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将軍王のココロザシ  作者: TAK
第一部第一章~ケンウッドの旅立ち
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救出作戦

「さあ、すぐさま脱出しましょう。」

「はい…。」


コルホ山の賊の根城の牢獄に囚われていた高貴な女性をケンウッドは連れ出した。彼が彼女を連れ出す際、彼に付き従う兵士達は高貴な美しさをたたえる彼女に恍惚としていた。


(う…とっても綺麗な方だ…)

(見眼麗しい限り…)

(まるで『カムイ』のような美しさだ…)


女性に恍惚としている兵士達にケンウッドは一喝する。


「皆の者、急いで脱出するぞ!」

「はっ!」


ケンウッドが兵士達と共に女性を連れて脱出している最中、複数の影が立ちはだかった。


「この女は俺達のもんだ!てめえらには渡さねえぞ!」


影の正体は女性を取り戻そうとする賊どもだった。


「殿下、ここは我々が!」

「僕も…、皆と共に…!」

「殿下はその女性の方と共に外へお逃げ下さい!」

「敵に背を向けるなど…」

「殿下を失ったとあれば国中が動揺します!どうか生き延びる事だけをお考え下さい!」

「わかった…。お前達も絶対生き延びるんだぞ!」


ケンウッドは不服ながらも兵達に促され、女性と共に走り去った。


「てめえら…、俺達の商売道具をよくも…!」

「貴様達にケンウッド様方をやらせはしない!」


武器同士がぶつかり合う金属音に肉体を切り裂く音や叫び声等を背に二人は走り去った。



二人が外に出ると賊の根城では火の手が挙がっていた。そんな根城を後にしてケンウッドは女性を連れて本陣に戻り、父であるロイ王に報告した。


「父上、只今要人を保護致しました。」

「よくやった倅よ!皆の者、これよりコルホ山に巣喰う賊どもに目に物見せてやるのだ!!」

「はっ。」


ロイ王は将兵に総攻撃を呼び掛けた。コルホ山の賊どもは瞬く間に鎮圧されていった。



一夜明けて賊の根城は全焼し、焼け跡とその周囲から戦死した兵士や賊が次々と運ばれていた。


(僕の兵達は大丈夫だろうか…)


自分に従軍していた兵士達の安否を気にしながらも、兵士達の生存状況の確認をしていたケンウッド。間もなく彼の前に遺体を載せた多くの担架が通っていった。


「僕に従軍していた兵達は無事か?」


ケンウッドは担架で遺体を運んでいる兵士の一人に尋ねた。


「それが…、全滅です…。」

「なっ…」


動揺したケンウッドが担架に載せられた遺体を一人一人見てみると、みんな自分に付き従っていた兵士達だった。


(!!…これが…、戦争か…。)


ケンウッドは思わず恐慌した。戦争という物がいかなる物かを痛感させられた瞬間だった。


(…僕は…、たった一人の女性を守るために…、皆を犠牲にしてしまったのか…。)


同時に自分がいかに無力かも痛感したケンウッドだった。


「ケンウッド様…、大丈夫ですか…?」


ケンウッドが夕べ救出した女性が彼の前にやって来た。


「はい、大丈夫です。しかし、戦いとは残酷ですね。多くの人が死にますから…、あっ…、あなたにはとても刺激が強すぎますね…。」

「わたし…、故郷で…、多くの人が…、殺されるのを…、何度も見た事が…、あります…。だから…、大丈夫です…、と言っても…、人が死ぬのは…、やはり…、わたし…、堪えられません…。」

「僕もわかります。やはり平和な時代であってほしいものです。」


ケンウッドは救出した女性と平和について語り合っている中、伝令の兵士が彼らの前にやって来た。


「お取込み中失礼致します、殿下。」

「どうした。」

「これより陛下が捕らえた賊どもの処遇を行うとの事です。」

「わかった、僕も立ち会おう。お前はこの方の世話を頼む。」

「はっ。」


ケンウッドが父の元に行こうとすると、女性がケンウッドに尋ねた。


「彼らはこれから…、どうなるのですか…?」

「日頃から人々に心無い事をやってきた連中です。民を虐げる事を許さない父上の事だから、極刑は間違いないかと…。」

「ケンウッド様…、お願いです…、わたしを…、あなたの…、お父様の元に…、お連れ下さい…。」


女性はケンウッドに懇願した。


「申し訳ありませんが、あなたは行くべきではありません。人の死をまた見る事になるかもしれませんよ。」

「わたしはただ…、これ以上…、人が死ぬのは…、堪えられないのです…。お願いです…、わたしも…、行かせて下さい…。」


ケンウッドが制止しようとするも、女性は必死でケンウッドに懇願し続けた。


「わかりました…。僕からも父上に働きかけましょう。」

「ありがとうございます…。」


ケンウッドは女性と共に父の元に向かった。



一方、ロイ王の元に捕らえられた賊どもが突き出されていった。賊どもの中には親玉らしき者もいた。


「ち…、畜生…!宴の最中を狙うとは卑怯だぜ…!しかもこのダッグ様をブッ殺そうって腹かよ!!」


ダッグはロイ王を睨みつけた。ロイ王もまた彼に睨み返した。果たしてロイ王は賊達にどのような処遇をするのだろうか…。

カムイ…自然界の物質を魄とするEL生命体。カムイは魄となる物質によって属性が決まり、その属性に応じた特殊能力を行使する。また、カムイは様々な姿を持ち、人の姿をとる個体もあれば、動物の姿をとる個体もあり、特に前者は美しい女性の姿をとる個体は「女神」と揶揄される程結構高く格付けされている。中でも『クイーンガーディアン』は女性型カムイの最高位とされており、各『ガルド』に一体守護神として君臨している。後者は小さい個体だと「妖精」と揶揄される程の愛らしい姿から女性『クライアント』の人気も高く、巨大な個体だと移動拠点も兼ねる等様々な特徴を持つ。下位のカムイは小型の動物の姿が多い事からマスコットの側面を持つ一方、上位のカムイの多くは戦闘も行うため、生体兵器の側面も持っている。また、私利私欲でカムイを利用すると、『ブラックエレメント』が発生し、カムイが『アヤカシ』と化すケースもある。また、ミドルガルドでの守護神は国家によって異なるため、EL資源は勿論、宗教面での国家間の紛争も絶えない。EL資源に乏しいミドルガルドでカムイを見るとしたらクライアントと一緒にいる事くらいだ。


ガルド…『世界塔ブルドラシル』内の世界の単位である。ミドルガルドもまたその「ガルド」の1つである。


クライアント…カムイと契約関係にある『AU』を指し、契約相手のカムイとの連携で『ELアーツ』を開眼する。ELアーツは「奥義」や「魔法」等と表現される事が多い特殊能力で、逆境を覆したり、他者を守ったり等用途は様々である。


国境なき騎士団…各ガルドに一団存在する中立勢力で、ミドルガルドの元老院に相当する。担当のガルドの秩序の維持・回復に奔走するいわゆる政治機関の役目も担っている。


ブラックエレメント…負の感情に囚われた者や生物の死骸等から発生しやすいEL物質。発生しても自然浄化されるが、著しく濃度が高いと異常気象、環境汚染、災害、伝染病等様々な災厄を齎す。


アヤカシ…カムイとは対の関係で、手当たり次第他者を害する。個体については純粋なアヤカシもいれば、アヤカシ化したカムイもいる。「怪物」「魔物」等と表現される事が多い。


AU…「AgentUnit」の略称。ブルドラシル各地で独自に活動する者の事で、「英雄」と表現される事が多い。AUは各ガルドの国境なき騎士団の元で訓練を積むと『ELエムブレム』を授かる。そのエムブレムによってカムイと強固な関係を築いたり、ELアーツを使用できたりするが、所持しているエムブレムの属性がそれらと一致する必要がある。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、改行をもっと入れた方がいいですね。 スマホなどの媒体では横文字の文章が読みづらいというのを意識した方がいいです。 行間や空行を入れる事である程度は読みやすくなりますので。 後…
2020/10/14 18:51 退会済み
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