 とにかく俺は一刻も早く、ノエルの元に行きたかった。いろいろ聞かれたりしたけど、ぜんぶ無視して黒い翼で羽ばたいた。一瞬でアルブスの本部から遠ざかる。


 置き去りにした隊員たちは、呆然と空を見上げていた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに読んでて恥ずかしくならない物語でした。応援します。頑張ってください。
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