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職業 (ジョブ)

レベルの説明について、少し変更しました。それと、新たにカテゴリーなるものを追加しました。


※ 21/2/25 改定 (誤字・脱字、および、一部の表現が適当なものでは無かった為、追加・修正しました)

 

 廊下の途中でサラと別れた僕とアーネは、始業チャイムが鳴る前に教室へと着いた。教室へと入ったアーネに、他のクラスメイト達があいさつをしている。対して僕の所には誰も来ない。 でも、これは今日だけに限らない。いつもの事だ。僕はこのクラスで嫌われているのだから。


 発端は、僕が8歳になり学校に通い始めた頃だった。暫く雨が降らず、村の畑が干ばつに悩まされていた頃に、村に持ち上がったある噂話だ。──村に雨が降らないのは、その時にはすでに居なくなっていた父さんが、村へと戻る前に村の人に自分の存在の大きさを認めさせる為に、召喚士の力を使ってわざと雨を降らせない様にした──、と。


 冷静に考えれば、そんなバカな事有る訳無いのだが、雨が降らず、畑に植えた苗が枯れるのを黙って見ているのが辛くて、誰かのせいにしたかったのよと、母さんは寂しそうに笑いながら言っていた。

 確かに、平年より明らかに収穫が少なかったその年の事は、飢える人が出たわけでは無いけれど、村の人には嫌な記憶でしかない。誰かのせいにしたい気持ちも分かる。でも、そんな無茶苦茶な噂話が立ってからというもの、村の大人たちは僕たちに対して何だかよそよそしくなっていた。

 元々父さんと母さんはこの村の出身では無いらしく、村には親戚すら居ない。それでも父さんが居た時はそんなよそよそしさは無かったと思う。父さんが召喚士として村の役に立っていたからだろう。僕が父さんに憧れて召喚士を目指したあの思い出の時がそうだ。

 しかし、父さんが居なくなり、そんな噂話が出てからはなんか距離感というか、忌避感というのか、そういった感情が村の人から感じる様になっていた。 

 いくら村の役に立っていたとはいえ、もともと召喚士自体珍しい職業らしく、父さんが村に来るまでは、召喚士という存在すら知らない人がほとんどだったらしい。そんな辺境の村に、得体の知れない力を持った者が訪れれば、村の住人は恐れを抱くのも不思議ではない。それが、村の干ばつの時に出た噂話で、一気に表に出たのだ。


 如実に表れ始めていたそんな大人の感情を、親の感情に敏感な子供達が気付かない訳が無かった。それからというもの、学校では無視や悪口を言われ、その回数も日に日に増え、上のクラスに上がってからは実技授業も増えた為、暴力的な嫌がらせも増えてきた。


 サラが入学した時、僕と同じ目に遭わないかとても不安であったが、見た目の可愛さとある出来事によって、サラに対するイジメは無かった。逆に、なぜか僕に対する嫌がらせが増えた気がするのだが、これに関してはしょうがないと思っているし、むしろ、サラがイジメの対象にならなくてホッとしている位だ。……そういや、アーネだけは他の皆と違って僕を無視したりとかはしなかったな。ま、あんな性格だし、細かい事は気にしてないだけか。


 ジリリリ————


 自分の机に座った時、ちょうどチャイムが鳴り、程なくして担任の先生が教室へと入って来る。今日も億劫な一日が始まった。



 ☆



「————という訳だから、スライムの対応は——」



 魔物に関する授業を上の空で聞きながら、窓から外を見る。外では晩秋の陽だまりの中、小さな鳥たちが、木と地面を行ったり来たりと楽しそうにしている。この後にある実技の授業が億劫で堪らない僕は、その鳥たちを見ても溜息しか出なかった。


 学校では主に、魔物の生態や対処方法、国の歴史や一般教養など多岐にわたって、それぞれの担当の先生が生徒に教えている。そんな学校で、一番人気のある授業は【職業(ジョブ)】だ。


 文字通りジョブについて学んだり、ジョブの訓練を行ったりする。そのジョブであるが、自分が何のジョブに適正があるのかは、【魔鏡】という特別な鏡で調べる。あくまで適正なので、別に自分に適正のあるジョブにならなくちゃいけないという事はない。しかしよっぽどじゃない限り、みんな適正のあるジョブに就く。将来の生活に困らない為だ。


 ジョブにはそれぞれ熟練度を表す【職業熟練度(レベル)】が有り、レベルが上がるにつれ、使える技が増えたり手先が器用になったりする。また、戦士系ジョブの人がレベルを上げれば力が強くなりやすく、魔法使い系のジョブの人がレベルを上げれば、魔力が上がりやすいと教科書に書いてあった。

 そして、それとは別に【身体的階級(カテゴリー)】も存在する。例えば子供が大人になったり、体を鍛えたりと、身体の成長や身体能力を鍛える事で、カテゴリーが上がっていく。逆に年老いたり、太ったり等の体の不利益がある場合は、ジョブのレベルが高くても、カテゴリーは下がってしまうという事だ。それが自然の摂理であり、神様の定めた法度なのだとか。ちなみに自分のレベルとカテゴリーも、ジョブと同じで魔鏡によって調べる事が出来る。


 ジョブの種類は多種多様で、授業で使っている教科書には、農夫や鍛冶師、猟師などの一般的に知られているジョブについて説明書きが載っている。

 色々とあるジョブ。その中でも、魔物が生息するこの世界において、最も人気のあるジョブは【戦士】や【魔法使い】などの戦闘職だ。戦闘職ジョブの授業は実技が主だが、サラの居る一つ下のクラスの授業では、自分のジョブについての座学や、剣を振るったり魔法を使ってみたりと基本的で簡単な事を行い、上のクラスで実戦形式の訓練を行う。そして、僕の居る上のクラスではこの後にジョブの授業が待っていて、今日は実技試験だった。


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