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169話 甘え

「待ちますよ――いつまでも」


 恋愛ごととなると逃げて回っている自分に、微笑みながら言うコロネの顔が浮かんだ。

 正直な話。自分でもすごくメンドクサイ女だと思う。

 リアルでこんな奴と付き合うとか自分なら絶対無理だ。

 素直になるのが恥ずかしくて、ついコロネより優位にたって物事を進めたいと思ってしまい意地をはってしまう。

 コロネをからかいたくて男の姿も捨てられず、かといって男として扱われるのも嫌だという、面倒なやつなのに。


 それでも、コロネはそれを理解した上で。

 

 私が恋愛ごとを素直に受け止められるまで、ずっと待つと微笑んでくれた。


 私はそれに甘えてしまった。


 コロネが突然居なくなるなんてことを考えもしなかったから。

 自分ならコロネを守りきれると信じていた。


 

 コロネの身体が透けていってしまった時。私は何もできなかった。


 もし、ここで負ければ、コロネはそのまま消滅してしまう。

 そんなことは絶対させない。


 コロネには悪いが、まだまだ甘えさせてもらう予定なのだ。


 だから絶対死なせない。


 エルギフォスと対峙しながら、私はカマをもつ手に力を込める。


――猫様も信じてください。自分の力を――


 かつてコロネが私に言ってくれた言葉。

 信じよう。自分を。


 斬撃の続くなか、私は全身に神力をまとわせた。

 魔王がそれが見えるのか目を細め警戒色を強める。

 スピードも力も、悔しいがエルギフォスの方が上。

 私はなんとか攻撃を見切って先に行動できているからなんとか防げる状態なのだ。

 だったら――。


 私は脳に身体強化を施した。


 脳の動きをはやめれば、動きが全部スローモーションに見えるんじゃね!?というよくあるアニメ設定のお馬鹿な発想から編み出した技なのだが、なぜかこれが成功したのだ。

 まぁ、今の私の身体は魔王コロネが作ったものなので、これがリアルの世界で通用するかといわれれば、通用しないだろう。

 しかし、強くなれたのだから使わない手はない。


 脳への負荷が強すぎて使える時間が限られているものの、エルギフォスの一歩先をいくにはこれしかないのだ。


 さぁ、勝負だエルギフォス!脳が耐えられる時間内に、お前を倒す!

 まるでこれからおきる未来を予知しているかのような感覚。

 何故か手に取るようにエルギフォスの動きを見切り、私ははじめての一撃を魔王に浴びせるのだった。



 △▲△



「がはっ!?」


 肩から腹にかけて、私の一太刀をくらいエルギフォスが口から血を吐き出した。

 だが、ひるんだ所を見逃すほど私はお人好しではない。

 そのまま瞬間移動で魔王に接近し、傷口にさらに最大級の神力をぶち込んでやる。


 エルギフォスが何故急に強くなったと言わんばかりの表情をするが


 はーっはっはっは!脳を活性化することと魔力を纏わせる事で全てが予測できるのだっ!?などと漫画の悪役の如く、事細かく説明してやる趣味は私にはない。


 私の神力の砲撃に、エルギフォスの身体が吹っ飛び、地面へと激突するその瞬間。


 私はその地面を槍状の形状にかえてやると、硬質化と神力でコーティングしてやった。


 グシャリ!!


 エルギフォスの身体が、私のつくりだした即席の槍に、貫かれるのだった。


 △▲△


「ギシャァァァァァァ!!」


 私がエルギフォスを倒すとほぼ同時。少し離れた所で闘うセファロウスの断末魔も同時に聞こえてきた。

 一瞬だけそちらに視線をうつせば、アルファーの一撃でセファロウスを倒したらしい。


 ズドォォォォン!!

 

 と、その身体が大きく傾き、地面に崩れ落ちる。


 倒した――か?私が思ったその瞬間。


 ゾワリとしたものを感じ、私は慌てて視線をエルギフォスに戻せば――その身体が淡く光り一条の光となってセファロウスへと向かっていった。


 しまった!!自分の死んだ肉体を捨ててセファロウスを乗っ取るつもりか!!

 私が瞬間移動でセファロウスの前に飛んで光をなぎ払おうとすれば――


 ブンッッ!!


 私の身体がアルファーに持ち上げられ、私のいた場所を白銀騎士団達数人の剣が空振りしていた。


「なっ!?」


 その間にも――エルギフォスの光はセファロウスに入っていくのだった。



 △▲△


『気をつけろ主よ!白銀騎士団は身体をエルギフォスに操られている!

 以前の上位悪魔の乗っ取りは、彼らを操るために細工したのを隠すためのフェイクだ。

 白銀騎士団全員を敵と思え!!』


 コロネとテオドールの前に立ち、ミカエルが叫んだ。

 アルファーは私をそのまま放りだすと、白銀騎士団達に向かって攻撃を仕掛ける。


『ちょっと待てアルファー!!ゼルク達に手をだすなっ!!』

 

 私に切りかかってきた白銀騎士団へと攻撃を開始したアルファーに言えば


『そんな余裕のある状況ではありません!!手足を切り落としてでも邪魔できない状況にするべきです!』


 と、吠えた。

 

 ああ、分かっている。

 アルファーが正しい。それでも、一緒に稽古をつけてやり、酒も飲み交わした教え子達を傷つけるなんて私にはできない。


『なら私がやる!どけっ!!』


 そう言った途端。


 大地を飲み込むかのような物凄い音をたてて、魔獣が起き上がった。


 にょきりっと、セファロウスの頭の宝石部分。以前レオンの顔のあった場所からエルギフォスの半身が飛び出してくる。


 その顔に狂喜を浮かべて。


 くそっ!?次から次へと!!


 思った瞬間。セファロスの口が開き――。


 唐突にアルファーに抱きしめられた。


「ーーな!!」


「来ますっ!!」


 アルファーが言葉を発したその瞬間。


 魔獣が全てを呑み込みはじめた。そう、そこに存在する全ての魂を。

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