37話 野に咲く花
『爆炎乱舞!!』
コロネの一言とともに、炎が爆ぜる。
名もなきモンスターが、一瞬で灰塵と化した。
その後ろでは
ザシュ
と血飛沫をあげ、モンスターの死体が宙を舞う。
リリの鍵爪で切り裂かれたのだ。
結局、次の日。私達はカルネル山にリリとコロネの武器慣らしにモンスター退治にきていた。
本当はダンジョンでやりたかったのだが、コロネの「駄目です」の一言であっさり却下された。
うん、まぁあそこ異界の女神が干渉できるらしいから入らないほうがいいのはわかってるんだけどさ。
やっぱりレアアイテムのロマンというかなんというか……そういうものがあるじゃん?
私はというと、二人の狩りをぼけーっと視ているだけだった。
まぁ、こっそりと【身体強化】のスキルの熟練度あげたり、手から足へとスムーズに動かせる訓練したりはしてるけど、基本視てるだけ。
私は適正レベルの装備のせいか、すぐに使いこなせたんだよね。
二人は『進化の腕輪』で無理やり適正より上の装備をしたせいで使いこなせていないのかもしれない。
二人ともコツをつかんだらしく、大分威力をセーブできるようになっているようだ。
最大威力をだすのは楽らしいのだが、威力を抑えるというのが難しいらしい。
すでにリリとコロネが暴れまくったせいでカルネル山のモンスターのレベルは100くらいまで下がっている。
動物愛護団体があったら苦情くるレベルの虐殺だよ。マジで。
他のエルフのレベル上げもしてあげようか迷ったが、ホイホイレベルを上げてくれると勘違いされても困るので今回はやめておいた。
というか、魔王のレベル上げすぎると死ぬというのが怖くてレベル上げられないっていうのが一番でかいけれど。
リュートとか一歩間違えばやばかったよ。うん。400で耐えられなくなるっていうのが確実に全員400とは限らない。
個人差があるかもしれないのだ。もしかしたら200当たりで耐えられなくて死んじゃうとかもありえる。
リュートもあれ以上は上げない方がいいだろう。
「リリーコロネーそろそろ休憩したらどうだー?」
私が二人に叫ぶ。
今はPTは組んでいない。敵レベルが低すぎて、経験値も微々たるものだし。
「ネコーだいぶ使えるようになったー!」
ぴょんぴょんと岩肌を飛びながらリリが私に手をふりながらやってくる。
コロネも手を休め、こちらに向かっているようだ。
私がカンナちゃん作のサンドイッチとお菓子を広げると、リリが身を乗り出した。
「ね、ね 食べていい?」
クマさん形のシュークリームをキラキラした目で見つめながらリリが言う。
「コロネがここに来たらな。いま飲み物用意するから……」
私が言い終わるより先に、リリはぴょんぴょんと岩肌を飛び、コロネを持ち上げると、担いだたままダッシュで戻ってくる。
……うん。そんなにはやく食べたかったのかリリちゃん……。
△▲△
「美味しいねー」
カンナちゃん作の料理をもぐもぐ食べながら幸せそうにリリが呟く。
「この料理も猫様が作られたのですか?」
コーヒーを片手に聞くコロネに
「うん?ああ、これはゲームをよく一緒にやっていたギルドの友達のカンナちゃんが作ったんだ。
昨日の料理も……」
言いかけた私を遮って、なぜかガバぁっとコロネが立ち上がり
「ああ、カンナ様ですね!そのお姿は見目麗しく、可憐にて清純それは野に咲く花と例えてもおかしくないプレイヤーの鏡ともいえる……」
と、手を大仰に掲げ……停止した。
「コ、コロネ……?」
いきなりカンナちゃんを褒め称えだしたコロネに私とリリがドン引きするが、コロネはポーズをそのままに
「す、すみません……身体が勝手に反応しました……。
私はどこか…おかしいのでしょうか?」
ポーズをとった本人が一番、引きつった顔で尋ねるのだった。
△▲△
「どういう事でしょうか……
カンナ様の名を聞いた途端、猫様の時のような妙な高揚感に包まれました……
あれですか、私は別に猫様ではなくても、誰でもいいような節操のないエルフだったのでしょうか……」
あれからコロネの家に戻るなりコロネは今にも死にそうな顔でソファに横たわり自問自答している。
なぜかは知らないが彼なりにショックだったらしい。
「うーん。鑑定しても状態異常は見られないし……。
まさかプレイヤー全員にそういう状態になるとかじゃないよな?」
「ありえませんっ!私の身も心も猫様に捧げておりますっ!!」
と、嬉しくない反論をしてくる。
いや、身も心もいらんがな。
にしても、やっぱり変だよね。変態というだけで片付けていい問題じゃなくなってきた気がする。
真面目の時とテンション高いときとあまりにもキャラが違いすぎる。
「他のプレイヤーに会ったときは大丈夫だったのか?」
「はい。妙な高揚感はありませんでした」
「じゃあ、私とカンナちゃんだけにって事か……」
つまり、原因はコロネがNPC時代に私とカンナちゃんが何か関わっていたということだよね?
私は考え込むが、これといった理由が………あった。
はい。ありました。
お も い だ し た。
あああああー!!そうかっあれが原因かっ!!
「わ、悪い……コロネ……」
「はい?」
「コロネが変態なのって、自分が原因だったようだ……」
そう言って私が引きつった笑を浮かべれば、コロネとリリが顔を見合わせるのだった。
■あらすじ■
武器になれる訓練→カンナちゃんの料理すごい→カンナ様ですね!とコロネはっちゃける。
→あれ変態化するの私のせいかもしれないと猫
■変更点■
特になし
■連絡■
更新ペースがやや落ちるかもしれません










