アカリ
短めです。
アカリと名乗る女の子と一緒に行動する事にした僕は、杖の先に明かりを灯す。
「〈世界に命じる。明かりを灯せ。ライティング〉」
すると、体の中からフワッと力が抜ける感覚と同時に、杖の先にボウっと光が生まれる。良かったまた使えた、とホッとする。
前を歩く女の子も、檻の前に置かれていたランプを手にしていたが、比べられない程に周囲はさらに明るくなった。
明かりの灯った杖を前に向けると、女の子が茫然とそれを見ていた。
「……何、それ?」震える指で杖の先の明りを指差して問う。
「……さぁ?」答える僕。実際これが何なのか分からない。思い出そうとすると、途端に頭が痛くなるから、深く考えるのを止めてしまった。
「さぁ?じゃないわよ。良く分からない言葉をブツブツ言ったと思ったら、いきなり明るくなって。……あなた、怪しいわね……」
その服装だって見た事も無いしと、得意の半目で僕を見るが、彼女の言葉に一つ気になる所があった。
「————良く分からない……?」
僕自身、不思議と言葉の意味は分かっていた。なので、特に疑問に思っていなかったのだが。
「アカリさんには、僕の言葉が通じていなかった?」
顎に手を当て、考える僕。しかし、当の本人は、
「いえ、会話は普通に解るわ。そうじゃなくて、その杖の先に明かりを点けた時の言葉?っていうのかしら。それが私には一つも意味が分からなかった」
何かごにょごにょ~って感じと、説明する。
「それよりも!」
そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、僕に指差す女の子。
「そのアカリさんっていうの止めて欲しいんだけど」
と、人に物を頼む態度とは、まるっきり正反対の態度で言ってくる。
「え?だってアカリさん、僕より年上そうだから」 そう答えると、
「……あなたねぇ。初対面の女の子に、年上とか言っちゃダメよ!それよりも、これからは私の事はアカリと呼ぶ事!良いわね?」
その高圧的な態度が、すでにアカリさんと呼びたくなる一因にもなるのだが。
「良いわね!」なかなか答えない僕に念押ししてくる。その迫力に、僕は首をコクコク頷いた。
その返事によろしいと言わんばかりに頷く女の子改めアカリ。
「じゃ、先を急ぐわよ」
と疑問は全て解決したとばかりに前へと進むアカリ。僕も遅れまいと、杖を前に向けて歩き出した。