感謝
△アカリ視点 △
「……良かった、薬が効いてきたのね」
目の前の布団で寝息を立て始めたユウを見て、ひとまず安堵する。
そっと、ユウの寝ている布団に近付き、すっかり眠り始めたユウを見つめる。
「ふふっ、あっさり寝ちゃうんだから」
そして、眠るユウの頭を優しく撫でる。
思えばあの日、ユウと地下牢で出会ってからは休まる暇すら無かった。
地下牢と日下部家からの脱出に、毒によって死にかけたり、追っ手に追われ、【忌み子】に【魔力】の存在等‥。
「でも、あなたはずっと私を助けてくれたね……」
撫でられてくすぐったかったのか、身じろぎするユウ。長い睫毛がフワリと揺れる。
それを見てフフッと笑ったあと、
「ありがとう、私を助けてくれて。【忌み子】って嫌われていた私を相棒と認めてくれて」
無意識にふとユウの唇に目が行く。
すると、急にドクンっと心が高鳴る。
な、何!? この感情!?
胸にそっと手を当てる。姉上とは比べられないが、それでもそこそこの大きさはあると思う。
「って、私は何を!?」
頭を振るが、一度意識してしまうと駄目だった。
再び眠るユウの唇に目が行く。
トクン
胸が高鳴る。
トクン
ユウの唇から目が離せない。
それどころか徐々に近くなっている様な。
ドクン
いや、確実に近くなっている。もう寝息を感じられる距離だ。
ハラリと髪が頬を撫で、流れた。
ドクン
顔がこれまでに無い程に熱い。
いや、顔だけじゃない。体が、心が燃える様に熱い。
ドクン
自然と目を瞑る。
それだけで、これから自分が何をしようとしているのかを理解してしまう。
もう少しで、唇が合わさる——。
「コホン」
がばっ!?
私は凄い勢いで顔を上げる。
見ると、部屋の入口にユウの着替えを取りに行った女中が、着替えを持ってこちらを見ている。
その目が半目になっているのは気のせいだと思いたい。
「こ、ここ、これは、その! ?! そ、そう、ユウがちゃんと息をしているのか確かめていたのよっ!」
しどろもどろに言っても何の説得力も無いが、私はそれに掛けた。 が、
「ふっ」
目の前の女中はそんな鼻で笑う様な顔した。
「~~~~~っっ!!」
私は恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にしながら、ユウの寝ている部屋から逃げ出した。