49話 お祭り
「まぁ、その話は一度置いておきましょう……」
コロネが疲れようにため息をつく。何故か一気に老け込んだ気もしなくもない。
そんなに嫌なのかおしゃぶり。
コロネは机から何やらとりだすと
「猫様、これをお受け取りください」
と、私に渡した。
「これは……?」
腕輪のような物を二つ渡され、私はコロネに尋ねた。
青く光るブレスレットは不思議な魔力を帯びている。
「約束していた魔道具です。
このように足首につけてください。ブーツで隠れてしまっても問題ありません」
言ってコロネが自分の両足首にブレスレットをつけてみせる。
「私は並行思念のスキルを取得していませんから…これが限界ですが」
言ってコロネが一歩足を踏み出すとコロネの足元にレンガが出現し、コロネはひょんとそこに足を乗せた。
足を一歩踏み出すたび、足元にレンガが出現し、見えない階段があるかのように、コロネがひょいひょい空中を歩き始める。
出現したレンガは、3秒もしないうちに消えてしまうため、まるで空中を歩いているかのようにも見えなくもない。
「ちょ、これすごい!?」
物凄く中二心をくすぐられる光景なんですけど!?
私が感嘆の声をあげると、空中を歩きながらコロネが
「本当は、魔法が使えるようにしたかったのですが……
魔道具で発音したものでは魔法は発動しませんでした。
やはり詠唱は本格的に研究しないと駄目ですね。
ああ、ですが自分で口で詠唱する分には魔法は使えます。
それと、詠唱の必要ない【浮石】の魔法も発動するように調整しました。
この魔法は空中に3秒間ブロックを出現させる魔法です。
以前猫様に頂いた呪文書で覚えた魔法ですね。
手で出現させて、その上に乗るのでは手間がかかってしまいますので……足を杖の代わりにしてみました」
言って、ひょいっと、空中からジャンプして地面に着地する。
「いいなー いいなー それカッコイイ! リリもほしい!」
「ああ、でしたら、私の分をお渡ししましょう。
ですが、呪文書がまだ残っているかはわかりませんが……」
言ってチラリとコロネが私を見る。
「ああ、リリの分も残ってる。じゃあリリにも呪文書渡そう」
「うんうん!リリも空飛びたい!」
ホクホク顔でリリが呪文書とブレスレットを受け取る。
「後で使い心地などを教えていただけると幸いです。
私は義手で使い方に慣れていましたがお二人は
少し練習も必要になるかもしれませんね」
と、言ってるそばからリリはあっさり空中をすたすた歩きはじめた。
うん、この子器用だわ。まじで。
「流石リリ様。魔力を足に貯めるというのはなかなか難易度が高いはずなのですが……」
と、コロネも呆れた様子でリリを眺めている。
私もマネしてみるが、なかなかうまくいかず10分ほど試行錯誤することになったが、一度コツをつかめば楽なもので、私も空中を歩けるまでに成長した。
「お二人とも、優秀ですね。
普通の者ならこれを会得するだけで1年はかかります……」
言うコロネの表情は完璧に呆れ顔だった。
△▲△
「パパー!はやくーお祭りに行こうよ!」
私達がブレスレッドの訓練をしていると、唐突にドアがバンっと開き……そこで入ってきた少女が固まった。
長い金髪の髪でツインテールの可愛い女の子だ。
幼稚園くらい?の年齢だろうか。
どうやら父親のグラッドさんしか居ないと思って入ってきたらしい。
見知らぬ私達の存在にそのまま固まってしまっている。
「ああ、ロロ。勝手に入ってきたら、ダメだろ。
怖いこわーい根性悪おじちゃんに怒られるぞ」
と、グラッドがコロネを指さしながら女の子の頭を撫でる。
「グラッド……一度貴方とはゆっくり話し合わないといけないようですね?」
その言葉にコロネがズゴゴゴゴゴと威圧を放ち
「ちょ!?お前子供の前で大人げない!?」
グラッドが抗議する。
「怖い根性悪おじちゃんですから、大人げなどいらないと思います」
と左手に魔力をともすコロネ。
「わーお前マジそれシャレにならないからやめろー!!」
結局、何故かいつもの漫才がはじまるのだった。
▲△▲
「お祭り?」
コロネとグラッドさんの何時もの漫才が終わったところでグラッドさんの膝にちょこんと可愛く座ったロロちゃんを見ながら私が尋ねた。
「ああ、今日は神前祭だからな。
神殿の周辺で出店が出たりしてるんだ」
と、グラッドさんが言えば、リリの目がキラキラ輝く。
「お店?食べ物もある?」
リリが目をキラキラさせて言えば
「あるのー!いっぱいいっぱい楽しいお店があるのー!
金魚すくいでしょ!あとあとしゃてきやさん!楽しいの!
これからおにーちゃんとおねーちゃんとパパとでいくんだよ!」
何故かロロちゃんが答えエッヘンと胸を張る。
「リリも!リリも! お祭り行ってみたい!」
「あー、じゃあ行ってみるか」
私が言えば、グラッドさんが
「ん?じゃあ一緒に行くか?丁度真ん中の子が嬢ちゃんと同じくらいの年齢だから、子供同士のほうが楽しいだろ」
と、ニカっと笑う。
「ああ、言われてみればそうかもしれない。
リリに同年代の友達とかっていないしな……」
と、リリを見やれば
「友達……」
と、ほぅっと嬉しそうに顔を赤くして目をきっらきらに輝かせている。
……うん。欲しかったんだね友達。気づいてやれなくて申し訳ない。
ここから改正前にない話になるのであとがきでのあらすじ説明は終了します。










