冒険者ギルド
△ ユウ視点 △
「―ここが、冒険者ギルド、か―」
石鶏亭を出た僕達は、宿の女将さんに教わった道を進みながら、イサークの冒険者ギルドの前に着いた。
ちなみにオグリは、宿屋の裏にあった厩舎に預けてきている。詳しいとは言えないイサークの街を、馬と馬車を引き連れて移動するのは、少し骨が折れるからだ。馬車は馬車置き場に置かせてもらった。
「ここも石積造りなのね……」
冒険者ギルドの建物を見上げるアカリが、そう口にする。日乃出には木造の建物しか無かったから、よほど珍しいのかもしれない。
冒険者ギルドも、他の建物と同じく石が積まれて造られた、二階建ての建物だった。高さが低い分、面積は広くて、大通りに建っていたあの高そうな宿が、二つ建てられる程の広さ。くすんだ茶色の両開きの開き戸が正面にあり、外観には窓以外に余計な装飾などは無く無骨な雰囲気。まさに冒険者ギルドって感じだ。
「お兄、早く中に入ろうよ~!」 サラが僕の手を取り、催促する。
「あぁ、行こうか」 サラに導かれるままに、両開きの開き戸をギィっと開け、中へと入る。
ギルドの中は閑散としていた。お昼前のこの時間だからなのか、冒険者の姿は見られない。
正面には受付用だろうか、若い女性の人が数人立っているカウンター。その奥には木棚と、二階に上がれる階段が見える。
右奥に体の大きな男の人が二人居るカウンターが有る。あっちのカウンターは何用だろうか。
さらに左奥には、食堂兼酒場だろう円卓が10卓程とカウンター席が見えるが、今は誰も座っては居ない。
「……広いな……」 率直な感想が漏れ出た。キョロキョロと辺りを見渡していたサラも、「広いね~」と驚いている。
「そう? そんなに広いとは思えないんだけど」
ここよりも広い場所に住んでおられたお姫様だけが、別の感想を口にする。そりゃ、あのお城や橘のお屋敷に比べれば、そこまで広くは無いんだろうけどさ。
初心者宜しく(いや、初心者なんだけど)、何をして良いのか判らずに立ち尽くしていると、
「そこのお三人さん、どうしたのかな? 依頼の発注かな?」
正面の受付カウンターに立つ女性のうち、明るい茶色の髪をした女性が僕達に声を掛けてきた。
「いえ、そういうわけじゃあ―」
「まぁ、そこじゃ邪魔になっちゃうし、こっちにおいでよ。ね?」
痛くしないからさ♪と手招きするので、その女性が立つカウンターの前に進む。
そして、僕たちがその女性の前に立つと、女性はカウンターに肘を突いて上目使いで、
「で、今日は何のご用事かな?」 僕達に質問してくる。
「今日は―」 そこで振り返り、後ろに立っているサラとアカリに視線を向けると、二人とも頷いた。それに頷き返すと、再び正面を向いて女性に用件を伝えた。
「僕たち、冒険者になりたいんです!」