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武家屋敷

 

 アカリに肩を借りながらふらつく足で歩き、何とか目的地と思しき建物の前に到着した。


「さぁ、着いたわよ」

「あ、ありがとう」


 だいぶ頭痛も収まってきたので、アカリから離れる。


「———で、ここが?」

「えぇ、私の屋敷よ」


 そこは、先ほど居た屋敷よりも大きな屋敷だった。屋敷の周りを、塀と呼ばれる木の壁でぐるりと囲われ、屋根には薄く弓状に曲がったレンガみたいなのが何枚も重なっていて、重厚な雰囲気を醸しだしていた。


「すごい屋敷だな」今ある記憶の中と照らし合わせても、こんな屋敷は見た事が無い。


「見た事無いの?これは武家屋敷って言うのよ。さっきのカズヤの屋敷もそうよ」


 僕に屋敷の紹介をするアカリ。しかし武家屋敷と聞いてもまるでピンと来ない。僕の記憶には無い言葉なのかも知れないな。


「私よ!今すぐ門を開けて頂戴!」


 アカリは木で出来た大きな門の前に立つと、ドンドンっと門を叩く。しかし、何も応答は無い。それに苛立ったアカリは、先ほどよりも強く門を叩く。


「ちょっと!誰も居ないの!? 私よ! アカリよ!」


 ガーっと捲し立てるアカリ。すると、大きな門の脇にある小さなドアが開き、中から松明を持ったお爺さんが顔を覗かせる。


「誰だか知らんが、アカリお嬢様が帰って来るわけが——。ア、アカリ様!?」


 ドアから顔を出したおじいさんが、アカリの顔を見て驚く。


「ただいま! 悪いけど、今事情を話している暇が無いの。お姉様は居るかしら?」 


 問い掛けるアカリに、お爺さんがコクコク頷いて、


「へ、へぇ、ユキネ様なら屋敷に居られます」

「分かったわ。ありがとう」とアカリは頷き、さて、と腰に手を当ててこちらを見て、


「さっき、途中までしか話せなかったけど、この後、お姉様に会うわ」

「お姉さん?」

「えぇ、私の3つ上のお姉様でとても頭が良いの。そのお姉様に、あの屋敷で私がどんな扱いをされていたのか、そして何を見て聞いたのかを話すのよ」


 だから着いて来なさいと、アカリに続き、お爺さんが開けてくれたドアをくぐり中に入る。

 中は石畳が敷かれ、その石畳は玄関と思われる家屋の入り口へと続いている。その玄関には、夜だからだろうか、二本の松明が両脇に備わっており、赤い火が辺りを照らしていた。


 その玄関には、上下とも黒い着物に、長い棒を持った守衛と思しき男の人が両脇に立っている。


「アカリ様!?」「どうしてこちらに!?」


 二人の男はアカリの姿を見て驚く。


「お勤めご苦労様。ちょっとお姉様に用が有って来たのよ」


 そう説明する。


「左様ですか」「ユキネ様は中に居られます」


 と二人の男は、アカリを玄関に通す。僕も、そのままアカリに続いて入ろうとするが、


「待たれい」と守衛の男の一人が、僕の行く手を持っていた棒で遮った。


「何やら見ない顔であるが、お主は何者ぞ?」


 もう一人の男が誰何する。その顔には、不審と思えば容赦無く叩き出すという意思が見て取れた。


 すると、前を行くアカリが、

「彼は私の恩人よ。丁重にね」と助け船を出す。恩人?何かしたっけ?


「恩人?」「ひよっこではあるまいか」

 と、二人も納得していない様子、というより口に出てしまっているが、渋々僕を通してくれた。


「不審な事をせんようにな」


 念を押されるも、何とか屋敷の中へと入る事が出来た。

 前を見ると、アカリの肩が小刻みに揺れていた。笑っているな、あれは。


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