捏造の王国 その33 緊急事態宣言は“猿の手”か?何一つ、想定できないマィテイフールの大自爆!
新型肺炎ウィルスの蔓延に乗じて、緊急事態宣言をやりやすくした特措法を通したガース長官ら、アベノ政権の面々。しかし、ガース長官は一抹の不安を感じていた、その不安はアベノ総理夫人、アキエコのトンデモ発言により的中し…
三寒四温どころか摂氏20度の次は2度というジェットコースター並みの寒暖の差に右往左往する今日この頃のニホン国。首都官邸でも政治的経済的ほか諸問題のことにガース長官らは右往左往していた。
「はあ、新型肺炎ウィルスにかこつけて特措法を成立させたものの、何か、こう引っかかるな。まあこの法案ができたとしても底が見えない株安に、ますます遠のくウィルスの終息に、国際大運動大会の開催は危ぶまれているし…」
と、ため息をつくガース長官。新年になってウィルスとともにアベノ政権の誤魔化していた諸問題が吹き出物のように表面にでてきたのだ。アベノノミクスの大失敗は野党やリベラルだけでなく、アベノ総理の支援者にもささやかれ始めたのだ。ささやきから罵倒へと変わるのも時間の問題である。
「まあ、いざとなれば緊急事態宣言で何とか、だがそうなれば…」
と、お気に入りのセイロン産の紅茶の缶をながめていると
「長官!大変です!」
シモシモダ副長官が飛び込んできた。
「ああ、シモシモダ君か。今日は何かね、市民のデモをジコウ党支持者が妨害したのかね、ウィルスの検査で陽性患者が一気に増えたのかね、それともまたマスクの転売で儲けたとか、我が党の議員が暴言でも吐いたのか」
おおよそ思いつく不祥事の数々をならべてみたガース長官。これだけの不祥事があるということだけでも他の民主主義国家では大問題なのだが、なにしろアベノ政権がなぜか長続きしてしまうニホン国。すでに普通の国ではありえない事態が日常となっている。が、シモシモダ副長官は首を振り
「そんな生易しいものではありません。一応ファーストレディであるアキエコ夫人が、新型肺炎ウィルス特措法に大反対の意を公式に表明すると」
「はあ?なぜだ、だいたい夫人の頭であの法案の意味などわかるのか?」
ワーストレディと揶揄され、あれが配偶者であることについてはアベノ総理に同情を禁じ得ないと野党やらリベラルにまで言われているアキエコ夫人である。エスカレーター式お嬢様大学にすら入れない知能で極甘の実質独裁可能な用件で緊急事態宣言ができる新型ウィルス特措法の危険性などわかるはずはないし、といぶかしがるガース長官に、シモシモダ副長官は意外な理由を口にした。
「それが、その、緊急事態宣言がされたらスキーどころか外出もお店で飲むことも難しいし、もちろん外遊などできそうもないということを、ついニシニシムラ副長官が教えてしまいまして…」
ガッチャーン
「は、はあ?」
口をあんぐりとあけ、思わず高級紅茶の缶を落としてしまったガース長官であった。
「だってねえ、スキー楽しみにしてたのに、今回ばかりはって我慢したのよ。それなのにキンキュージタイだっけ、夫がそんな宣言したら、どこにも行けないなんて」
と、丸い顔をさらに丸くするアキエコ夫人。そのそばには何とか機嫌を直してもらおうとあの手この手をつかうニシニシムラ副長官。
「し、しかしですね。アキエコ夫人、おうちでも楽しいことがたくさんありますよ、ほら最近はやりのお取り寄せとか」
「でもねえ、姑と夫になんやかんや言われながら頼むのもねえ。私はやっぱりオトモダチと飲んだり食べたりしたいしぃ」
「お、お友達をお呼びするのは」
「だってぇ、若い人をあんまり呼んじゃいけないんでしょ。姑もいい年だしい、夫も持病があるしい、ウィルスがうつったら悪いんでしょ、テレビでそんなこといってたわよ…小声(ホントは姑に移ってほしいくらいだけど)」
「そ、それならアベノ総理とお飲みに」
「だからあ、夫は飲めないし、あの人とじゃ一緒にいてもおもしろくないのよ!」
じゃあ、なんで夫婦やってるんです、という禁断の一言を思わず口にしてしまいそうになるニシニシムラ副長官。やはり自分には夫人の説得は無理なのか。あきらめかけたところで、やってきたのはガース長官とシモシモダ副長官。
「アキエコ様、その、新型ウィルス特措法の反対を表明されるとか。デモにも参加されるおつもりですか!」
「あらガースさん、だってねえ、いろいろできなくなっちゃうんでしょ。外出禁止なんてひどいわよお。イベントもできないなんて」
「そ、それはですね。緊急事態が宣言されてから」
「あら、だってすぐにでもやりたいみたいなこと、夫がいってたわよ。株も支持率もさがったしい、マスコミの人のお話も、国民が信じてないからあ、キョウケンテキシュダンとかをとればって」
「それは、その」
「でも、そんなことしたらスキーどころか、私のお店も開けなくなるんじゃないの?外出制限なんてしたらお客さんもこないし。私の主催のイベントだけは大丈夫ってわけでもないんでしょ」
「…まあ、そうですね」
「それに病気で緊急事態とかなら他の国にいけなくなるんでしょ、ネットで“パンデミックで緊急事態宣言なんてしたら、外遊なんていけないに決まってるじゃん”って言ってたし」
「…その、とおりですね」
「それに国際大運動大会もできなくなるんでしょ、ウィルスにかかった人がいっぱいだから緊急事態っていうんでしょ、そんな国に来る人はいないって」
「…はあ、おっしゃるとおりで」
アキエコ夫人の自分勝手ではあるが、一応もっともな話を聞きながらガース長官は先ほどの引っ掛かりの正体を理解した。
そうなのだ、ウィルスの蔓延で緊急事態など宣言しようものなら、ニホン国は世界からの人の、モノの出入りが止まりかねないのだ。すなわち輸出入が止まり経済は破綻し、国庫も空になり株価は今以上の爆下げ。下手をすると国家が破綻しかねない、すなわちニホン国終焉するかもしれないということなのだ。
だいたい、そんな宣言をするということは新型肺炎ウィルスの患者が増え、国の総力をあげて封じ込めをしなければいけないということだ。当然、外遊などできるはずもなく、たとえ重要な国際会議があったとしても、せいぜい電話かネットで参加が関の山。下手すると外交官でさえ、自由に行き来などできなくなるだろう。
第一、すでにニホン国からの入国を制限する国が数十か国におよんでいるのだ。徐々に新型肺炎ウィルスの患者数が減り、死者の割合が世界平均をだいぶ切っているという隣国と違い、ニホン国では死者数、患者数ともに減りそうもない。そんなときに緊急事態宣言を出そうものなら、さらにニホン国からの出州国を禁止する増えるだろう。観光客どころか貿易にも支障がでかねない。そうなったらニホン経済はおしまいである。
そして政財界の利権入り乱れた国際大運動大会も中止せざるを得ない。なにしろ今でさえ、開催時期にウィルスが蔓延している可能性があるのだから、いっそ延期しろと言われているのだ。緊急事態宣言などだしたら、おそらく来年まで大変、それなら今回中止、なに戦争が起こったようなもんだしー、とカッコクレンなどから言われるだろう。そうなれば開催費用にかけた莫大な資金はどうなるか、これにかこつけて裏金づくりに励んだモンリ会長他は使途不明金や大赤字の理由を釈明できるのか。増税にウィルス騒ぎでの売り上げ激減、国民への制限などに苦しめられている国民はさすがにおとなしくしていないだろう。廃業、失業目前のものも多くいる中、自棄になって暴動を起こすものもでかねない。
つまり緊急事態宣言で強権を手に入れる!としてやった途端、経済破綻、貿易破綻、そして悪の独裁者アベノ政権を倒してニホン国を救う!などというものがでかねないのだ。
(くう、ミンミン党のエダノンが賛成に回ったのは、実はアベノ総理を追い込んで倒すためだったのか。ひょっとしてアメリカとの密約があるのか。確かにレイワンのヤマダノや共産ニッポンのシイノが総理になるよりはエダノンのほうがまだアメリカも安心だろう。ひょっとしてアベノ総理があまりにもアホなせいで見捨てられるのか、私も)。バカトップをおだてあげ、陰謀を張り巡らせて様々な人を貶めた我が身を顧みず、野党党首エダノン陰謀首謀者説に怒り狂うガース長官。
しかし、新型ウィルス特措法をそもそも提案したのはアベノ総理ら。今更その危険に気付いたところで法案の撤回は無理だし、第一アベノ総理に今の理屈が理解できるかというと、無理、無体な話である。
(ああ、緊急事態宣言をした途端、よくないどころか、こちらも無傷ではいられないオマケがつきかねないのか。これではまるで、願いはかなうが恐ろしい結果もついてくるという“猿の手”のようだ)
悲願の憲法改正まで、あと一歩ではあるが、それについてくる諸々の問題までは思いが浮かばないアベノ総理他面々。どこまでも都合の悪い真実には目をむけないで、アメリカ他連合国にコテンパンに負けた先祖そっくりのご都合主義で反省なしのバカさ加減に、ガース長官は頭を抱えた。
(ああ、アベノ総理永久独裁が成立した途端、倒されるのか。これじゃ、エダノンやひょっとするとヤマダノらを英雄にする道筋を作ってやったようなものではないか)
と、悩むガース長官。
その悩みをよそに
「やっぱり取り消してってお願いしようかしら。それともデモに私が参加したほうがいいかしら」
と勝手なことをいうアキエコ夫人に
「そ、それだけはおやめください!」
必死で止めるニシニシムラ副長官。
「た、大変です、ガース長官。緊急事態宣言をしたら海外視察の名目の外国旅行もできなくなることに気づいた議員たちが騒ぎ出しました!」
と新たな問題をつげるシモシモダ副長官。
さらにタニタニダ副長官が驚愕の新事実を告げる。
「あ、アメリカのドランプ大統領が新型ウィルスに感染しました!方針変えてわが国でなくて韓国の対策を参考にして治療すると」
(ああ、いっそ、桜になって散ってしまいたい)
ようやく膨らみ始めたピンクのつぼみを窓越しに眺めながら悩み続けるガース長官であった。
物事を決めるときは、その影響をよく考えに考えないと後々トンデモないことが起こるかもしれません。想定外といっていれば、なんとかなるのはどこぞの国の一部の人の思い込みにすぎませんので。