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48話 フルコンプ

「……ゃぶりを、咥えさせられそうになりました……」


 床に手をついてうなだれたまま言うコロネの一言に、その場が一瞬固まる。

 結局、事情を話せと締め上げた所、観念したのか話はじめたのだが、開口一番これである。



 ………


 …………



 ……………



「……ん?何を?」


「お、おしゃぶりです」


 と、真顔で告げる。


「………へ?」


「ですから、おしゃぶりをです!!

 し、信じられますか!?

 プレイヤーに捕まって、閉じ込められたと思ったら

 赤んぼうの格好をさせられておしゃぶりをさせられそうになったのです!?」


 と、訴えた。



 ………


 …………



 ……………え、そんな事?


 い、いや、確かに嫌だけどさ。

 拷問とかよりはマシじゃないか?

 と、考える私をよそに


「そいつは……恐ろしいな……」

 

 顔を真っ青にしてグラッドさんが呻く。


「ええ、

 死ぬ気で逃げました。

 あのような屈辱は耐えられませんっ!!」


 ぐっとコロネが拳を握り訴える。


「え、えっとー

 コロネってそういうことは生きるためには仕方ありませんと、こなしちゃうタイプかと思ってたが」


 私の言葉にコロネが真っ青になりながら首をぶんぶん振り


「猫様、無理です。いくらなんでもそれは無理です。

 猫様に頼まれても無理です。

 とにかく無理です」


 ひたすら無理を連呼して全力で否定する。


「う、うん。コロネが死ぬほど嫌っていうのはよくわかった……。

 にしても、何でプレイヤーに捕まったんだ?」


 いつもなら理路整然と説明するコロネが、嫌だったことから言うのはよほどトラウマだったのだろう。


「……わかりません。

 変装をして街を歩いていたのですがいきなり後ろから

『エルフみっけ!これで私の逆ハーレム全種族コンプ!』という声とともに、後頭部を殴られました。

 気が付けば、変な首輪をさせられていて、赤んぼうの格好をさせられていた次第でして……」


「うーん、それ確実にプレイヤーだな。コンプとか逆ハーレムとか。

 もろゲーム用語だし。

 でも気配でわからなかったのか?」


「あの指輪で生き返った後、エルフの里に戻る途中の事でして……

 デスペナ(死亡した時のペナルティ)でレベルが下がっていたために、探知できませんでした」


「え、あの指輪そんな長時間デスペナ食らうのか?

 ゲームだと一時間くらいだと思ったけど」


「はい。1年間レベルが14のままでした。

 生き返った代償にレベルを捧げたと思い込んでいましたから、レベルが戻った時は驚きましたが」


 ああ、そういえば当時のコロネは指輪の効果を知らなかったのだから、生き返った理由すらわからなかったのか。


「よくレベル14で逃げ切れたな……」


「プレイヤーが不在だったので助かりました。

こちらの世界の人間のレベルは5〜10ですから。

 どうやら首輪に思考を操る効果があったらしく、まさか抵抗されるとは思っていなかったのも大きいでしょう」


「そんな首輪なんてあるのか?魔道具?」


「いえ、プレイヤーのアイテムです。 

 以前見せていただいたゲームの手引書にも記載されていましたよ。

 NPCを連れて歩けるイベントアイテムの【支配の首輪】です」


 ――ああ、あった。あった。そんなネタアイテム。

 NPCを連れてモンスターと戦わせる事もできるネタアイテムなのだが、操れるNPCがクエストを持っていない&商品を取り扱っていない&イベントに関係しないNPCという縛りがあった。

 そのため、操れるNPCが極端に少なかったため、すぐ倉庫行きになったのだが。

 流行したのももらった直後だけで、すぐみんな使わなくなったアイテムだ。

 コロネもイベントNPCだったため、【支配の首輪】は効果がなかったのだろう。

 ってか、そうか。あれそういう使い方もあるのか。

 私も一個まだ持ってるわ。


「逃げ切れてよかったな。」


「……はい。あのような屈辱は耐えられません」


「う、うん……。未遂ですんでよかったよな……」


 深刻そうに言うコロネになんと言葉をかけていいかわからず、とりあえず慰めの言葉をかけておく。

 ごめん、おもいっきり大したことなくね?と思うのはきっと私がアニメとかで変な趣味に耐性がありすぎるからなのだろうか。

 いや、その前に拷問の映像見てるせいか、そっちと比べてしまうからなのだろう。


「……に、しても兄ちゃんの世界は、変な趣味の奴がおおいな。

 女に変な格好させたり……前エルフの領土で暴れた神威とかいうプレイヤーもかなり酷かったって話だぞ。

 エルフなのに何故か猫耳をつけさせられたり、白い変な衣装着せられたり……。

 なんで、そんなに服装にこだわるんだ?」


 と、項垂れるコロネの横でグラッドが顎を撫でながら言う。


「はっ!?まさか猫様の世界では大の大人に赤ん坊の格好をさせて楽しむというのは普通なのですか!?」


 何故かコロネまで顔を真っ青にしながら追随した。


「い、いやいやいやいや!??

 ないっ!!それは絶対ない!!

 コロネだって聞いてただろう!?女神が変な奴ばかり召喚してるって!!

 私だって、中年男に赤ちゃんの格好させて喜ぶ趣味だなんてはじめて聞いたぞ!!

 私の世界でだって、特別変人扱いだからっ!!」


 これは明らかな風評被害だ!!くそうあの駄目女神め。

 こっちの世界では日本の評価だだ下がりじゃないか。

 なぜこうも問題あるプレイヤーばかり集められたのかこっちの方が聞きたい。


「ああ、よかった……。

 猫様にそのような趣味があったらどうしようかと……」


「ないわっ!!」


 コロネの言葉に全力で否定する。

 私はノーマルだ!そんな変な趣味はない!


 くぅ。これはさっさと人間領土なんとかしないと!?

 プレイヤーが変人ばかりだと思われるじゃないか!!


 でもまぁ、何というか、街の人々のプレイヤーへの反応を見ると今更もう手遅れかもしれない。

 私はがっくりと項を垂れるのだった。


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