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88話 エルフの隠れ家

 結局次の日。

 寝すぎた仕事に行かないとと騒いでいたコロネをなだめて、奇病にかかった人を連れてきてもらい聖水を飲ませた結果。

 ものの見事に、呪いは解けた。


 とりあえず、農地や作物をすぐに無害化するのは範囲が広大すぎて現実的に難しいので、国民に一ヶ月に一回、定期的に聖水を飲ませるということ。

 そして魔素濃度が強い場所には聖水を蒔き、魔素溜にならないようにしようという話になったのだが。


「問題は聖水がそれだけ手に入るかですね」


 コロネが朝食をつつきながら、言う。

 食欲がないのか先程から全然減ってないのは気のせいだろうか。

 それにしても、問題は聖水の量だ。

 私が持っている聖水だけでは正直量がたりなさすぎる。


「とりあえずレイゼル山脈とエルフの森付近にある『エルフの隠れ家』というダンジョンでゲーム内では手に入ったから行って見ようと思う。

 瓶さえもっていけば好きなだけ汲めたし。

 ダンジョン産ならどんなに水をとっても無くなる事はない……と思うけどどうだろう?」


「……そうですね。それも含め検証したほうがいいかもしれません。

 しかしエルフの隠れ家ですか、気になる名前のダンジョンですね」


 コロネがコーヒーを飲みながら感想を言う。


「うーん。ゲーム中では確か、昔の遺跡でエルフが暮らしていた形跡があったからそう呼ばれていたらしいけど。

 奥にボススライムがいたくらいだぞ。ああ、でも稀に超レアピンクスライムがでて、それが出ると超ラッキーで150装備のSSRが出ることが」


 二へへと私が笑っていると


「ネコ また変な顔になってる」


 と、リリにジト目で言われるのだった。


 △▲△


 結局、王都に誰も残さないのはやばいとのことで、アルファーをコロネの知り合いのマリクさんの護衛に付け、私たちはリリに乗ってダンジョンにやってきた。

 ちなみにマリクさんは白髪のなかなかのイケメン貴族で、コロネが拷問されるきっかけとなってしまった人物なのだが、コロネ曰く内政においてとても優秀らしい。

 そんな彼に国を任せ、私たちは アケドラル帝国と神々が住むレイゼル山脈との間。エルフの森よりちょっと手前の大陸の端っこにひっそりとある洞窟の前にたどり着いた。


 ふと、ダンジョンにたどり着く前に、黄色いモヤのかかったような丸い塊を見つけた。


「何だこれ?」


「はい、これが以前言っていた魔素溜になる寸前の魔素の固まりです。

 この状態になってしまうと、もうあと2〜3年もすれば大きく広がり完璧な魔素溜となり魔物が生まれてきます」

 

 と、目を細めてコロネ。


「へぇ、これが魔素か」


 と、私がシゲシゲと眺めていると。触るとどうなるんだろう?とコロネに聞こうとしたその時


「美味しいよね!マソ!」


 と、リリが手でひょいっと鷲掴みして食べてしまう。


 ……


 …………


 ………………。


 流れる沈黙。


 

 えええええええ!?食べたっ!?


「リリ様っ!?魔素ですよ!?た、食べて平気なのですか!?」


 慌てて、コロネがリリに近寄り、リリはキョトントした顔で


「うん?これ美味しい!カルネル山にいたとき食べてた!リリの食事!

 龍のときコォォォォって吸い込めばいっぱい集まった!」


 と、にっこりとリリちゃん。


 うん、そういえば、山にいたときは魔素を食べたと言っていた気がする。


「しょ、食事ですか?魔素の塊は人間やエルフでは触れることすらできません。

 まさか食べる事ができるとは……」


 唖然とするコロネにニコニコ顔のリリちゃん。

 やべぇ、ひょっとしてリリちゃんいれば人類の問題も簡単に解決するんじゃないか?

 なにげにリリちゃんも心読めたりとすごいチート能力もちだよね……。


 

 △▲△

 


 

「こんな所にダンジョンが……」


 あのあと、崖の奥底。潮が引いたその時にだけ現れる秘密の通路の前に私たちはやってきた。

 とりあえずリリちゃんが魔素の塊を食べられるのは別として体調が悪くなっている人に聖水は必要だったため聖水集めを続行したのだ。

 木々の間にひっそりと隠れてある扉をなぞりコロネが感嘆の声をあげる。


「誰も知らなかったのか?」


「はい。エルフと人間の領土の境界というのもありますが、あまりここは人が来ませんし、このような崖を降りてみようなどという者もいないでしょう」


 と、コロネ。

 確かにこの世界って、アニメや漫画みたいに冒険者ギルドみたいのがあって、冒険者が旅しているって風でもないし、辺境の場所まで調べはしないのだろう。


「んー。言われてみればそうかもな。

 うっし、とにかく入るぞ。コロネ、リリに捕まって」


 言って私は手を扉の前におく。

 ここのダンジョンは入るときに呪文が必要なタイプのダンジョンだ。


「手、どうしておくの?」


 リリが不思議そうに聞いてくる。


「呪文を唱えると入れるタイプのダンジョンだからだよ。

 んじゃいくぞ。


 アム ベス ラル ファロンテ」


 私が呪文を唱えると同時に、扉が開き――コロネが驚いた表情をするのだった。



 △▲△


「おーダンジョンの中入れた」


 ダンジョンの中に入ると、リリが嬉しそうに辺りを見回した。

 何故かダンジョンの中なのに木々があり、放置された果樹園だろうか?木々に果物が実っている。

 天井も高く、上は魔石なのだろうか?石が光りまるで外にいるかのように明るい。

 洞窟の中に森が広がっているような変わった景色が続いている。


「あの、猫様一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」


「うん?何だ?」


「先程の呪文ですが、どういった意味の言葉でしょうか?」


「え?意味まではわからないな。

 古代遺跡を調べている探検家のNPCが昔この洞窟に隠れ住んでいたエルフ達が入るために使っていた合い言葉みたいな事を言っていた気がするけど……」


「……そうですか」


 言ってコロネは視線を逸らす。

 その顔色はあまりよくないように見えるのは気のせいだろうか。


「あの呪文が何かあったのか?」


「いえ、何でもありません。聞き慣れない響きだったので気になりまして」


「ああ、なるほど」


 私が言うと、リリが噴水を見つけたようで


「ネコ!あそこ噴水ある!」


 と、嬉しそうにトコトコ駆けていくのだった。


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