表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/236

159話

 

「済みませーん」


 エレベーターを下り、元は12階だったコンクリートの床を歩いて、目の前に建つ打ちっぱなしのコンクリートで出来た、四階建ての家の玄関に着く。そしてジャンが、家に向かって声を掛ける。しかし、誰も出てこない。


「ちょっとどいてろ」


 ジャンを横に退けると、玄関横にある、カメラ付きのインターフォンを押す。

 このロワータウンにインターフォンが付いている部屋なんて無い。ジャンがインターフォンに気付かなかったのも無理はない。しかもカメラ付きである。それだけでこの建物が異質だと言えるだろう。


 そんな事を考えていると、


「はい、どちら様です?」

「うわっ? ここから人の声がっ!?」

「良いからお前は黙ってろ。——済みません、教会のモンなんですか、ギャズさんはおいでですか?」


 出来うる限りの丁寧な言葉使いで、家政婦だろうか、インターフォンに出た女に、ギャズが在宅か聞く。


「……はい、ギャズ様はご在宅ですが、何か?」

「はい。すでにご存じでしょうが、ウチの教会のモンが、お宅のギャズさんの所に使いに出したっきり、戻ってきておりませんで……。何かギャズさんがご存知ないかと」

「……申し訳有りません。その件でしたら、すでに憲兵の方に報告致しておりますので、詳しくは憲兵事務所の方にお問い合わせくださればと」


 大して申し訳無い感じで、受け答えする女。


「それは分かっているんですが、もう一度思い出して頂きたく」

「いえ、他にもう言う事は……。——」

「……どうしました?」

「……」


 急に応答が無くなった。どういう事だ? 


「アラン兄ちゃん……」


 ジャンが不安そうに俺を見上げてくる。しかし、そんな顔で見られても、俺自身分からないのだ。取り合えず、ジャンに肩を竦めてみせると。


「……済みません、お待たせしました。ギャズ様がお会いになるそうですので、どうぞ」


 と、インターフォン越しに伝えられると、玄関の鍵だろう、玄関ドアの内側でガシャシャン!と、音が複数なった。


(ちっ! 一体どれだけの鍵を掛けてんだよっ)


 鍵なんて普通は一個、無いしは二個位だっていうのに、この玄関ドアから響いてきた音は、その数倍は有ろうかという程の解錠音が聞こえてきた。どんだけ用心深いんだか。


(うちの教会なんて、便所にすら鍵なんて付いてねぇってのによ)


 ギィっと重い音と共に、白塗りで鉄製の両開き扉が開く。


「おい、行くぞ」「……うん」


 まるで、アンダーグラウンドにでも足を踏み込んで行く様な感覚。


(いや、まさにそうなんだろうな)


 知らず気合いを入れる。


 ここに住むギャズに付いて、その悪名は俺の耳にも届いている。

 曰く、街の役人に、尋常じゃない額の賄賂を渡して、色々な悪事を見逃してもらっている。

 曰く、殺人以外のありとあらゆる犯罪に手を染めている。

 曰く、アンダーモストに送る人間を選別出来る権利がある


(ま、全部だろうな)


 じゃないと、このロワ―タウンにこんな物は建てられない。まるで、ロワ―タウンの王者の様に、このジ・エンドの中にこんな物は。


「気を付けろよ」


 俺は少し後ろを歩くジャンに注意を促した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ