155話
△ ???視点 △
「どうなさいましたか、ミント様?」
お茶を淹れてくれた御付きのシスターが、カップを差し出しながら問い掛けてくる。
「有難う。——私、何か可笑しな顔をしていたかしら?」
カップを受け取り口に含むと、お茶の中に入れたミルクの優しい味が、口の中に広がった。寝る前に飲むにはちょうど良い。
カップをテーブルに置き、御付きのシスターに尋ねる。するとそのシスターは、
「——いえ、どこか上の空でしたので、何かお考えなのかと」
顎に手を添えて、「ん~」と考えてからそう口にした。そして、思い出した。夕方に鑑定した一人の男の子の事を。
「——そういえば今日の夕方、久しぶりに私が鑑定したのだけど、面白い男の子がいたのよ。その子、私でも全てを視る事が出来なかったわ」
椅子から立ち上がり、私用に与えられた部屋、その部屋の片隅にあるベッドに移動して腰掛けると、私の後に付いて来ていたシスターが、
「そうなんですか? スゴイですね~!」
「ん?何がかしら?」
「いえ、先程大司祭様が仰っていたのです。何でも、同じ時間に鑑定をした人の中にももう一人、全てを視る事が出来なかった女の子が居たと」
「もう一人居たの? それは凄いわね」
言って、ベッドにポフっと横たわる。すでに寝間着に着替えているので、このまま寝てしまってもいいのだが、シスターの話の続きが気になった私は、シスターに目で続きを促した。
「はい、大司祭様の話ですと、今日の鑑定係だった方から報告を受けた様なのです。何でもその方は女性だったとか」
「そうなの。一日に二人なんて珍しいわね」
教会で鑑定を行う人は日に多くて十数人。普段なら年に一人居るか無いかの頻度しか現れない、私達でも視えない人達。それが同じ日に二人も、しかも同じ時間帯に、私達鑑定のスキルでも視えない人が来るなんて、初めてかもしれない。
「そんな日もあるんですね~」「……そう、ね」
シスターの言葉にあいまいな返事を返す。シスターは特に気にする様子も無く、横になった私に布団を掛けてくれる。ほとんど重みを感じない、さりとてとても暖かい。何かの魔物の羽根で出来た布団だという事らしいけど、そんな物、教会で使用しても良いのかしら。
(偶然なのか……。それとも……)
失礼しますと言い残し、部屋の照明を落として部屋から出て行くシスターに、有難うと礼を言うと、目を瞑った。
だが、妙な胸騒ぎの様なものを感じ取ったのか、私は中々眠りにつく事が出来なかった。