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58話 戦いの終わり

「ネコっ!?」


 マーニャを倒したせいだろうか、気がつくと私は現実世界へと戻っていた。

 見渡せば、いまだ状況がつかめていない、国王達の一団と、かなり重症なコロネを抱えたリリが私の姿を見て叫ぶ。


 ああ、戻れた!?

 ってか、コロネは!?


 メガネの神官服のおじいちゃんがコロネに回復魔法をかけてはいるが、あまり高位の回復魔法でないのか、慰めにもなっていない。

 コロネの顔色が物凄く悪い事が見て取れる。

 MPの使いすぎなうえに、この傷具合だ。もう意識もないのだろう。

 止血はしてあるようだが、血がですぎていて、回復が間に合わないのかもしれない。


 ああ、本当にコロネはっ!!無理をしすぎなんだよいつも!!


「ネコっ!!大変!!コロネがっ!!コロネがっ!!」


 自分もボロボロなのに、リリちゃんが必死にコロネの名を呼ぶ。


「ああ、わかってる!!」


 言って、私は回復ポーションを二つとりだした。

 本当に今日は運が悪かった。

 二人には回復ポーションを渡してはいたはずなのだが、コロネは戦闘中で自作のマジックボックスのポーチから取り出すことができず、リリはいつもと違う祭行きの格好だったため、コロネ作の魔道具のマジックボックスをグラッドさんの家に忘れてきてしまっていた。

 もしかしたらコロネに至っては、ジルに魔法陣があることを思い込ませるために、わざと回復をしなかったのかもしれない。

 コロネのマジックボックスからは他人は取り出す事ができなかったため、リリにはコロネを回復させる手段がなかったのだろう。

 あとでコロネに他人も取り出せるようにマジックボックスを改良させたほうがいいのかもしれない。

 一つをリリに渡し、もう一つをコロネの口に流し込もうとするが、よく考えたら気を失っている相手に水を無理に飲ませると、肺にいってしまうから絶対ダメとどこかで見たことがある。

 ゲームの世界なら躊躇なく口の中に突っ込むが、この世界はリアルとゲームの混在した世界だから、もしかしたら肺にいってしまうかもしれない。


「神官さん、ポーションは寝ている時に飲ませても平気なのか?」


「いえ、飲み込まないと意味がありません。

 無理に飲ませようとすれば肺にいってしまいます」


 答えるメガネのおじいちゃん。

 あーーーそういう変な所だけはリアルだな!?

 ゲームと同じでいいじゃないか!!


 私が一生懸命名を呼ぶが、コロネは目を覚まさない。


 あああーーーもう!?

 飲まなきゃ死ぬのに!??

 回復手段がポーションしかないってマジ不便だな!?

 この件が終わったらポーション以外の回復方法をマジ見つけないとやばい。

 復活の呪文書だってコロネにあげた分しかないのだ。このおじいちゃんじゃ生き返らせられない。


「コロネっ!!起きろっ!!!目をさませっ!!」


 あんな幻を見せられたせいだろうか。

 コロネの顔が、水から引き上げられた時の兄の顔と重なって今にも泣きそうになる。

 あの時は何度呼んでも父も、母も兄も誰も目を開けてくれなかった。


 もし――コロネも目を開けてくれなかったら?


 ぞっとした。

 最悪目を覚まさなかったら口に突っ込むべきだろうか?

 ああ、そうだ。まずは傷口にふりかけてみるか!?

 傷口から体内吸収した扱いになるかも!?

 と、私がポーションをとったその瞬間。


「ね……こ……さ…ま」


 と、コロネが私の名を呼び手をあげた。

 ああ、よかった気がついた。


「よかった……無事で……本当に……」


 言ってコロネが私の頬に手を添える。

 ああああ!?もうっ!!自分が瀕死のくせになんで人の心配してるかな!?

 

「って、人の心配してる場合じゃないだろう!!

 いまから薬を飲ませるからっ!!絶対気を失うなよ!!」


 私が叫び、口に少しずつ含ませれば、コロネは苦しそうにポーションを飲み込む。


 リリもハラハラとその光景を見つめていた。


 何度か繰り返して飲ませれば、コロネの身体が淡く白く光だし――ぴくりと震える。

 傷と、ダンジョン産の装備がみるみる回復していった。


「おおお!?まさかあの傷を!?しかも装備まで!?」


「流石プレイヤーのポーションは我々とは比べ物にならない……」


 などと国王の一団からざわめきが起こるけどれど、正直どうでもよかった。


「よかった!!治ってよかった!!」


 私が感極まって、コロネに抱きつくのだった。


 △▲△



 気が付けば――見知らぬ部屋だった。

 やたら豪華で煌びやかな内装の広い部屋の天蓋つきベッドの上で寝ていたのだ。


 ……コロネが治ったあとの記憶が自分にまったくない。

 精神世界に行ったせいと、コロネとリリが治ったのに安心して気を失ったのかもしれない。

 隣をチラッと見てみれば、リリちゃんがスヤスヤと寝息を立てて寝ている。

 リリちゃんもいろいろありすぎて疲れたのかも。

 私はリリを起こさないようになんとか起きると、辺を見回した。

 

 いかにも貴族!という感じのただっ広い、豪華な部屋なのであのまま、王宮の一室に運ばれたらしい。

 

 ……にしてもである。


 流されるまま、魔族と戦ったが、割りと、結構、かなり、やばかった気がする。

 コロネの機転で出れたけど、次も同じ事をされたら出れるかどうかはわからない。

 やっぱり面倒だなぁ精神世界。

 あれはどうにかならないものだろうか?


 私がうんうん唸っていると、コンコンと遠慮がちにノックがされ、そーっと扉が開かれる。

 私が見やれば、コロネと神官のおじいちゃんが立っているのだった。


「ああ、よかった目を覚まされたようで」


 コロネが私の顔をみるなりホッとしたような顔になる。


「どうやら大丈夫なようですね」

 

 おじいちゃんも、安心したかの様子で微笑む。


「あー、ごめん。精神世界に行ったせいか、気を失ったみたいだ」


 私がぽりぽり頭をかけば神官おじいちゃんが


「それはそうでしょうな。

 精神世界に連れ込まれれば、精神の衰弱は計り知れませんから。

 ご無事でなにより。

 それでは、私はリュート王子の方を見てきます。

 お礼をさせていただきたいところですが、まだ顔色もよろしくないご様子。

 後日改めて、礼を言わせてください。今日はもう少し安静になさってください」


 言って微笑み、一礼して部屋を後にしていく。


「リュートもやっぱりまだ目が覚めてないのか?」


 私が聞けばコロネが頷いて、


「エルフの王族の血を引いていますから、大事になることはないとは思いますが、精神の衰弱が激しく、まだ目を覚ましていません。

 あと二、三日はかかるかもしれません」


 言って心配そうに目を細める。


「それにしても、コロネ凄いな。よくあの魔族を倒せたじゃないか」


 私が言えば、


「以前、猫様と魔族のやり取りを見ていたからこそ出来たことですよ。

 あれを見ていなければ思いつきもしませんでした。

 凄いのは猫様だと思います」


 と、コロネは微笑むのだった。




 

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