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小さな光明

※ 21/2/25 改定 (誤字・脱字、および、一部の表現が適当なものでは無かった為、追加・修正しました)

 

 次の日、一人では眠れないと言ってきたサラと、久しぶりに一緒に寝た僕は、昨日行かなかった森の鍛錬場へと来ていた。

 朝食は、一緒に起きたサラが作っているはずだ。12歳とはいえ、母さんの手伝いを苦も無くこなしていたサラなら、簡単な朝食を作る位ならば、それこそ朝飯前である。


 昨日よりもどんよりとした空の下、鍛錬場所に来た僕は、入念に準備運動をする。昨日から、頭の中が要らぬ想像で埋め尽くされていた。悩みの有る時は、無心になって体を動かす方が良いと、クラスメイトの一人が教室で言っていたのを思い出す。彼のジョブは【格闘家】だったはずで、他の生徒に脳筋と言われていたっけ。


 準備運動を終えた僕は、まずはお決まりになっている、杖での打ち込みから始める。木と木がぶつかるカン!カンッ!という音だけが周囲に響く。

 そうして暫く打ち込みをしていると、不思議と何も考えない様になってきた。格闘家の彼の言う事は正しかった様で、今の僕には良い気分転換になっているようだ。



「──ふぅ」



 息が上がってきた所で打ち込みを止め、一息吐く。汗ばんだ体に、冬間近の冷たい空気が心地よい。しかしそれほど風は吹いていない。この辺りでは、冬間近になると、毎年の様に冷たい北風が吹き始めるというのに、今はそよそよとした風が吹くだけだ。もっとも、この汗だらけの体に、いつもの冷たい北風を浴びると風邪を引いてしまいそうだから、この位の風でちょうど良いのかも知れない。



「よし、次は──」



 一息ついた僕は、魔法の練習に取り掛かる。

 一昨日の、魔法が使えた時の感覚はほとんど覚えていない。スライムに食べられまいと必死だったからしょうがない。かろうじて覚えているのは、魔力がほとんど残っていない状態だった事くらいだ。今までの練習の時は、体の中の魔力のほとんどを杖に込めていたが、もしかするとそれがいけなかったのかもしれない。

 そう考えた僕は、普段よりも魔力を練る時間を短くする。イメージとしてはいつもの半分位だろうか。

 練り上げた魔力を杖に通す。イメージは、あのスライム戦と同じ赤、火だ。



「〈世界に命じる。火を生み出し飛ばせ! ファイアーボール〉!」



 自分の中で練られた魔力が杖に吸い込まれる。すると、杖の先に熱気が生まれ、やがて火の玉が発現した。発現した火の玉は、杖の向く先にある、木を丸く切っただけの簡素な的に当たると、掻き消える。当たった的には、少し焦げた跡が残った。



「―よし!」



 思った通りだ! 何故かは分からないが、杖に込める魔力の量が多いと魔法は発現しない様だ。これは大発見である。実戦以外でも魔法が使えたのだ。これならば、次の実技試験でも魔法が使えるかもしれない。―ただ、学校では父さんの杖は使えない。それだけが問題だけど──。



「次に練習する時は、サラの使っている杖でやってみるか」



 一昨日と今日、2回連続で魔法が使えた事に、僕の中では余裕さえ生まれていた。さっきまで頭の中を占めていた不安も、綺麗サッパリである。我ながら現金なものだ。

 空を見上げると、さっきよりも明るさを増していた。もう一回魔法を打ちたかったが、時間が無さそうだ。この後の学校の準備も有るし。

 僕は髪を引かれる思いで鍛錬場を後にする。物陰に、何者かが潜んで居たことも気付かずに―。



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