65話 特訓
ガシンッ!!
私の鎌とリリの鍵爪が激しくぶつかり合い、金属音がぶつかり合うような音が響く。
リリの右手の鍵爪を鎌で防いだのだ。
結局、あのあと。
防衛の件はスキル書をゲットしてから考えようという事になり、皆で大神殿のチャレンジミッションに備え、修行を開始することにした。
チャレンジミッションはもし仕様通りならゲームならではの、戦い方がある。
二人にも、ゲーム用の戦い方というのを覚えてもらわないといけないし。
今、私はリリ&コロネVS私で戦いを繰り広げているのである。
今しがたリリの右爪の攻撃を鎌で防いだが、リリにはまだ左手にも鍵爪がある。
もう一方の鍵爪でこちらに攻撃を仕掛けてくるはず、そうなる前に対策をしないとやばい。
私が右手の鍵爪を体制を崩させるように鎌に力を入れるが、リリは体勢を崩さない。
うん、どうやらリリもはじめから右手はフェイクだったらしい。
あまり力を入れてなかったようだ。
身体を大きく仰け反らすとそのまま左手の鍵爪で殴りかかってくる。
――が、私もそうやすやすと一撃をくらってやるつもりはない。
【硬質化】で空いてる方の腕だけを無敵化し、リリの鍵爪をそのまま受け止めた。
「!?」
流石に予想外だったのがリリに一瞬焦りが生まれる。
まぁ、【硬質化】を身体の一部だけに適用するなんて、高レベルじゃないと無理だからね。
私も最近やっとできるようになった技なのでリリも知らなかったのだろう。
私はリリの焦りを見逃さなかった。
ぐいっと足をリリの方に向け
『魔冥槍!!』
足から、魔法を一気に放つ。
「!?」
私の足から放たれた、漆黒の槍がリリのお腹に直撃し、物凄い勢いでリリの身体は吹っ飛んだ。
もちろんこれも、詠唱時間短縮の腕輪と、コロネにもらった足につけるブレスレットではじめてできる技だ。
リリも初見で予想していなかったらしく、そのまま成すすべもなく吹っ飛び――かけたが。
『水霊弾』
コロネが作り出した水の塊にリリが包まれ、そのまま水が衝撃を緩和した。
「んな!?」
流石にこれには私も声をあげた。
元々『水霊弾』は攻撃魔法である。あのように、味方を水で包み込んで衝撃を緩和したりする術じゃない。
コロネが本来の魔法効果を改造したのだろう。
くっそ。
リリも人型での人との戦闘経験ないはずなのに、全然攻撃にすきがないし、コロネも流石大賢者なだけあってやる事がいちいちエグイ。
リリはすぐに戦闘体制に戻ると【浮石】を駆使し、上空から一気に私に襲いかかってきた。
流石にリリ相手に鎌は相性が悪すぎる。
鎌はどちらかというと一撃必殺で殺す方に向いており、武器が二つあるリリの攻撃を避けるのにはむいていない。
私は【死神】の武器である鎌から【トラップマスター】の武器である両手ダガーに切り替える。
リリが放つ鍵爪の攻撃をダガーで私は軽く弾きながら、しばらく二人の斬撃が続いた。
私はあまりリリから離れない距離で攻撃をかわしていた、リリから離れれば今度はコロネの魔法攻撃がくるからだ。
まぁ、正直、三人ともパーティーを組んでいるので、攻撃をくらってもダメージは0だ。
リリごと巻き込んで魔法をぶちこんでも全然大丈夫なのだが。
さすがにそれは私に分が悪すぎるので、コロネにはリリに魔法があたるのは禁止にさせていただいた。
――さて、時間的にそろそろかな。
私はダガーでリリの攻撃を避けつつ、小声で短く詠唱し、
『土霊振壁!!』
魔法を展開した。
「え!?」
リリの身体が土の壁に埋まってしまう。
本来なら、大地に両手をつかないとできない技だが、これもまたコロネのブレスレットのおかげで、足が地面にさえついていればできるようになった技だ。
もちろんスキル【並行思念】のおかげもあるのだが。
二人との戦闘で必死すぎてスキル発動しまくりなので、おかげでモリモリスキルの熟練度があがってるよ!やったね!
リリが身動きできなくなったその時。
まるでその行動を予測していたかのように、唐突に背後の上空からそれは現れた。
光の槍がまっすぐに私に向かってきていたのだ。
「ちぃっ!!」
こちらがリリを捕縛して安心したタイミングを狙ってくるとは小賢しいっ。
ってか、まだコロネは大分遠くでこちらの動きを視ているだけのはずなのになんで背後から魔法がくるかな!?
考えつつももう一人の私は冷静に対処していた。
マントをそのまま【硬質化】し、コロネの魔法をその場で防ぐ。瞬間移動禁止って地味にきついなこれ!
私はそのままダッシュでコロネの方に向かった。
コロネもそれを予想していたのか、土の壁を作り出し、私の視界を塞ぐ。
――さて、リリが復帰するまでコロネがもちこたえられるか。
私は簡単に土の壁を鎌でなぎ払い、コロネに鎌を振り上げたその瞬間。
『聖光槍!!』
コロネの魔法が私に襲いかかってきた。…が、これくらい鎌で一刀両断……思った瞬間。
槍が霧散し、散り散りになってあらゆる方向から私に襲ってきたのだ。
ええんっうそん!?
これがまだ、知らない呪文だったら警戒したが、効果を知っている呪文だからこそ油断した。
流石にそうクルとはおもってはいなかったのだ。
ゲームだったらこんな魔法アレンジなんて出来る人いないし。
水魔法といい、どういうアレンジ加えたらこうなるのさ。
しかも、近くに近づいて気づいたが私の前にいたコロネは幻影っぽい。本体はもう少し離れた所にいた。
魔法を食らう直前に身体全身を【硬質化】し、コロネの魔法を防いだあと、すぐにスキルを解き、その場に着地する。
そのタイミングで
『聖降臨神盾!!』
コロネがパーティー全員防御魔法である『聖降臨神盾』の魔法を発動する。
私とリリ、そしてコロネとリュートに完全防御魔法が発動した。
「はい、きっちり二分三十秒です――これで5回連続、クールダウン時間の二分三十秒ごとに『聖盾』の魔法を発動させました」
と、私達の闘いを遠くから見守っていたリュートがストップウオッチ片手に告げるのだった。
△▲△▲△▲△▲△▲
「ううううう!!ネコに一撃も与えられなかった!」
リリが物凄く悔しそうにうめいた。
結局、コロネに戦闘中でもきっちりクールタイム時間を守れるように、三人で戦闘をしつつ訓練していたのだが……。
リリちゃんの中ではいつの間にか私に一撃をくわえる事のほうが重要になっていたらしい。
「リリ、コロネを守る事を最優先するって話絶対忘れてただろう」
私がジト目で見ると、リリがギクリとした表情になる。
リリに与えた課題はコロネが確実に『聖降臨神盾』を発動できるようにカバーする事というはずだった。
最初は律儀に守っていたが、後半はどちらかというと、私に攻撃を与えるのに必死でコロネにカバーしてもらっていた状態だ。
「わ、忘れてなかったもん……」
目をそらしつつ言うリリに
「それじゃあ今回は30点。全然コロネを守れてなかった」
「ええええー。 も、もうちょっとオマケほしい!」
「ダーメ。
忘れてたならともかく、真剣にやってあれじゃあ、全然気配りできてないぞ」
「ごめんなさい。 リリ 忘れてた!」
「素直でよろしい。じゃあ60点」
私がワシワシ頭を撫でながらいうと、リリはぷぅっと口をとんがらせ
「でもやっぱり低い……」とやや不満そうだった。
「……にしても、皆さんお強いですね。
もう一日で人間の領土のプレイヤーを全員倒したと言われても驚きませんよ……。
動きが全然見えませんでした……」
リュート王子が愕然とした表情でつぶやく。
「サスガ マスター。強い」
と、ザンダグロム。
「そうですね。人間やプレイヤーではもうお二人に敵う相手はいないでしょう」
コロネが何故か他人事のような口調で言う。
てか、お前もだろうが。この規格外賢者め。
に、しても恐ろしいのはリリちゃんである。人間型の戦闘なんてまだ一ヶ月くらいしかたってないのに、既に私よりちょっと下レベルの戦闘技術なのだ。
これ来月には余裕で私抜かれてるんじゃね?とさえ思う。
くそう。これでも私だってゲーム内で一生懸命修行したんだけどなぁ。
私の三年間があっさり抜かれるとか悔しいものがある。これが才能の差か。
い、いや、でも私だってまだまだ伸びしろはあるはずだ。リリより弱かったら大人としての威厳が!
私も修行あるのみだ!
「よーし、じゃあもう一回行ってみようか!」
私の言葉にリリはぴょんぴょん飛び跳ねて喜び、リュートとコロネは何故かげっそりとした表情になっていた。
69話までほぼ改正前と一緒です。
ですので以後ちょっと痛いテンションのあらすじがはいります。
苦手な人はスルー推奨
大丈夫な方のみお願いします↓
■あらすじ■
猫「チャレンジミッションに備えて完全防御魔法のクールタイムの訓練しようぜ!」
リリ「わー訓練訓練!猫倒す!」
猫 「やっ!!それ違う!!コロネを守る訓練だからっ!?
てかリリ強すぎっ!?」
コロネ「いやぁ。お二人とも規格外で」
リュート「何でも作れてしまう師匠も十分すぎる程規格外です」
リリ「リリ 知ってる コロネみたいのドラエ………」
猫「それ以上はいうなぁぁぁぁぁぁ!!!猫型ロボットの名前はいうなぁぁぁぁ!!」










