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閑話1:VRMMO時代 カンナちゃんとの出会い編 4

「んもぉぉぉぉぉ!!」


 猛突進お馬鹿の牛型モンスターモウモウの大群が私めがけて突進してくる。

 私は土魔法を買ったその足で、モウモウの沸く草原で狩りをはじめた。

 ワザとモウモウをいっぱい集めて、私はモウモウから逃げまくったのだ。


 罠師は基本、素早さが高い。そして敵のlevelは最高で5のため、転んだりしなければ私でも逃げ切れる。


 そう、この牛さん、突進してくるお馬鹿さん。

 私はある程度の数の、モウモウを惹きつけると、魔法を展開させた。


『土霊振壁』


 私とモウモウの間に突如土の壁が現れ――モウモウがあっけなく激突した。

 そりゃもう物凄い勢いで。

 

 土壁に衝突して、衝撃音とともにポンポンと小気味のいい音をたて、宝箱へと変貌していくモウモウ達。

 昨日と同じく、あっけなく昇天していく。


 いやぁ、なんていうかこう一気に倒すって気持ちいいね。癖になりそう。


 level5では私のMPで『土霊振壁』が唱えられるのは2回まで。

 あとは、ただひたすら座ってMPを回復させなければならない。


 けれど、この方法ならいっぺんに何匹も牛さんが倒せるため、かなり効率がいいのだ。

 うんうん。初日のラッキーボーナスタイムのおかげで、わりと効率よくレベルあげが進んでる気がする。

 あれからlevelもあがってlevel7だし。



 現在所持金は84G。

 一匹2G〜5Gしかもってないため、お金の貯まりはそれほどよろしくない。

 が、まだメインクエストもサブクエストも一個もやってないのだから仕方ないだろう。

 それにドロップした肉や皮はまだ売ってないし。


 そろそろメインクエスト辺に手を出してみたいが、全部が全部土壁に体当たりしてくれる敵ではないしなぁ。

 モンスターを短剣でぶっ刺す事が私にはたしてできるだろうか?

 うん。きっぱりはっきりできる気がしない。

 考えてもみてほしい。ほぼ体感はリアルと変わりないのだ。

 なのに短剣一つでクマとかに挑めるかと聞かれて挑めるはずなどない。

 もう少し攻撃の手段を獲得しないことにはクエストをはじめられない。

 ちなみにメインクエスト基本は一人でこなすストーリークエストだ。

 サブクエストはわりと、お使いクエストだったり、複数人プレイヤーがいないとこなせないクエストだったりする。


 クエストの前にとりあえず、この『土霊振壁』の魔法を使いこなせるようにならないと。


 私がそんな事を考えていると



「キャァァァァァ」


 と、可愛い悲鳴が聞こえてきた。

 慌てて見やれば、そこにはモウモウに追われる可愛い栗毛の女の子の姿。

 杖を持っているところから見ると魔導士系なのだろう。


 名前は三月カンナ。プレイヤーだ。

 うん、これは放って置くことはできない。

 中身残念オタ女子だけれど、外見は立派なイケメンなのだ。助けてあげないと!

 てか、こういう出会いこそMMOの醍醐味だと思うし。

 はじめてのプレイヤーとの遭遇だもん心踊る。


 私はダッシュで女の子の追われている方向へ走るのだった。



 △▲△


「カンナさんこっち!!」


 私が追われている少女に叫ぶと、少女はこちらに気づき、言われるがまま逃げてくる。

 うっし、いい感じ。


 私は少女が横を通りすぎたのを確認すると『土霊振壁』


 そのまま魔法を展開させた。少女とモウモウの間にできた土壁に、突っ込むモウモウ達。


 どっシーン!!


 相変わらずなんの考えもなしにモウモウ達は突進し、勝手に死んでいくのだった。



 ▲△▲


 

「ハァハァ ありがとうございます。助かりました」


 モウモウを全部倒し終わったのを確認すると、カンナさんが微笑んだ。

 身長は160cmくらいだろうか?栗毛の可愛い女の子だ。


 まぁ、所詮ネトゲなので中身は実は男でしたー!という可能性もなきにしもあらずだが。


「いえ、かえって邪魔しちゃったんじゃなかと心配しましたが大丈夫そうでよかった」


 私が言うと、カンナさんがにっこり微笑んで。


「いえ、本当に追われてたので助かりました。ありがとうございます」

 

 と、可愛い女の子の声で答える。ちなみに私も声は男声に変更になっている。

 なんと口調まで勝手に男言葉に変えてくれるという特典付き!

 まぁ、ややアニメくさい口調にはなるが、そこはご愛嬌だろう。


 どうもカンナさんの話によると、アテナサーバーでまったりソロプレイで裁縫と料理のスキルを街中で細々と上げていたらしい。

 職業は【錬金術師】。将来的にはポーションとかも作ってみたいとか。

 街中でNPCから買った布を小袋にして、それをNPCり、その売ったお金でまた布を買い裁縫をあげるというのを繰り返していたらしい。

 だが、街中で買える布で作成できるアイテムでは、裁縫スキルが上がらなくなってしまい、皮を手に入れるために試しに街の外に出たところ……先程のモウモウに追われたとのこと。


「アテナサーバーで裁縫スキルを上げるのは大変じゃないですか?

 一からリアルで作るのと同じで手作業で作らないとなんですよね?」


 私が聞くと、カンナさんは微笑んで、


「はい!でも楽しいですよ!

 私裁縫が趣味なんです!

 ガイアサーバーではボタン一つで出来ちゃうのでつまらなくてこっちに来てみたのですが……」


 と、前半のハイテンションなトーンとは別に後半はやや沈んだ声になる。


「戦闘がきついですよね。このサーバー」


「はい。私昔から運動得意じゃなくて……。

 さっきもウサギさんを倒してみようとしたけど可哀想でできなくて……街に帰ろうとしたら牛さんに襲われちゃって」


 と、苦笑いを浮かべた。

 うん。どうやらこの子、私とまったく同じ道を歩んでいるらしい。

 ちょっぴり親近感が湧いてくる。


「じゃあ、さっきの倒した牛のドロップ分けましょうか」


 私が言うと、カンナさんはブルブルと首を横にふり


「た、助けていただいたのにドロップなんていただけません!?」


 と、めいいっぱい否定した。うん。やばい可愛い。

 この手のタイプの子って男女問わず面倒みたいセンサーが働いちゃうんだよね。ネトゲ時代から。

 なんだか昔からカンだけはいいほうで、面倒みたいなーと思う子は大体いい子だし。


「でも釣ってきたのはカンナさんですから。

 十分権利はありますよ。むしろ経験値ももらえて自分は得したくらいですし」


「釣る…ですか?」


「ええっと、敵を大量に味方の場所まで連れてきて、倒す事ですね。

 もしかしてネトゲとかやったことないんですか?」


「は、はい。お裁縫と料理がしたくてこのゲーム始めたので…すみません」


 裁縫と料理ならリアルでもできなくないだろうに。なぜわざわざVRゲームで料理と裁縫なのだろう?

 まぁ、いいか。理由なんて人それぞれだし。


「友達とかと一緒にプレイしてるんですか?」


「い、いえ一人です……でごめんなさい」


 何故かやたら謝られる。うん。なぜだろう?


「いえ、自分も一人ですから。あ、そうだご迷惑じゃなければ一緒にやりませんか」


「え!?いいんですか!?」


 私の言葉にカンナさんがぱぁぁぁと瞳を輝かせた。やばいこの子マジ可愛い。


「ご迷惑じゃなければ。自分も一人ではじめたのでこのサーバー、一人でやるのはキツイですし。

 お互い頑張りましょう」


 そう言って、手を差し出すと


「はいっ!宜しくお願いします!」とカンナちゃんはにっこり微笑むのだった。

 

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