08 誰だ?こいつ。
遅れてすいませんっ!
時間が空いてしまったので、前話から読んだ方が良いかもしれません。
ルイの話をまとめよう。
この世界の次元界である地界ちかいは、今、魔物たちの行動が異常になり、バランスが崩れ始めている。
これは王宮でチリンス国王から聞いたものと同じだ。しかしこの話には続きがあった。
王宮は異世界から救世主を呼ぶまで、何も魔物の被害への対策をしてこなかった訳ではない。
逆にしない訳がないのだ。国民の反乱を呼び下克上なんかが起こってしまっては元も子もないからな。
そんな訳で王宮がとった一般国民への救済が、”ハイポーション”を国民へ一人一つ支給することだ。
これがあれば、魔物に襲われても命がある限り1回は命を捨てずに済む。
勿論フルポーションまで素晴らしい成分ではないため完全回復はできないが、それでも完全に近い状態に回復できるだろう。
ルイが言った王宮から支給されたハイポーションとはこの事であった。
ルイが住んでいるこの村、「コルーラ村」は、近くにベネレン大河があり、その近くには竜種が寝ている”竜の巣”があるらしい。
竜種とは、この地界ちかいに3体のみ生息する最強の魔物の事。それぞれが別々の魔法系統を持っており、炎を操る竜、水を操る竜、雷を操る竜に分かれているのだ。
この大河周辺に生息するのは水を操る竜。名前は「アクバル」と言い、体長は二十メートルを優に超え、青色の瞳に鋭い牙、そしてサファイアのように輝く頑丈な鱗を持っているらしい。
竜種は五十年単位で活動をしている。つまり、五十年起きて暴れまくったら五十年眠りにつくのだ。
そして最後に暴れたのは三十年前。その為今は眠っている状態であり、ここら周辺には今は危害が無いそう。
ここまでがルイの話である。
すると――
「ねぇ、あなた、全く見かけない容姿しているけど、どこから来た種族なの?」
ルイが俺にを見つめて首を傾ける。
「どこから来ている種族って...一応王都から来た普通の人間だけど...」
それに俺は正確なことを答えた。
自分が一つしか持っていないポーションを使ってまで俺を助けてくれたのだ。信用しないのはかわいそうである。
と言うか、俺は半ロリに目覚めてしまったらしい。ヤバイっ、さっきから可愛く見えて仕方がないのだが。
「えぇ!?あなた、王都から来たの!?」
そんな俺の脳内を知らないルイは、今度は俺から離れて大きく目を見開いた。
「なんだ?何か悪いことでもあるのか?」
ルイが見開いた理由を俺は理解できていない。それに、あからさまに避けられているのを俺は実感できていたし、何が何なのかさっぱりである。
俺が何かおかしいことを言ったのだろうか。
しかしこの後のルイの言葉で、俺は今の自分の状況を知ることになる。
「うっ…嘘はいけないわよ!だって、王都にこんな髪の色をした種族はいないもの。
それに、マヒの症状からしてあなたが毒を食らったのは一昨日の夜。
私は昨日の朝に、あなたにポーションを使ったのだし、これは間違いないわ。
でもね、王都からここまでの八十キロメートルを、マヒ状態で移動なんてできないのよ。」
今ルイはなんて言った?
俺が毒針をさされたのは一昨日?
ポーションを使われたのは昨日の朝?
ここは王都から八十キロメートルも離れているのか?
それに、こんな髪の種族見たことが無い?王都には俺と同じで黒髪の種族も居たはずだ。
ルイが一気に発した言葉により、俺の脳の計算速度は追いつかなくなる。
しかしそれと同時に、俺は毒に刺され、完全に仲間だと思っていた人達と独立してしまったのだなと理解させられた。
そこでまずは自分が毒針に刺された日について聞いてみることにする。
「ルイ、俺のことをお前が治療したのは、昨日の朝なんだよな?つまり俺は丸一日寝ていたってことか?」
「そうよ。間違いないわ。」
ルイは間違いないと言った。つまり、俺が毒針をさされたのは一昨日だろう。
これはエイたちも話していたことだが、俺が毒針に刺された時、次の日の昼には殺されると言っていた。つまり彼女が推測した俺が毒針に刺された日と全て一致しているのである。
そして俺は、よっぽど疲れていたのだろう。普通ならば丸一日も寝るはずがないしな。
それはそうと、ルイに聞きたいことはもう一つある。
「なぁルイ。それなら、俺の黒い髪って言うのはどうなんだ?ここらではそんなに珍しいのか?」
これだ。そんなにここらでは黒髪は珍しい存在なのだろうか。
ルイも確かに金髪だしその可能性は極めて高いが、一応聞いておいて損はない。俺はそう思ったのだ。
しかしこれには、見事に俺の予想を大幅にずれた答えが返ってきた。
「黒髪?何を言っているの?ヒロの髪色は、淡い緑と紫が混ざった色じゃないの。」
「淡緑と紫が混ざり合った色?ルイ、なんのことだよ。」
俺は自分で考えることができない内容だと理解し、相手にまた聞き返した。
だって、自分の髪が相手には淡緑に見えるだなんて、全くもって意味不明だろう?
もしかすると、この世界では言葉は通じるが、色や物の名前そのものは違うのかもしれない。
例えば、相手にとっては”黒色”の物が俺たちの呼ぶ”緑”の可能性だってある。
いや、それにしても王都の人は俺と同じ髪色だった。緑と黒の呼び方が逆の世界だとしても、この間違いは起きないはずだ。
この話は、俺には理解できなかった。
「ヒロ、さっきから変よ。もしかして、自分の髪の色も理解していないの?」
「何言ってるんだよ。自分の髪色ぐらい理解できるに決まっているだろう?」
「……あなた、本当に理解しているつもり?そこに鏡があるから、一回見てきなさい?」
そう言い、ルイは机の上にある小さな手鏡を指さす。
金の淵の中に入った銀に輝くその鏡は、とても神々しく光っているようだった。
この部屋は多少木の壁が痛んだりなどして、ボロボロなのを感じさせるが、この鏡だけは綺麗だ。
誰かの大切な形見なのだろうか?
まぁ後で考えることにでもしよう。
俺はそう思いベッドの上から降り、机へと歩み寄る。円状の木の木目でできた机は、中世の西洋の思い出させるような装飾がされてあった。まぁ中世の西洋にはいったことが無いし、これも傷だらけでボロボロなのだが。
そして手鏡を持ち、自分の顔を見る。
その瞬間、俺は目を大きく見開いた。
理由は簡単。
本当に淡緑と紫がバランスよく混ざった髪だったからだ。しかもそれだけではない。
濃い青色に輝く瞳は、元の俺とは全くの別物だった。
さらに自分の顔は少しシュッとされ、前よりもわずかながらイケメンになっている気がする。これは決してナルシストなのではなく、自分の顔を見たときの素直な感想である。
そして俺は、意図せずに呟くのであった。
「誰だ?こいつ。」
『新投稿小説』
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