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家族

※ 21/2/25 改定 (誤字・脱字、および、一部の表現が適当なものでは無かった為、追加・修正しました)

 


「お(にい)が学校から帰ってくる間に、畑の草むしりをしたんだよ! あとね、ジャガモも採ったんだよ! えらい?」

「うん、えらいな」

「えへへ♪」



 家に帰ってきて部屋にカバンを置き、リビングにあるテーブルの席につくと、さっそく隣に座ってきたサラが、今日自分が何をしたのかを報告してきた。ジャガモとはこの村で採れる芋の野菜で、テーブルの上には、サラが取ってきたのだろう土の付いたジャガモが、ザルに入って置かれてた。


 サラは僕の二つ下で、今年で12歳になる。僕と同じ学校に通っていて、一つ下のクラスだ。今日はサラのクラスは早帰りだったらしく、僕が家に帰るまで畑仕事を手伝っていたらしい。


 サラは僕の肩位の背丈で、濃い茶色の髪を肩までの長さで揃えている。兄の自分が言うのもなんだが、サラはかなり整った顔立ち──所謂美少女というやつで、クラスではかなりモテているらしい。12歳で、そういう好きだの恋だのの話は早いんじゃないかなとお兄ちゃんは思うのだ。……別に心配をしているわけでは無いけど……。そのサラは、綺麗な茶色の大きな瞳で僕を見ながら、畑にいたモグラの話をしていた。



「あらあら、サラはほんとに、お兄ちゃんの事が好きなのねぇ」

「お母さんは邪魔しないで!」

「はいはい」



 そう言って母さんは、夕飯の支度をする為台所に立つと、どこか嬉しそうにトントンとジャガモを切りはじめた。


 母さんはおっとりした性格なのか、サラに強く言われてもまるで気にしていない。怒る時はかなり迫力があるのだが、幸か不幸かそんな母さんをサラはまだ知らないでいた。


 そんな母さんは、たまに優雅な佇まいを見せる時がある。昔、貴族様の元で働いていたからと母さんは言っていたが、なるほどと思う。背丈は高くないが背筋がしゃんと伸びていて、歩き方も綺麗だ。サラと同じ茶色の瞳をしていて、髪はサラと同じ濃い茶色。肩より少し下位の長さの髪を今は一つにまとめていた。母さんはサラに似ていて、──いや、サラが母さんに似ているのか──整った顔立ちをしている。父さんと母さんの恋愛話に今さら興味も無いが、父さんはどうやって母さんを口説いたのか、ほんとに謎である。


 そんな母さんの作る料理はどれも美味しい。素材の味がしっかりと生かされる様に調味料の量も計算されているのか、どんな素材を使っても不味い事なんて無かった。だからなのか、僕もサラも好き嫌いが一つも無い。今日もサラが採って来たであろうジャガモの入ったシチューが鍋からいい匂いを醸し出していた。僕達の大好物だ。外でご飯をあまり食べた事が無い僕たちだけど、母さんの料理が美味しいから、不満に思った事は無かった。



「サラ、お皿とスプーンを用意してちょうだい」

「はーい」



 サラが母さんの手伝いに行ったのを見計らって、僕は手を洗う為、洗面台へと向かった。

 今暮らしているこの家は木造で、父さん達がこの村に来てから建てたって言っていた。リビングやトイレ、洗面台の他に両親の部屋と自分とサラの部屋がある。お風呂は無い。

 この村でお風呂なんてあるのは、お金持ちで、村で一番大きな村長の家くらいだ。村のみんなは、僕達も含め、体が汚れればお湯で体を拭く程度で、冬場はかなりキツイ。逆に夏場は、川で水浴びが出来るから良いんだけど。



 父さんが居なくなってからは皆で両親の部屋で寝ていたが、僕が12歳になった時から、サラは母さんと一緒に寝ている。サラは強く渋っていたが、兄妹とはいえ妹と同じ部屋はなんか嫌だった僕が、母さんに強く頼んでからはそうなっている。いつまでも兄弟一緒に寝ているなんて、恥ずかしいしな。


 手を洗ってリビングへと入った僕を見て、サラが嬉しそうに、



「今日私が採ったジャガモのシチューだからね♪。おかわりもたくさんあるからね♪」

「そっか、じゃあたくさん食べなきゃな」

「うん!」

「二人とも、用意出来たわよ。冷めない内に頂きましょう」

「「はーい」」


 そして家族三人で夕食を囲んだ。母さんの作ったシチューは相変わらず美味しかった。


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