05 仲間だと思っていた人達
2日続けて投稿できなくて本当にすみません。
急いで書いたので雑なところや意味が分かんない表現があるかもしれません。
誤字を教えてもらえると幸いですっ!
エイ君は俺を見つけると、手を振りながら走ってこちらへ来た。
その笑顔には優しさがあり、俺を心配してくれていたのだとすぐに分かった。
しかしそんなことを思ってしまった俺が馬鹿なだけだった。後に俺はそう考えることになる。
「やっと見つけた!ヒロ、心配したんだよ!!怪我はない?」
エイ君は俺の前で止まると、俺の様子を窺うように話しかけた。それも幼稚園の先生のような口調で。なんか完全に俺、子供だと思われてるよな。これでも立派な高校生なんだけど...。
まぁ心配してくれたんだし、それだけでも感謝するべきだ。中学時代は誰とも話さな過ぎて、こういう場面では心配どころか居ないことにも気づかれなかったからな。
俺は友達の有難さを感じていた。もしもタイムスリップができるのならば、友達ができる前の自分に言ってあげたい。友達は居て損なものじゃないよって。自分しか信じていなかった当初の俺でも信じてくれるだろう。まぁ、俺は未来でも過去でも俺なんだけどね。
そんなことを頭の中で考えている間にも、エイ君の話は続く。
少し内容が長かったため要約しよう。
エイ君とリンちゃん、そしてナツミちゃんは、3人で同じ冒険者パーティを作る予定らしい。そしてそこには俺も加わってよいのだそう。やはり持つべきものは友である。いくら自分がお荷物でも持って行ってくれる優しい友。
けれど一応、冒険者としてこの国を助けるのかどうかの確認をしたいんだそう。
しかし、このパーティ会場は関係ない他の人も約100人いる。人間の騒音だけでなく、踊っている人、音楽を奏でている人、それは様々だ。
謎に合コンらしき状態になっている人たちもいる。くっそぉぉ!!羨ましすぎるぅぅぅ!!
パーティそのものな光景が広がっており実に賑やかだが、その場所は確認という名の相談をするには不便すぎるのだ。
何かの面談や会議だって静かな場所で行われる。パーティでする会議なんて聞いたことがないだろう?
そんな訳で、ここではない別の場所で確認をすることとなったのだ。
その場所が、王宮の外にある花庭園である。
花庭園とは、この今いるアルファテニク王宮の庭のことである。沢山の白い花壇に様々な種類の花が咲き誇り、春は黄色とピンク、赤や青。夏は生い茂る緑。秋は黄色や紅葉の赤。冬は...特に何もないが、まぁとにかく絶景を見ることができるのだ。
中には広場もあり、ベンチや噴水や池、そして滝があるのだ!そこらの領主館にあるような人工滝ではない、れっきとした自然が生み出した滝である。名前は「ベネレン滝」。高さは50mを優に超え、その滝底には草原が広がっており、そこではたまに放牧などが行われていた。その平原を「パルン大草原」と言うんだそう。海にも面しておる草原で、貿易には打ってつけの場所だった。竜種がその草原を占領する約150年前まではだけどな。
そんなロマンチックなことが満載なのが花庭園である。
残念ながら一般公開はされていなく貴族が持ち腐らせているが、俺たちは召喚された救世主。その場所を自由に行き来できるのである。
という訳でリンちゃんとナツミちゃんには先に行っててもらい、エイ君のみで急いで俺を探したらしい。
そしてエイ君が俺を見つけ、今に至る。
♦♦♦
時は少し流れ、ベネレン滝周辺の木が生い茂った岩場。
ヒロはエイと一緒にそこへ向かって歩いていた。滝の音を聞きながら会議をしたいというリンの意見に伴いそうなったのだ。
先導はエイがしており、ヒロはその後をついて行っている。リンとナツミが待っている滝周辺まで歩いているのだ。周りにはたくさんの木が生い茂っており、聖なる道といった雰囲気。一言で表すなら、「小さなファンタジーの森」であった。
外はもうすっかり日が暮れ、夜の星がきれいに輝いている。月は雲にすっかり隠れ、まるで新月の夜だった。
(あぁ...こっちの世界の方が電気が少なく、星の輝きが一層きれいだ。)
ヒロはそう思っていた。
するとーー、
「着いたよ。」
いきなりエイが足を止め、こちらを向いた。
それにヒロは多少驚き、思わず目の前のエイにぶつかりそうになる。しかしエイは、自分の天職「勇者」の能力の一つである「格闘」を使い、自分の中指一本でぶつかりそうだったヒロの頭を押さえた。さすがは勇者の力。鍛えていない素の状態でも最強なのは間違いない。
そしてその力に耐えられず、ヒロは体をのけぞらせた後に地面へ倒れた。
「...エイ君すごい!さすがは勇者の力だね。俺なんかとは大違いだ。」
ヒロはエイのしたことを、倒れて呆然としながら褒めた。普通ならばそこはもう少し優しく手加減してくれよと責めるところだが、ヒロにそれはできない。
しかし、そんなヒロでも不思議に思ったことがあった。
「着いたよ」と言う割には、リンもナツミもどこにもいないのだ。4人で話し合うならば、着いた場所に他の人がいないのはおかしい。
この時のヒロは、ものすごく感がさえていた。普通同じ状況に置かれても、ほとんどの人が2人足りないことに真っ先には気づかないだろう。
けれどもヒロは気づいた。陰キャ特有のものではない。自らの危険を察知したのだ。自分の危機に直面する人間はそれと同時に危険を感で察知できるとよく言うが、まさしくそれであった。
ヒロは、自分は今危機に直面している、何かまずい出来事が起こる、とはっきり気づくことができたのである。
しかし今のヒロの職業は「農民」。そんな危険察知もすぐに意味を無くす。
ーープスッーー
その出来事が起きたのは一瞬であった。
そしてそのことに、ヒロは一瞬頭を混乱させる。しかし、音と同時に出てきた痛みによってすぐに理解することができた。
エイに押され、転んで倒れたヒロの左足の脛、そこに何やら針が突き刺さったのだ。
長さ20㎝、太さは1cm~2㎝程だろうか。完全に貫通した淡い黄緑と紫に交互に輝くその針は、ヒロの足へと不思議な苦痛を与えた。体が内部から侵食されるような、そんな痛みを。
すると、木の上にある茂みから音が聞こえてくる。
ーーカサカサーー
っと、葉が揺れる音が。それは、その場所に誰かが居るということをはっきりと教えさせてくれた。猿の可能性も考えられたが、ヒロとエイがこちらへ来るときは何も音を立てていなかった。つまり音の犯人は木の陰に隠れていたのである。猿がそのようなことを簡単にできるとは到底思えないのだ。
そんなヒロの予想は的中し、陰から人が出てきた。最初は少し小さなカサカサという音だけだったが、俺が倒れたことを確認してご満足の様子。ピョンと軽く枝から跳ねると、キレイで静かな着地をした。
しかしそこから出てきた人の意外性に、ヒロは目を見開きながら絶望し始める。
「なんで...リンちゃんとナツミちゃんが...?」
そう、出てきたのはリンとナツミだったのだ。
すると余りの面白さに笑いをこらえられなくなったエイが、口をニヤッと開け笑い出した。怪盗が簡単な警備システムを破り、優雅に宝を盗んだ時のような不気味な笑みだ。
そのことにヒロは動揺し、何があったのかを悟るのに時間がかかる。
すると、エイの方から今までのことを話し出した。
「バカだよな。自分が俺たちの財布になってるとも気づかないで一生懸命にバイトをしてさ。最後は良く分からない場所で仲間に金を盗まれて死ぬんだから。」
その言葉を聞き、ヒロは今までのことをすぐに悟ったのである。
ヒロがトイレに行った後、エイはリンとナツミにヒロをどうするか話していた。放置するか殺すかという2つの案を話したのだ。
普通の人ならばエイがその計画を話したときに注意をして参加はしないだろう。しかし彼女らもエイに自らくっついているだけのことはある。とても自己中心的な人間であった。
ヒロを放置する案、ヒロを殺す案、その2つのどちらが良いかを相談したエイ。しかしエイの中ではほとんどどうするのか固まっていた。
それを悟ったかのように2人もエイと同じ案を推奨する。
ーーヒロを殺す方の案、をーー
放置しても所詮は農民、何かして大儲けをできるわけがない。ならば、最初に資金としてもらった100万Gを奪いその命を無くすことが最適だと考えたのだ。
そして、その手順を考える。
まず初めに、リンとナツミは滝の近くに行き待機する。なぜ滝の近くが良いかというと、遺体の処分に最適だからだ。土に入れてもすぐにばれてしまうが、滝に流して川を下らせることで、その発見をより困難にする。最も、この世界では見つけることができないだろう。
次に、エイはヒロを呼び「滝の下で話し合いがあるからついてきて!」という。そして滝の周辺まで行った所で、ヒロを地面へと倒すのだ。この地面へ倒すという行為、これは、次の行動をより正確に行うためにした行為である。
3番目に、リンの職業「狙撃手による毒針攻撃。これをヒロに当てやすくするためにヒロを地面へ倒したのだ。エイがそのままヒロの身動きを封じても良いのだが毒針が当たる可能性もなくはないため、こちらの案を取った。
最後に、エイがマヒして動けなくなったヒロを滝へ投げ捨てる。エイがヒロを殺してから滝に投げ捨てるという手もあるが、さすがにエイもヒロにとどめを打ちたくない。それにどちらにしても毒針の効果で明日の昼頃には全身が焼け痛み死ぬ。つまり、ヒロは毒針が当たった時点で死が確定しているのだ。「回復魔師」が毒を分解すれば可能性はあるが、見知らぬボッチのコミュ障人間を助けるほどのお人よしはいないだろう。
ナツミは賢者の魔法を利用し、リンの射撃が上手くいくように援護。命中率を増加させる訳だ。いくら射撃手のリンでも、まだ転職を授かったばかり。ミスをしてしまうかもしれない。しかしこれによりよりこの計画が正確に実行できたのだ。
実に完璧な作戦。
が、ここには1つ欠点がある。
救世主冒険者のルール。それは”悪いことをしたものを罰するのは良いが、殺してはならない”ということだ。
もしもヒロをエイが殺したところを見ている者がいたなどしたら、すぐさま国王に捕まってしまう。その点が多少の難点だった。
しかしそれは一番簡単に解決することができたのだ。
解決方法...それは、リンが放った毒針、そしてその弓の提供者によるもの。
「女性を簡単に襲うクズは、大昔以来ぶりの勇者に滅ぼされるのが妥当じゃの。」
そのような言葉を発しながら、リンとナツミの後ろからさらに別の人が出てきた。
しかしその人物の声、口調、姿を見て、ヒロは完全に騙されたことを認識することになる。
「勇者である私へのお褒めの言葉、チリンス国王陛下、誠に感謝いたします。」
エイが膝を地面へと下ろし、その場に現れた人、チリンス国王へ向かって礼をする。
そう、毒針と弓の提供者は、この国の国王その人であったのだ。
エイはヒロの職業が農民だと知った時、国王へ資金について聞きに行った。しかしそれと同時に、ヒロのデマを国王へ告げていたのだ。
「元の世界では、ヒロは女性を見るたびに襲い、最低な行為を繰り返してきた人だ。」
と。
その時のヒロは、リンとナツミに笑われていた。普通ならばそんなエイの言葉、信じられない話だ。
しかし国王は、勇者という天職を授かったエイを信じた。そして協力したのである。
”一国の国王が承認した場合でも救世主冒険者は人を殺めることができない”なんてルールはない。国王の言うことは絶対なのだ。
足をマヒして動けなくなったヒロ。段々声を上げるのも難しい状況になってきた。
そんなヒロを見て、リンやナツミ、国王までもが笑い出す。
「実に哀れなヒロ。まぁ今までの行いが悪かったんだよな。」
「このようなクズでも勇者に殺してもらえること、感謝するのじゃ。」
パーティが始まった時から、3人と国王はグルであった。
(よくよく考えてみれば、あの後資金について語っていた国王は俺のことを睨んでいた気がする。)
ヒロはそう思った。
するとそこへ追い打ちをかけるかのようにーーー、
「国王陛下、このようなクズに資金は必要ありません。どちらにしろこれから死ぬのですから。私がその資金100万G、もらってもよろしいでしょうか?」
エイは自分の本来の目的を国王へ話した。
ヒロは、
(これが本当の目的か...。)
そう心の中で確信した。
エイの発言に、国王は
「そうじゃの。わしも勇者にお金が沢山あったほうが良いと思う。よかろう。」
と言い、簡単に頷く。
エイはヒロの胸元から、資金が入っている袋を取り出した。そして中身を確認する。
中に50万G分の金貨しか入っていない事には少々驚いていた様子だが、先ほどヒロを見つけたときのそのあまりにもボロボロだった姿を思い出し、すぐに納得した。
(こいつは先程、他の人にも金をとられたな。)
最も、その傷は全く治っておらず、今もなおボロボロの状態なのだが。
♦♦♦
「さて、悪き変態からお金を没収できたことだし。そろそろ殺しますか。」
エイはそういうと、身動きが全く取れないヒロを担ぎ上げて滝の方を向いた。
高さは50mを超える滝。そこから人間を投げでもすれば、水面への衝撃で死ぬことになる。それに何等かあの出来事があり無事だったとしても、毒薬が回って明日の昼には死ぬのだ。
(人が作り出した毒だから最速でも半日経たないと死なないらしいが、まぁしょうがないだろう。)
エイはそう思うと、滝の底をめがけてヒロを投げつけた。
声を上げることもできないほどのマヒを味わっていたヒロは、何も助けを求めることができないまま、夜の滝底へと落下していったのである。
♦♦♦
荒れ狂う水流の中、俺は意識を朦朧とさせながらここまでのことについて考えた。
俺がこうして溺れるまでの経緯について。仲間の最低な行為について。
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