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「はぁ、はぁ、はぁ──」
ゴツゴツとした石廊下を、マジックライトの灯りを頼りに進んでいく。目指すはこの城の主が居る最上階だ。
周りは真っ暗で何も見えない。マジックライトが無ければ何処をどう歩いているのかすら分からなくなりそうだ。この土地に足を踏み入れた時から拝めてはいない、陽の光が恋しくなる。
周囲に漂う生臭さと血臭、そして瘴気の様な重たい空気が俺の体力を無遠慮に奪っていく。ここはそういう場所なのだと事前に分かっていた事なのに、それでも気分が滅入ってくる。
こういう時は決まって、旅を共にする仲間たちが叱咤し、鼓舞し、慰め、同意してくれるのだが、今、俺の周りには誰も居ない。だが何一つ不安を抱いてはいない。
──紅い髪の戦乙女が、青い瞳の聖者が、緑の風をまとった妖精王が、黄褐色の肌をした岩窟王が、そして、黒き存在の絶対者が──、いずれも俺が呼び出した一騎当千の頼れる仲間たちが、この終わりが決まった世界を救おうとする俺の力になる為に、今、この場に向かってきているのだ。不安を抱く理由が無い。それどころか──
(あいつら、ちゃんと勝てんのか?)
逆に心配する余裕すらあるのだ。まぁ、あいつらならば、何も問題は無いだろうけれど。
そんな事を考え、ついでに、廊下の角や途中の部屋から現れては、襲い掛かってくる有象無象を斬り伏せて、俺は目指していた目的地、その大扉の前に立つ。
「あいつら、早く来ないと俺がオイシイ所を全部持っていっちまうぞ?」
そう自己弁護を口にした俺は、その大扉の取っ手に手を掛け、ゆっくりと開けていくのだった──