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62話 子供達のレベル上げ

〜子供たち視点です〜


「いいなぁ。リリちゃんは」


 金髪少年のグラッド家の長男ルーベルトがちょっとふてくされ気味に呟いた。


「う? 何が?」


 魔法少女の格好をしたリリがルーベルトに尋ねる。


 既に勇者とお姫様と魔王と生徒会長のお鍋の戦いは終り、オヤツ時間へと突入していた。

 リリはロロとサラ達と4人で仲良くお好み焼きを食べている。

 口の周りにたっぷりとソースをつけたリリが不思議そうにルーベルトに質問したのだ。


「お兄ちゃん、宮廷魔術師になりたいんだって。

 だから大賢者様と冒険できるリリちゃんが羨ましいんだよきっと」


 サラがロロちゃんにお好み焼きを切ってあげながら、答える。


「そうなの?」


「そうだよ。

 リリちゃんが一緒に旅してる大賢者様も猫様も今エルフの国では誰も知らない人がいないくらい有名人なんだ。

 その大賢者様と猫様と一緒に旅できるなんて、羨ましい。

 でもお二人と一緒に旅できてるってことはきっとリリちゃんも強いんだろうし。

 リリちゃんは本当にすごいんだね」


 ルーベルトがナイフとフォークで丁寧にお好み焼きを切りながらいえば


「うん。リリレベル800」


 と、リリが答え、


「「800!??」」


 と、ルーベルトとサラの驚きの声がハモった。


「は、八百って!?レベルが高いと言われてるプレイヤーだって200くらいだよね?」


「リリちゃん本当に凄いんだねー」


 と、ルーベルトとサラが驚きながら言えば


「なら、二人もレベル上げる?リリが倒してあげる!」


 ぐっとリリが拳を握るのだった。



△▲△




「問題、どうやって ネコとコロネに疑問をもたれずパーティー組むか」


「パーティー組まないと、ダメなの?」


 うーんと腕を考えるリリにサラが不思議そうに尋ねる。


「リリが倒した敵の経験値、サラ達もらえない

 パーティー組んでれば、リリが倒した経験値がサラやルーベルト達にもいく!」


「パーティー組むとトドメを刺さなくてももらえるの?すごいねパーティーって!」


 ルーベルトが瞳をキラキラさせながら言う。


「でも問題は、ネコしかパーティー組めない。

 ネコに頼まないと無理」


「うーん。確かにそれは問題だね。

 父さん達にレベル上げにいくとか話せば怒られそうだ」


 ルーベルトが顎に手をあてて考え込むが。


「あまり深く考えないで、パーティー組んでみたいでいいと思うよ?

 私はレベル上げしなくても組んでみたい!」


 サラが提案する。


「そんなもの?」


 リリが小首をかしげれば


「だって頭のいい大賢者様がいるんだもん!

 下手に嘘をつけばかえって疑われちゃうよ」


「そうだよな。僕達が大賢者様を欺くとか無理だよね」


「じゃぁ決定!パーティー組むの頼んでこよう!」


 言って、4人はバタバタと猫達の居る部屋へ向かうのだった。



 △▲△


「ネコ!リリ達パーティー組みたい!」


 何故か死んだように机に突っ伏してるコロネとニヤニヤ顔のグラッドの前で呑気に剣を磨いている猫にリリが言えば


「うん?別にいいけど。パーティーなんて組んでどうするんだ?」


「リリちゃんに話を聞いたんです!

 一度パーティーを組んでみたいなって!」


 サラが元気いっぱいに言う。


「あー。まぁ何でも試したい年頃だよな」


 言って、猫が視線をチラリとコロネにやるが、コロネは死んだように机に突っ伏しているので話を聞いてはいない様子。

 リリ達は内心よかったと胸をなでおろすが、もちろん顔にはださないように気を付けた。


「ま、いっか。じゃあメッセージウィンドウがでたら「はい」を押すんだぞ。いいな?」


 猫の言葉に4人はとても嬉しそうに頷くのだった。



 △▲△


「よし!リリ達レベル上げする!」


 絵本を読むと、猫達に言い残し、こっそり部屋からでてきた4人はエルディアの森へとくり出していた。

 もちろんロロ、サラ、ルーベルトのレベルをあげるためだ。


 400になってしまうと身体が耐えられないと聞いてはいるが、ここのモンスターは最高80くらいになったと猫が言っていた。

 400まで上がるということはないだろう。


 と、リリは頷く。


「わーすごい。森に出たのはじめて!」

 

 サラちゃんがワクワク顔で辺を見回し、ロロちゃんもルーベルトに背負われキョロキョロと辺を見回している。


「リリちゃんからはぐれちゃだめだよ二人とも。この森は大人でも騎士団と一緒じゃないと危険って言われているんだから」


 ルーベルトが注意し、リリも頷いた。

 最初は龍になって3人をのせて倒そうかと思ったが、それではすぐに猫達にバレてしまう。

 ばれないようにこっそりとやるしかないのだ。


「よーし皆がんばろー!」


 ルーベルトが言えば


「おー!!」

 

 と、三人は手を上げる。


 その瞬間


「きしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 物凄い咆哮が、森の奥から聞こえてくるのだった。



 △▲△



「くそっ!!自分の攻撃が効かないとは!?

 まさかレベル300以上の敵か!??」


 リュートの部下でかつてレベルを猫に200まで上げてもらった騎士が悔しそうに叫ぶ。

 酷く魔素濃度の濃い場所があるとの報告をうけて、調査に向かってみれば、この有様だ。

 巨大なスライムのような化け物が突如として現れたのである。


「隊長!?」


「ここは退け!!砦には猫様がたててくれた壁がある!!

 このくらいの魔物の攻撃などびくともしないはずだ!!

 クランベール様なら倒せるかもしれん!!」


「はっ!!」


 兵士達が退こうとした瞬間。


 ぐわぁっ!!


 盛大な音をたてて大地が盛り上がり、兵士たちの行く手を阻む。


「なんだっ!?」


「土魔法が使えるとでもいうのか!?」


「違う!!この大地も身体の一部だっ!!速く退け!!!」


 隊長と呼ばれた兵士が慌てて叫ぶが、気づいた時にはもう遅い。

 予想の通り大地はモンスターが擬態した大地なのだ。

 逃げ切れるわけがない。


 兵士たちの身体がスライムのその中に飲み込まれようとした瞬間。


「キシャァァァァァァ!!」


 スライムの断末魔が響いた。

 

「な、なんだ!?」


 ドロドロと溶けた物体に飲み込まれながら兵士達がスライムの方を見れば


「愛と正義の使徒✩魔法少女参上✩」


 と、ヒラヒラの可愛い格好をした少女が3人と、木の影に隠れている少年が一人いるのだった。



 △▲△


「さて、何か言い訳はあるか?」


 襲われていた兵士達を助けるためにスライムを倒したあと兵士たちの前で決めポーズを決め、さらばだ!ワハハと4人で逃げれば、何故か逃げた先には猫が怖い顔で立っていた。


「ネ、ネコ!?」


 リリが驚きの声をあげる。

 兵士たちはまだリリ達の後ろでポカンとしているはずで、リリ達の事を報告するにはまだはやいはず。

 モンスターを倒してからバレるまでが早すぎる気がする。


「な、何でここわかった?」


 リリが首を傾げれば猫が青筋を立てながら


「そこは問題じゃないだろう?

 なんで自分に嘘をついてこんなことをしているのか聞いているんだ」


 猫がいつになく真剣に怒っているのでリリ達は押し黙る。

 まずかったかな?という表情のルーベルトとサラと、よくわかっていないロロをリリは見つめ


「リリが誘った!

 みんなのレベル上げてあげたかった!


 ごめんなさい」


 と、リリは答える。


「それはわかる。怒っているのはそこじゃない。

 なんで私にそれを言わなかった?嘘をついた理由を聞いているんだ」


 

 怒る猫の声が怖くて、リリは今にも泣きそうになる。

 猫は何だかんだでリリに甘かった。

 だから今回も事がすんでしまえばそれほど怒らないだろうと勝手に思い込んでいたのだ。

 初めて出来た友達に浮かれて、調子にのってしまった事にリリは後悔する。

 うつむいて泣きべそになってしまったリリを猫は無言で見下ろしていた。


 流れる気まずい沈黙。


「ごめんなさい!リリちゃん悪くないの!

 本当の事を言ったらパパに止められるから嘘をつこうっていったのはサラなの!

 本当にごめんなさい!」


 泣きそうになってしまったリリを庇うようにサラが前にでて、


「僕たちがよくわかってないリリちゃんをそそのかしたんです!

 怒るなら僕たちを怒ってください!

 本当にすみませんでした」


 と、ルーベルトも頭を下げた。


 二人とも猫の性格をよくわかっていないせか、ガクガクと震えている。

 二人にもプレイヤーは残忍だという噂は広まっていた。

 もしかしたら何かされるかもしれないとは思ったのだろう。

 それでも、友達を守ろうと勇気を振り絞って前にでてきた二人に猫はため息をついた。


 ロロはよく意味がわかっていないのか


「ごーめんなさい」


 と、二人の真似をして頭を下げている。


 その様子に、猫は大きなため息をついて、


「いい友達をもったなリリ」


 と、頭を撫でる。


「ネコ……」


「いいか、怒ってるのは内緒にしたことだ。

 それもこんな命の危険がある狩りに子供3人連れ出すとか。

 言ってくれれば自分もついていったのに。


 そりゃ、多少の悪戯なら大目にみたけど、今回は許せる範囲じゃない。

 わかるよなリリ?」


 猫の問いにリリはぶんぶんっと頭を縦に振った。

 猫はいつも優しくて。リリの事をちゃんと考えていてくれてるのは知っていた。

 だから甘えすぎてしまっていた事を自覚する。

 勝手に何でも許してくれると思い込んでいた。


「コロネにだって言われただろう。

 何かする前には相談しろって。

 リリは普通の子供と違うんだ。

 初めて友達ができて嬉しくて何かしてあげたかったっていうリリの気持ちはわかる。

 けどな、龍のリリの基準と、人間やエルフの基準は違うんだ。

 下手をすれば友達が危ない目にあっていたかもしれない。

 こういう事はちゃんと大人に相談してからやる事。

 いいな?」


 猫の言葉にリリは大粒の涙を浮かべながら頷くのだった。


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