ベムの夢
ミストエレナ島の砦の牢獄に囚われている二十数人のレスティーン達にベムは2ダースの小さなパンを牢屋越しに運んだ。
「さあ、パンだ。一人一個ずつだぞ。」
「要らない!」
「どうせ毒が入ってるんでしょ!」
レスティーン達は自分達を牢屋に閉じ込めたBBB団に対して心を閉ざしていた。
「心配するな。毒は入ってない。」
ベムは無作為に一個のパンを食べて毒入りでない事を証明した。安心した子供達は挙って一個ずつパンを貰って食べた。
「お前達、食べながらでいいから聞いてくれ。俺はお前達と同じレスティーンだった頃スラムで妹と二人で暮らしてたんだ。その日暮らしで今日のパンにありつけるのかどうかもわからないくらい貧しかったんだ。そんな中妹が病気になっちまってよ…。俺は妹を背負って医者を訪れたんだが…、どこも『スラムの貧者を診る医者はいない』等と門前払いの始末だったんだ…。俺は妹を家に置いて薬を買う金を手に入れるため、自分達だけぬくぬくと生きてる富裕層の居住区に忍び込んで手当たり次第盗みを働いてドロップナイツに捕まっちまったのさ。そこをBBB団が助けてくれたおかげで俺はここにいるのさ。」
ベムは自分の生い立ちを牢屋のレスティーン達に話した。
「…兄ちゃんはここに恩があるんだね。…そもそも何でそんなどうでもいいような事を僕達に話すの?」
レスティーンの一人がベムに尋ねた。
「お前達がいつか俺達の後輩になるからさ。だから俺の事知って貰いたい。それだけさ。」
ベムは牢屋のレスティーン達に自ら心を開いて、彼らの不安を和らげようとした。
「ねえ、兄ちゃんには夢があるの?」
「ああ…、妹の病気を治す事だ。」
「そうじゃなくて、ここでどんな世界にしたいの?」
「牢屋じゃお前達の世話しかできないぞ。」
「そうじゃなくて、兄ちゃんにとっての『平和な世界』って何?と聞きたいの!」
子供の唐突な質問に一瞬戸惑うベム。普段から平和な世界と全く無縁の彼、いやBBB団には酷な質問なのは間違いない。
「…平和な世界か…。俺は貧困の根絶にあると思うな。」
「だったら、ドロップナイツがあるじゃないか!」
「じゃあ、何で俺の妹は医者に診て貰えなかったんだ!何で富裕層の奴らだけがぬくぬくと生きてんだ!挙句、妹を救う為に盗みを働いた俺を奴らはしょっぴこうとしたんだぞ!」
「……」
「とにかく俺はドロップナイツは信用できない。奴らは金持ちの味方だからな。」
「ドロップナイツは悪い人達じゃないんだよ。貧しい人達にも分け隔てなく接してるって僕は思うよ。ドロップナイツが兄ちゃんを捕まえようとしたのは盗みをしたからだよ。どんな事情があってもやっぱり盗みは駄目だよ。」
「うるさい!!お前達が俺と同じ立場だったらどうするんだ!!きっと同じ事する筈だ!!」
「ひっ…」
「この兄ちゃん恐いよ~!!」
激昂したベムにレスティーン達は恐怖を感じた。中には泣き出す者もいた。
「…すまん…、感情的になりすぎた…。俺はただ…、欺瞞だらけのドロップナイツや富裕層の奴らを叩き潰して俺達BBB団の手で貧困のない平和な世界を作り上げたい。そして妹のような貧しいからって診て貰えない人を一人でも無くしたい。それが俺の夢だ…。」
「ベム、パン配ったらさっさと持ち場に戻れ!!」
BBB団の一員がベムに言い放った。
「!…ああ…。じゃ、俺は戻るぞ。パン喰ったらしっかり休んどけ。」
ベムは子供達に別れを告げて牢を離れた。
話を戻して、BTの一隊が突入したミストエレナ島の砦の牢獄にベムが来た。
「ベム兄ちゃん…。」
「これから戦いが始まる。お前達は近くの船に逃げろ!俺も後で乗る!」
ベムは牢屋の鍵を開けてレスティーン達に逃げるよう促した。
「ねえ、この兄ちゃん信用していいの?」
「ベム兄ちゃんは僕達に自分の色んな事話してくれたんだ。初めは悪い人だと思ってたけど、あの話を聞いて悪い人だなんて思えなくなったよ。良い人でもないけどね。」
「おいおい、それは余計だ。」
「とにかく皆、ベム兄ちゃんの言う通りにしよう!」
ベムはレスティーン達を近くに泊めてあるカモンの手配した船に誘導していった。その途中で見覚えのあるティーンと鉢合わせた。
「お前は…、ベム!レスティーン達をどうする気だ!」
「くっ…、お前達は急いで船に乗れ!」
ケントと鉢合わせたベムはレスティーン一行を霧に巻いた。
「誰かと思ったらアクアヘイムで出会ったティーンの男か…。久しぶりだな…。」
ケントとベムはそれぞれ得物を構えた。再び展開されるケントVSベム…、果たしていかなる結末が待っているのだろうか?




