アーネへの謝罪
※ 21/2/25 改定 (誤字・脱字、および、一部の表現が適当なものでは無かった為、追加・修正しました)
朝食を摂り、身支度を整えた僕とサラは、今日も一緒に学校へと歩いていく。
いつも通っている道だが、なんだか今日はいつもと違う感じがした。歩いていて、気持ちが良いのだ。最近まで霞がかった様な気分だったのだが、今は周りがとてもハッキリと見え、眩しい位だ。さらに、朝の冷たい空気が心も体もスッキリとさせる。魔法が使えたという事が、こんなにも自分に影響を与えるなんてな。
「今日のお兄、ご機嫌だね♪」
隣を歩くサラが、僕の腕にくっつきながら言った。いつもなら歩き辛いと文句を言うんだけど、サラに迷惑を掛けた手前、あまり強く言えない。
「そうかな?」
自分自身でも分かっている事をサラに指摘され、僕は少し気恥しくなる。
「うん。鼻歌でも歌いそうな感じだよ!」
僕はそこまで浮かれていたのか。
「―お兄、今朝、何かあったの?」
「……そうだな、サラにはたくさん迷惑掛けたし、あとで教えてあげるよ」
「え~、今がいい~」
「あとでな。ほら、もうすぐ学校に着くぞ」
「お兄のケチ~」
愚痴るサラから腕を離し、学校に着いた僕は昇降口に向かう。すると、教室に向かうアーネを見つけた。
「おはようアーネ」 アーネに挨拶をする。すると、びくっと肩を震わせたアーネが、ゆっくりと僕に振り向いた。ん、驚かせたかな?
「……おはようユウ。今日も不貞腐れモードかしら?」
明らかに不機嫌そうなアーネの顔。その目は、疑いの半目である。そんな目で僕を見るなんて、朝から失礼なやつだなぁ。
「不貞腐れモードでは無いが、朝から失礼な挨拶をされて、少々嫌な気分だな」
「……あら? 軽口が叩ける位にはなったのね?」
「あぁ、誰かさんのお陰でな」
僕が軽口を叩くと、キョトンとした顔をするアーネ。アーネにも心配を掛けたので、会ったら謝りたいと思っていたが、早速これである。
「―で、ほんとに大丈夫なんでしょうね、ユウ?」
すると今度は一転、少し声色を下げ、心配そうに僕の顔を窺ってくる。その顔には不安が表れていた。あぁ、僕はここまで、アーネに心配を掛けていたのか……。
「―ああ、大丈夫だ。その、心配掛けたな、アーネ」
「……そう、それなら良かったわ」
そう言ってアーネは微笑んだ。 その笑顔に思わず見惚れてしまう。
「ありがとな、アーネ。心配してくれて」
その笑顔を見て、ごく自然にアーネの頭をポンポンと撫でてしまう。さっき、サラにもしたけれど、アーネにも小さい頃は良くしてたっけな。
アーネは一瞬ポカンとした後、顔を真っ赤にした。
「わ、私は心配してないわよっ!―サラちゃん!? そう! サラちゃんがあまりに落ち込んでたから、サラちゃんの心配をしてたのよっ!」
捲し立てる様に言うアーネ。焦っているアーネを見るのは久しぶりだ。
その様子を見るに、やっぱり頭を撫でられるのは恥ずかしいのかなと思った。小さい頃じゃあるまいしな。だけどアーネは、頭に乗せられた僕の手を振り払う事はせず、されるがままになっている。やっぱり恥ずかしく無いのかも……? う~ん、分からない。
「はいはい、お兄もアーネちゃんも、イチャつくのはそれ位にしてください」
後ろに居たサラが、僕とアーネを離す様に間に入ってくる。そして、手でギュギュウ!と、押してきた。
「「イチャついてなんかない!」」
僕とアーネの言葉が見事にハモった所で、朝のチャイムが鳴ったのだった。