06 早朝の少女
えっと、平日は投稿できない日のほうが多くなります。
すいません。
ヒロは滝から続く大河を漂流していった。その大河の名は、ベネレン大河。パルン大草原の中心を堂々とゆったり下る大河である。
その大河は海へ真っすぐ繋がっており、草を食べにくる動物、それを襲う動物と、自然が豊かな場所だった。
そこを、意識を完全に失ったヒロは流れていく。
途中で滝周辺から漂流した薄丸太へぶつかり、何とか呼吸が取れる状況になる。このおかげで、ヒロが水攻めに遭い窒息死する状況を凌ぐことができた。
しかし、リンに刺された毒針によるマヒは悪化していく一方。ヒロの体は、どんどん毒に包み込まれていった。
そのせいかは分からないが、ヒロの髪の色が段々変わっていく。先ほどの毒針同様、淡い緑と紫の混ざった髪色に。
それは完全に、毒にヒロが侵食されていくのを表していた。
新月に等しい暗闇の中、誰も見ることが無かったが、ヒロはそうして以前の自分と姿を変えたのである。ヒロ自らも見ることができないまま。
♦♦♦
「うわぁ...今日は霧が濃いなぁ。」
月に一度、気候の影響で霧に囲まれる村、「コルーラ村」で、一人の少女が大河から水くみをしていた。
その少女は鮮やかでつるつるな金髪、エメラルドグリーンの目を輝かせ、自前の桶と樽を使い水を汲んでいく。
この村は水汲み当番が定められており、今日は偶然彼女の番だったのだ。
そんな偶然が、ヒロを救うことになるとは誰も知らない。
偶然による奇跡が起こったのは、彼女が水を樽いっぱいに汲み終えその樽を持とうと力を入れたときだった。
――ザブンッ――
大河のわずかな段差、1mほどの滝のような場所から、何か大きなものが落ちてきたのに彼女は気づく。
最初は目の前にある薄丸太かと思ったが、それはすぐに間違いだと気づいた。丸太の上に、人の手のようなものが乗っているのだから。霧掛かっていてきちんと目視できるわけではなかったが、その時は正確に判断することができた。
「っえ…!?なんで人の手が!?」
彼女は一瞬驚くと、すぐにその手へ歩み寄った。
血が流れている様子はなく、その下、河に入っている体にもすぐに気づく。
昔から水辺に近いこの村に住んでいるため、彼女は泳ぎが得意であった。そのため、意識を失っている彼にいち早く近づくことができる。
そして彼女はまたしても驚いた。
意識を失っている少年は、決して体つきが良い訳でもなく、むしろ悪かった。
「大変っ、すぐに助けないとっ!」
その弱そうな筋肉があまりない体つきにプラスして完全に気を失っている状態。何より、長時間水に浸水していたであろうふやけて色白くなった体は、彼女のお人好し精神を揺すぶったのである。
♦♦♦
意識が戻る。
どうやら俺はまだ死んでいないらしい。いや、それともここは死後の世界だろうか。
確か俺は、エイ君、いやエイたちに完全に騙され、滝壺へ落とされたはず。そうだ、そして意識を失ったんだ。
しかし水に浸っている感覚はない。それどころか、マヒによる焼かれるような体の痛みがきれいさっぱり消え失せていた。
やはり考えられるのはマヒ毒もしくは窒息による死亡だろう。
俺はそう考え、恐る恐る目を開ける。
まず最初に入ってきたのは、木目だ。は?木目?なぜ木目が死後の世界に?
その木目は、王宮には一切なかった懐かしさを感じさせるような、そんな温かみがあった。俺の目に、1本1本の年輪がしっかり映り込んでくる。それがまた温かく、俺に、
「よく頑張ったね。」
と話しかけてくれているような光景だった。
次に入ってきたのは、温かなぬくもりである。見た感じ俺はベッドの中に居る様で、自分の体温とはまた別のような温かさがあった。
さて、ここで幾つか疑問に思ったことがある。まず、なんで俺はベッドの中に居るんだ?
俺は慌てて自分にかかっていた毛布を取る。なぜこの行動を最初にとったのかは分からなかったが、なんかいやな予感がしたのだ。
そしてさらに、また目の前に出てきた光景に、完全に言葉を失う。
自分は全裸、下も完全に履いていない様態だった。さらにその右隣りには美しい少女が寝ているではありませんか。もっ、もちろんその少女は服を着ていたよ?パジャマみたいだったけれど..ね?
ロングで鮮やかな金髪の少女、年齢は高くても俺より1年下の15歳ぐらいだろうか。
俺はこの状況に追いつくことが出来ず、自分の息子が少しずつ立ち上がっていくのがはっきりわかった。少女が起きていなかったからまだ良かったが、これだけで起きるなんて...相手は見た感じ胸があるわけでもないし、ロリじゃないか!
やはり俺は女性への耐性がゼロのようだ。ロリでも一緒に寝ただけで立ってしまう俺。...はぁ。まぁコミュ障で女性と仲良い男なんてそう簡単にはいないだろうし当然だな。
俺はとりあえず毛布を体にくるみ、着るものを探した。全裸の状態では毛布を手放すこともできない。最も、目の前ですやすや寝ている少女がいるのだ。ここで起きられたら警察に通報されてしまう可能性だって少なくない。...って、警察はこの世界に存在しないか。
とにかく、俺はこの辺りを確認し、自分の高校の制服と同じものを発見した。
一通り辺りを見回したが、ここはどこかの家の部屋のようだ。一面が木でできており、円状の机や椅子、ベッドにより、西洋感がにじみ出ていた。
簡単に言えば、THEファンタジーの部屋なのだ。
窓から見る景色は薄暗く、何があるのかわからない。どうやらまだ夜のようだ。しかしそこには、王宮のような部屋の明るさは全くない。そのことから、ここがあの滝から少し離れている場所だというのは理解できた。
俺は制服を着て毛布を外すと、俺の右隣で寝ていた少女さんに話しかける。
「...あのぉ...おーい。起きて...?おーい!!おーい!!!」
しかし全く反応しないですやすやと気持ちよさそうに寝ている少女。その寝顔は天使のように美しく、ついほっぺたをムニムニしたくなる衝動に襲われた。
「起きないんだし..しょうがないよね??」
され、この時の俺は何が「しょうがない」と思ったのだろう。ムニムニしたかったが為のいい訳だろう。
俺はその衝動を我慢できず、遂には彼女の頬を人差し指でツンツンした。それと同時に彼女の頬がムニムニと動く。
(やべぇ...気持ちよすぎ..。)
俺はさらに指を活発に動かした。完全に変態、そして有罪である。
そして2~3分が過ぎたころ。
遂に彼女が目を覚ました。美しくエメラルドに輝くその瞳を細め、何が起こっているのか全く理解できていないようだ。
しかし俺はそれに全く気付いていない。気持ちよすぎてムニムニをいまだに続けている状況。
その頬へ当たる衝撃のおかげで段々彼女は意識をはっきりさせてきたようで、徐々にその輝く瞳をパッチリさせていく。
と同時に、頬を赤く染めていった。恐らく俺が触り続けたからではない、恥ずかしさからくる赤さだ。
そこでようやく俺は、彼女が目を覚ましたことに気付く。
「あ...あのぉ..こんにちは。いや、夜だからこんばんはか?まぁともかく...」
しかしその時にはもう、時すでに遅し。彼女はどんどん瞳を滲ませていき、そして立ち上がった。
――次の途端、
――バシンッ――
俺の左頬に大きな衝撃が走る。それは一瞬で痛みへと変化していき、俺の頬を赤く染めた。この時初めて、俺の頬にきれいな手形が誕生したのである。
しかし俺は、この彼女のせい(と言っても自分が悪いのだが)でこれから沢山の手跡がつくことを、まだ知らない。
そして起き上がった半ロリの彼女は言ったのである。
「何よっ、この変態っ!!」
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