73話 VS守護天使
時は少しだけ遡る。ここはコルネリアの砦付近上空。
リュート王子に転移の魔方陣でサウスヘルブに送ってもらい、リリの背に乗ってコルネリアの砦付近の上空についてみれば、そこには数多くの魔物が砦に向かっていた。
山から砦に向かって長い列を作りザッザッと行進しているのだ。
既に先発隊の一段は城門まで達しており、砦の中でも交戦が始まっている。
「コロネとリリは、砦の方を!!
自分は山の方の魔物を撲滅するっ!!」
言ってリリから飛び降りればコロネとリリがパーティーチャットで了解と答え、各自持ち場へと向かう。
魔物の大群はレベル40〜100。
ちょっと前の私がレベルを上げてやる前のエルフ領土なら制圧できてしまうレベルだ。
もしかしてコルネリアの砦を制圧したあとはエルフ領に向かうつもりなのだろうか?
とにかく真偽を確かめる必要がある。
私は大地に降り立つと、そのまま広範囲の罠で死神の乱舞で魔物たちを撲滅した。
残りは砦に向かってしまっているが、コロネとリリがいるので大丈夫だろう。
コロネもモンスターだけ指定して殺せる範囲魔法を持っているし。
問題は……っ!!
私はモンスターの発信源へと向かう。
そこにモンスターをけしかけた何かがあるはずだ。
魔力察知スキルのスキルで山の中を見てみれば、レベル200が3人。
なるほど。こいつらが黒幕か。
急いで山に瞬間移動で向かうが……山の中に辿りついたその瞬間。
『天紅蓮炎瀑龍』
私を紅蓮の炎が襲うのだった。
△▲△
「っていきなりかよ!?」
山の中腹についたとたん、まるで行動を読んでいたかのように 遥高みの上空から攻撃してきたその攻撃を、私は大地に手をつき、トラップを発動させた。
「トラップ発動!!『水柱』!!」
敵の炎の攻撃を強大な水柱がいっきに呑み込み消火してしまう。
「……なっ!?まさか!?」
と、上空に炎のような燃える羽で飛んでいる、赤髪の騎士風の女性が叫んだ。
なかなか美人の赤毛さんだ。どうやら犯人はこいつらしい。
私が鑑定してみれば
***
職業:聖騎士
種族:守護天使
レベル:204
名前:レイスリーネ
ギルド:✝暗黒の翼✝
***
なるほど。プレイヤーの守護天使か。
しかし守護天使ならレベル差くらいはわかりそうなものだが……。
てか、先程の技は広範囲の火炎系魔法のような感じの技だ。
もし私が防がなければ山の樹樹をも巻き込んで山火事になっていただろう。
環境破壊も厭わないとみえる。むしろ山火事が狙いだったのかもしれない。
だったら、とっとと石化してもらったほうがいいだろう。
私が女守護天使に飛びかかろうとした瞬間。
がきぃん!!
今度は短剣を投げられて、私はそれをバリアで防いだ。
別の方向から今度は男の騎士タイプの守護天使が登場する。
レイスリーネを守るかのようにこちらに切りかかってきたが、私はそれを鎌をだして防いだ。
そして始まる剣と鎌の応酬。
名前はアルファー。レイスリーネと同じくレベル204だ。
恐らく同じマスターに仕える守護天使なのだろう。
まぁ、いるのは気配でわかっていたが、こいつなかなか強い。
剣を交えれば、そこそこ相手の力量はわかるが……同レベルならかなり苦戦しただろう。
だがぶっちゃけ、現状ではレベル差がありすぎて雑魚にしかすぎない。
なんとなく癖で鎌をだしてしまったが、素手でも十分受け止められるほどのレベル差だ。
が、何を思ったのか、女守護天使は、再び魔法詠唱しだす。
しかも視線は私の方じゃない、明らかに山の木々に目がいっている。
やはり狙いはそっちか!?山火事にでもして少しでも被害をだしたいというわけだろうか?
うまくいけばエルフの大森林まで火の手はおよぶかもしれないし。
敵わないなら少しでも被害をと、行動をとってくるあたり、今までのプレイヤー連中とちがって、ちゃんと現状認識はできているようだ。
――だが、こちらも何かすると理解ているのにそんな事させるわけがない!
面倒なので、私は素手で、男騎士の剣を掴んだ。
いや、だってこいつ私のスキルの発動防ごうと、ワザとこまめに攻撃してくるんだもん。
しかもレベル補正無効化する技だ。連続技なのでくらっても微々たる痛さだが、もしくらえばダメージ扱いなので技や詠唱はきっちりキャンセルされてしまう。
レベル差もきちんと計算して、ちゃんとこちらの行動を阻害してきている。
流石守護天使といったところだろうか。
あくまでも捨て身であの女守護天使の詠唱時間を稼ごうとしているのだ。
「なっ!?」
驚く守護天使(男)など無視してそのまま男守護天使もつれて瞬間移動で、女守護天使の背後に周り、「石化!!」と、スキルを発動するのだった。
「レイスリーネっ!?」
アルファーは空中を飛んでいた所を石化されて、落下していく守護天使――レイスリーネを、見て歯ぎしりする。
助けにいきたいが背後を見せることもできないといったところか。
男守護天使は私につかまれた剣をあっさり放棄し、私との間合いをとった。
なかなか思い切りもいい。
わりと武器に固執しちゃう人って多いし、判断力はなかなかいいが、如何せんレベル差がありすぎ、この守護天使では私には勝てないだろう。
「いい加減諦めたらどうだ。お前に勝ち目はないぞ」
私が言えば守護天使はその瞳に憎しみの色をうかべ、
「何を世迷言を。プレイヤーのお前が知らぬはずもないだろう。
我らにとって主の命令は絶対だ。
それに逆らう権利など我らにはないっ!!!
我らには選択する権利などないのだ!!
例えこの命尽きようとも主の命をはたすまでっ!!」
言って翼を広げた瞬間。白い羽が光り出す。
その光と同時に女守護天使の石化が解ける。
って!?天使の羽ってそんな効果あったのか!?
「例えこの身尽きようと!!主との契約は果たそう!!
死ぬがいいプレイヤー!!」
言って突っ込んでくる男守護天使。
こいつっ!?
私がこいつらを殺せないことを見越している。
殺せる相手ならとっくに殺していると理解しているのだろう。
天使が光っている時は確か状態異常系の術は無効のはずだ。
石化も眠りも麻痺も使えない。
体当たりで女守護天使の詠唱を完成させる気だ!!
「耐えてください!!アルファー!!」
女守護天使が吠えて魔法を詠唱はじめる。
美男美女が必死になってひとりの敵を倒そうとする図はまるで正義の味方っぽい。
あれ?なんだかまるで私が悪役ポジじゃないか!?
なんだろうすごく納得いかない!!
や、悪役もたまには美味しいのか!?
とにかく、あまり手荒なマネはしたくはないが一度男守護天使のアルファーには痛い目にあってもらうしかない。
死なない程度に攻撃しないと!私がコロネにもらった足で魔法を作動できる魔道具でトラップを発動しようとしたその瞬間。
「お願いやめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
この人絶対猫まっしぐらだからやめてぇぇぇぇ!!」
と、女守護天使に突っ込んで詠唱を止めたのは……見知らぬプレイヤーだった。
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