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※ 21/2/25 改定 (誤字・脱字、および、一部の表現が適当なものでは無かった為、追加・修正しました)


 

 その日の夕方になっても、サラは部屋からは出て来なかった。母さんは話し合いが終わった後、

「ごめんね」と、また出掛けてしまった。出掛ける前に、部屋に篭ったサラに扉越しに声を掛けていたが、サラの返事は無かった。


 母さんが出掛けた後、自分の部屋のベッドの上に寝転がりながら、先ほどまでの母さんとの会話について考えていたが、ここの所の不安のせい、寝不足気味だった僕は、いつの間にか眠ってしまった。



 ▲   ▲   ▲



 ──夢を見ていた。それが夢とすぐ分かる位、いつもの日常とかけ離れた世界だった。

 夢だと分かっていたので見なくても良かったんだけど、何故か起きる気には全くならなかった。



 暗い、昼なのか夜なのか分からない程に暗い空間。いや、よく見ればぽつりぽつりと──蝋燭だろうか──頼りない明りが、石で出来た壁に等間隔に続いている。廊下なのだろうか。


 その空間を、意識が自然と前へ進む。手には手燭(てしょく)を持っているが、頼りない蝋燭の明りでは足元すら満足に照らす事が出来ていない。しかし、進む意識に迷う素振りは感じられない。一体、誰の意識だろうか。


 暫く石廊らしき空間を進む。すると、向かう先に柵らしきものが浮かび上がってきた。あれは檻か。


 周囲の廊下と同じ石で組まれ、金属の柵で出来た檻。檻の両脇には燭台があるが、右側の一つにしか蝋燭が灯されていない為、周りの暗さも手伝って、酷く冷たく感じる。


 意識の持ち主は、点いていない方の燭台に持っていた蝋燭を移す。真っ暗だった檻の中がうっすらと照らされた。 すると、檻の中に人の形をした影が浮かび上がった。良く見ると、薄暗いがその影が人だと、そして女の子だと分かった。


 歳は僕と同じか少し上だろうか。背中までの長い髪を一括りにしている細身の女の子だ。切れ長の目が、普段なら勝気な印象を周囲に与えるのだろうが、今は目を瞑り、長いまつ毛が物静かな印象を与える可愛らしい女の子。



 意識の持ち主が柵に近づく。そして檻の中の女の子に向かって、



「スワキヅジアキエミオムエイエ?」



 ……何を言っているのか分からない。夢なのに……。


 自分の見ている夢に何故かガッカリしていると、檻の中の女の子が目を開け、意識の持ち主を睨みつけながら、



「キソッキッフフフリョウォメ!!」



 と、こちらも何を言っているのか分からない。しかし、その激しい口調から、怒っているという事は伝わってくる。

 暫し僕と──いや、意識の持ち主と睨み合っていたが、ふとこちらが目線を逸らし、



「ジュエヒェブブコイヅ……」



 と言った後、燭台の蝋燭を手燭に移して、来た道を戻って行った。


 何故か、僕の意識だけがその場に残る。再び暗闇が増した檻の中で、曲げた膝に顔を埋める女の子。やがてすすり泣く声が聞こえてくる。僕はオロオロするが、何かが出来る訳でも無く、そっと見守る位しか出来ない。


 女の子は、ひとしきり泣いた後、顔を上げる。長いまつ毛が涙で濡れていた。そこで僕の意識は何かに引っ張られる。引っ張られる直前、女の子は暗闇を見つめながら、「クシュ、イイオケ……」と呟いた。

 意識がグングン引っ張られる。その中で、なぜか僕は女の子の呟いた言葉を明確に理解していた。



 ──誰か、助けて……と。


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