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50話 大人買い

「それじゃあ行ってくる!」


 リリがお祭りの格好なのだろうか?黒いローブを着て可愛い帽子を被り嬉しそうに微笑んだ。

 その後ろにはグラッドさんの息子のルーベルト君に娘のサラちゃん、そして一番ちっちゃいロロちゃんが同じような格好をしている。


「じゃあ、リリの事頼むなルーベルト君にサラちゃんにロロちゃん」


 私が言えば、


「はい。任せてください!ちゃんとお祭り会場を案内しますから!」

 

 と、小学生高学年くらいだろうか、わりとしっかりした口調の金髪好青年ルーベルト君が力強く頷き


「一緒に行こうねリリちゃん」


 と、ストレート髪の金髪少女サラちゃんがニコニコでリリと手をつないでいる。

 同じくらいの年齢らしく二人ともそれなりに気があうらしい。


「では頼みましたよグラッド。

 リリ様をお願いします」


 と、コロネがグラッドさんに念を押すようにいえば


「任せとけよ。

 あ、言っとくがお前たち二人はついてくるなよ?

 目立ちすぎて遊べなくなる」


 と、グラッドさんが笑う。


 あー。確かにコロネは大賢者様だし、私は……身長が飛び抜けて高いせいで嫌に悪目立ちするんだよね。

 ここの住人って基本身長が170cm前後の人が多いらしく、191cmある私と同じくらいの人はそうそういない。

 どうもこの前の魔物の襲撃を救ったプレイヤーはやたら高身長という噂が流れてしまっているようで、目立つこと間違いなしだとか。

 前回、リリとケーキ屋行った時もじろじろ見られたし。

 人混みの中ではさらに目立つだろう。

 身長高いほうがリーチが長くて有利じゃね!?と安直に身長を決めてしまったがもう少し低くすればよかったと思わないでもない。


 そして「いってくるねー!」と元気に出ていくリリちゃんを見つめ……私は思う。

 うん。心配だ……と。


 ▲△▲


「……尾行ですか?」


 私の提案にコロネが思いっきり呆れた表情になる。


「だ、だって心配だろ!?コロネは心配じゃないのか!?

 いきなり龍になちゃったりとか!?変な人に襲われたりとか!?」


「リリ様はしっかりしていますから大丈夫かと。

 後半に関してはリリ様に返り討ちにあう未来しか見えません」


「じゃ、じゃぁ迷子とか!?」


「気配が読めるのでグラッド達の場所などすぐわかるでしょう。

 迷子の心配もありません」


 くっ!?コロネのやつ(ことごと)く私の心配事を潰していってくれやがって!?


「じゃあ、第一王子とか第二王子とかの側近に狙われるとか!?」


「リュート経由で話しかけないようにと釘をさしましたし、リリ様も魔道具で姿を変えてますから大丈夫でしょう」


 ううう、言われてみれば大丈夫な気がした。

 

「あー、うん。そうだよな。大丈夫だよな」


 ぽりぽり私頭をかけば


「猫様は意外と過保護なのですね」


 と、クスリとコロネが笑う。


「だってさー。普通子供が目の届かない所にいるって不安じゃないか?」


「そうでしょうか?こちらの世界では4歳にもなれば一人で外で遊んでる子供など珍しくもありませんから」


「ええええええ。ありえん。

 誘拐とかされたらどうすんだ?」


「エルフは長寿故、知り合いが多いですから……。

 お互いがお互いを監視してる部分もありますので平民では誘拐などは滅多にありません。

 可能性が0というわけではありませんが。

 子供同士で遊ばせておくようですよ。

 まぁ、私も子供がいるわけではないので詳しくはわかりませんが」


 と、コロネが肩をすくめる。


 うーん。確かに日本の常識で語ったらいけないんだろうけど……。



 ▲△▲


「……それで、結局来てしまうわけですか」


 祭り会場近くの、時計台のてっぺんで。

 スキルの身体強化で視力を強化して、リリの姿を探す私にコロネがため息をついた。


 因みに私は、性転換の腕輪で女に戻り、身長で目立たないようにし、コロネも髪の色を変えている。

 というのも、コロネの姿を変える便利魔道具は見える姿を変えているだけで、実際の姿は変わっていないらしい。

 流石に身長までは誤魔化せないらしいのだ。

 なので、性転換の腕輪で女に戻り、魔道具でエルフ耳にしてこうして街に繰り出したわけである。


「ちょっと見るだけだから!ちょっとだけ!」


「はい、わかりました」


 呆れるコロネを放っておいて、リリちゃんの姿を探してみれば、楽しそうにグラッドさんたちと遊んでるリリを発見する。

 やはり子供同士気があうようで、わりと元気いっぱいだった。

 人見知りしてたらどうしよかと心配したが、いらぬ心配だったらしい。


「リリ様も大丈夫そうですし、満足できましたか?

 あまり近づけばリリ様に気づかれてしまいますし。ここで見るくらいが限界かと」


「うん。大丈夫そうだね。

 にしてもコロネ」


「はい?」


「私はあれを見たい!」


 言って私は武器や防具の屋台の並ぶ方向を指さす。


「構いませんが……。エルフの作った武器など、猫様のお眼鏡にかなうものがあると思えませんが」


「もー、わかってないなコロネは。

 こういういかにもバッタモンや紛い物を売ってますって感じの店心ときめかない!?」


 私が目を輝かせていえば


「申し訳ありません。ときめきの要素がわかりません」


 と、コロネが真顔で返してくる。


「くっ!?夢もロマンもないなコロネは!

 紛い物の中にあるかもしれない宝物を発見するのが楽しいんじゃないか!」


「なるほど。鑑定のスキルを使えば掘り出し物があるかもしれないと言うことですね!

 流石猫様!」


 ……うん。しきりにうんうんと感心しているコロネだが、言いたかった事とちょっと違う。

 役にたちそうだけど実はガラクタというギャップに萌えるのだ。

 けれどいちいち突っ込むのも野暮なので、そのまま無言で肯定するのだった。


 ▲△▲



「コロネ!!みてみて!すごいこれグラ超カッコイイ!!」


 私が露天にある剣を持ち上げた。

 真っ黒な刀身が歪にくねくねまがり、実際に使うとなるとおもいっきり使い心地は悪そうだが見かけは超カッコイイ。

 

「おー嬢ちゃん、お目が高いね!それは有名な鍛冶屋ブラッドがつくったもんさ!

 剣の中に魔力も仕込んである優れものだよ」


「へー、この剣作った人有名なんだ」


「ああ、見てくればかりにこだわって使い勝手がわるい剣ばかりつくっていると有名なんだがな」


 と、露天のおっちゃんが笑いながら言ってくる。


 あー、いるいるそういう偏屈な人。

 やべぇ、その変な趣味の人と私が完璧に一致してるんですけど。

 中二病心をそそる術をよく理解していらっしゃる。


「てか、なんだかつい最近似たような名前を聞いたことがある気がするんだけど」


 私がチラリとコロネを見れば


「ええ、あの男の弟です」


 と、コロネがため息をついた。


 ああ、グラッドさんの兄弟か。職人気質なのは血筋らしい。あとで是非紹介してもらおう。


 などと考えつつ他にもブラッド作の剣をいろいろ店員さんに見せられて、結局、全部買い込むのだった。

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