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早く!

 

 あれからどの位経ったのだろう。そんなに経っていない気もするし、数時間が経った気もする。


 黒馬は変わらない速度で、町中を何処かに向けて走っていた。この町の地理に詳しくない僕は、どこを走っているのかまるで分からないが、今はこの馬を信じるしかない。


 その黒馬の首根っこに必死にしがみ付いていた僕は、何とか振り落とされないよう、馬の首を掴む手に力を込めているが、それもそろそろ限界にきているみたいで、手や腕がかなり前からプルプルと震えている。でも絶対に、アカリを落とすわけにはいかない!



 そうして、とうに限界を超え、馬の首を掴む腕や手に本格的に力が入らなくなった頃、馬の走る先に見覚えのある大きな門が姿を表す。近づくにつれ、それは確信へと変わった。

 走る勢いそのままに、アカリ達の屋敷の正門をくぐる。そして、玄関前に辿り着くと、馬はそこで止まった。



「何奴!ここが何処か知っての狼藉か!?」



 わらわらと護衛の侍が刀に手を掛け、警戒する。だけど、限界を超えた疲労のせいで、その誰何に答えられそうも無い僕は、ただただ、上がりきった息を整えるのに必死だった。でもこのまま答えられなければ、不審者として最悪捕まってしまうだろう。そうなったら、僕の体の下で苦しそうに息を吐くアカリの治療が手遅れになりかねない!そんな時――、



「ん、あれはまさか?!」

「あぁ、間違いない!アカリ様だ!」

「おい!ご様子が変だぞ!誰か!急いで医者の先生を呼んでこい!!」


 僕の下に居たアカリの存在に気付いた侍たちが、黒馬の背からアカリを降ろし、急いで屋敷の中に運び入れる。


「貴様はあの時のひよっこ!?一体アカリ様に何をした?!返答しだいでは!」


 そう言って、再び腰の刀に手を掛けるも、


「ヒヒーン!!」


 乗ってきた黒馬が牽制する様に大きく嘶く。

 アカリを屋敷へと届けられた事に安堵した僕は、腕の疲れも相まって、そのまま意識を失った。


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