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姉として

すごい短いです……。

 

 △ ユキネ 視点  △




「アカリさん……」


 襖の前で立ち尽くしてしまう。原因は、先ほどのアカリさんの言葉。

 盗み聞きという形で聞いてしまったアカリさんの艱難(かんなん)辛苦(しんく)


 ——あの事件はそれほどまでにアカリさんを苦しめていたのね——。


 当たり前だ。成人とは言われるが、まだ子供であるのだから。成人と言われただけで、急に心までもが大人になる訳じゃないのだから。


「……ごめん、なさい……」


 詫びる。襖の向こうの妹に向けて。

 直接会って詫びたら、アカリさんの事だ。逆に気を使わせてしまう。あの子はそういう子だから。

 すーっと涙が流れる。

 それすらもアカリさんには見せられない。見せたくない。

 こんな涙など、アカリさんの流した涙に比べたら、一片の価値も無いものだ。

 それでも、私は涙する。

 己の不甲斐なさに、愚かさに、軽薄さに。

 自責の念から流す涙。

 そんなものアカリさんはおろか、ユウさんにも見せられない。

 だから私は涙を袖口で強引に拭う。


 彼らは言った。相棒だと。

 一緒に戦うのだと。国を救う為。己を救う為。友を救う為に。


「ならば私は——」


 過去は変えられない。謝っても、許してもらっても。なら、どうするか?

 簡単だ。共に戦えばいい。戦えないのなら、助ければいい。

 今度こそ、妹を、とても大切な妹を救うのだ。

 すっと踵を返す。この後の話し合いはかなり長くなるだろう。

 台所に行って、何か腹ごなしになるものと、お茶を用意する為に。


「それにしても、ユウさん、あなたって人は……」


 アカリさんは長く苦しんで来た。それこそ、己を全否定せんばかりに。

 それを、たった一言。それもアカリさんが欲しかった以上のカタチで解決してしまうなんて。


「……ユウさん、ありがとう……」


 振り返り、アカリさん達の居る部屋を見つめる。

 ————あの二人ならきっと————。

 そう思わせる何かを背に感じ、そっと台所へと足を運んだ。



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