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168話

体調を崩してしまいまして……。


少し更新が遅れます。

 

 見張り部屋の扉をそっと開け、外の様子を窺う。そこは壁には染み一つ無い白い壁紙が張られた屋敷内の廊下の様だ。淡いアイボリーのシートが貼られた廊下に白い光を落とし込む、ここ【ロワータウン】でもおなじみの魔力灯が、等間隔に設置された天井。やはり俺達はジ・エンド内に居ると思った方が良さそうだな。問題はどの階に居るかだが。



「……どうやら誰も居なさそうだ。今の内に行くとしようぜ」



 背後に居る四人にそう声掛けして扉から出る。廊下は左右に延びており、どっちが外へと出れるエレベーターに通じるのかは分からない。



「さて、どっちかな。……こういう時、勘が良い方かい? ノエルさんよ?」

「……いや、あまり良いとは言えん。貴殿は?」

「俺もあまりだな」

「普段の行いがあまり良くないからだよ、アラン兄ちゃんは」

「うるせぇぞ、ジャン。そういうお前はどうなんだ?」

「え、俺?! 俺もあまり……」

「んだよ、ったく。ならばここは女神様のご意見ってやつを伺いますかね?」



 そう言って、後ろに控えるミナとノイン嬢ちゃんに話を振ると、ミナは焦った様に、ノインは顎に手を添えて、



「えっ、私っ!? 無理無理っ! 決められないよぉ!」

「……こういう場合、大抵は左手側に進むのが良いと、本に書いてあった様な気がします」



 それぞれ意見をした。おい、ノインの嬢ちゃん。本なんて高価な物、読んだ事があるのかよ。ノインの嬢ちゃんも大概だな。やっぱりノエルと兄妹なんじゃねぇかと思えてくるぜ。



「えぇ、ノインちゃん! 本を読んだことあるの!?」

「え、えぇ。昔、ですが……」



 案の定、ミナが食い付く。それに対してしどろもどろになって答えるノインの嬢ちゃん。ったく、面倒くせぇ。



「ほらミナ、じゃれ合うな。んじゃ、左に行って見るか。みんなもそれで良いな」



 本に興味を示すミナに、落ち着く様に言った後、確認する。と、一様に頷いた。



「んじゃ、行こうぜ」



 そう言って、扉を出ると左手側に進む。俺の後にはジャン、ミナ、ノイン、そして最後尾にノエルの順だ。


 そうして列になって廊下を進む。天井の魔力灯と白い壁が変わり映えもしない中、廊下の左右には途中、幾つもの扉があったが、鍵が掛けられていた。中には鍵が掛かっていない扉もあったので、そっと開いて中の様子を窺うも真っ暗で、中の様子を窺う事は出来なかった。灯りを点けて確認しても良かったが、下手に見つかる危険を冒す程も無いと判断し、特段調べる事もせずに先を進んだ。


 そんな扉を10程過ぎ、廊下の曲がり角を曲がった先は、



「……行き止まり、だな……」



 前、左右ともに壁に覆われた行き止まりとなっていた。扉も無く、完全な行き詰まりだ。



「……戻る、か」

「……何ですか?」

「いや、何でもねぇよ」



 行き止まりになっている目の前の白い壁を見た後で、後ろに居たノイン嬢ちゃんを見る。自分の提案が間違っていた事を責められたと思ったのだろう、ノインの嬢ちゃんが胡乱げな目で俺を見返す。



「……妹を責めないでくれないか?」

「別に責めてねぇよ。ってか、何も言ってねぇだろ?」



 やれやれと肩を竦める。嫌だねぇ、被害妄想を拗らせた人間ってのはよ。……まぁ、多少はノインの嬢ちゃんを見た時、多少ジト目だった事は否定しないがな。



「んじゃ、戻るか」



 道を引き返そうといた俺達。だが、突如として廊下にビィ~!ビィ~!と警報が鳴り響く!



「ヤバいっ! 逃げたのがバレたかっ!? おい、さっさと戻る——」

「——その必要はございませんよ?」

「——誰だ!?」



 振り向いた俺の目に映ったのは、黒のスーツに身を包んだ背のデカい女が、メイド服に身を包んだ丸坊主の巨漢を三人引き連れている所だった。



「……よぉ、誰かと思えば、俺に一服盛りやがった秘書さんじゃねぇか。そっちの変態ハゲにも見覚えがあるぜ」

「あら、覚えてくれていたなんて、意外と頭の良い犬っころなのねぇ」



 そう言って妖しく笑うのは、このジ・エンド内にあるギャズの家を訪れた俺とジャンに、一服盛ってあの牢屋へと閉じ込めた、ギャズの横に居た女秘書だ。

 そして、その後ろに控える様に立っているメイド服の巨漢(へんたい)は、その女秘書の命令を受け、倒れた俺とジャンをあの牢屋に運んだヤツだろう。



「いや、なに。俺に生意気くれやがったヤツは忘れない性質(たち)なもんでな。この屋敷をオサラバする前に、是非ともそのすかした面を拝んでおこうと思っていた所だ」

「そう。それは何よりね。なら、私の顔も見た事だし、このまま牢屋(ハウス)に戻ってくれないかしら?」



 そういうなり、女秘書は胸ポケットに入っていた眼鏡を取り出すと掛け始める。眼鏡を掛けた事で、最初から放たれていた怪しい殺気が、さらに大きくなった。マズいな、ギャズの所に居るからタダモンじゃねぇとは思っていたが、かなり手慣れていやがる。


 俺は、その女秘書の放つ殺気に当てられて、体を震わすミナの前に庇う様に立つと、肩を竦めてみせる。



「おいおい、俺の事を犬っころ呼ばわりするんだ。なら、小屋から出て、自分の縄張りを確認したくなる気持ちも解るだろ?」

「えぇ、そうね。犬は自分の縄張りにマーキングしなきゃ落ち着かない生き物だものね。でも、それもお終い。もう散歩の時間は終わったの。これからはお寝んねの時間よ」



 そう言うと、黒スーツに包まれていても判る程に、大きく突き出たその艶美な胸元に手を差し込むと、見覚えのある一本の注射器を手に取る。



「さぁ、もう一度、これでお寝んねしてもらおうかしら、ね?」

「……テメェ……」


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