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164話 神道

「にしても、本当にシステム化する前の世界の魔法はしょぼいのだな」


 ミカエルが白銀騎士達の訓練の様子をみて呟いた。

 対セファロス戦に備え、猫達は白銀騎士団の訓練様子を見に来たのだ。

 しかしこの世界では最強の魔法と言われる魔法さえ、半径1Mくらいを爆発で巻き込むくらいが精一杯。

 ミカエルにしてみればとてもではないが、話にならない。


「ですが、詠唱がいらないのですから、そこはシステム化前より有利なのでは?」


 テオドールの隣に控えたアルファーがミカエルに言う。


 そう、システム化する前と大きく違う所は、詠唱がいらない。

 動作だけで魔法が発動できるのだ。


「主は勉強不足だ。我らの世界も簡単な魔法は詠唱はいらぬ」


 と、ミカエル。

 そう、以前から浮石などの一部の魔法は詠唱なしでいけたのだ。


 話についていけないテオドールとコロネは、彼らの前で所在なさげに稽古の様子を眺めている。

 こちらの世界の住人からすれば、白銀騎士達の戦いはハイレベルなのだが、猫達には弱く見えるらしい。


「ああ、なるほど。威力が弱い理由がわかった。

 こちらの世界の住人は自分たちがもつ魔力でしか魔法を使えないからだ。

 未来の世界は詠唱で神々より力を借りることができた。

 そこが大きな違いだ」


 ミカエルが言えば猫が頷いて


「あー、なるほど。

 じゃあ、詠唱すれば、強力な魔法も使えるのか?」


 と、尋ねる。


「神々とて、いきなり力を貸せと呪文を唱えたところで貸してくれるとは思えぬ。

 あれはシステムにて強制的に引き出していたにすぎぬ。

 猫よ、この白銀騎士たちの神道も開いてやったほうがいいかもしれぬ。

 そうすれば大神の力が使えるようになり、魔法ももっと威力があがるだろう。

 このままではセファロウスに傷一つ付けることができぬぞ」


「それは自分も考えたんだけどさ……道開いて耐え切れなくて死んだりしないのか?」


 と、猫が言えばミカエルはふふんと鼻をならした。


「なるほど、それが心配だったわけか。よかろう。我が開こう。

 加減さえ間違わねば大丈夫だ」


 に、しても、何故魔王は猫の方にはそちらの知識をあまり脳に送らなかったのか疑問ではあるが、とミカエルが心の中でつぶやく。

 一人で全てこなすのでは不都合があるのだろうか?


「ああ、それと若い方のコロネ」


 ミカエルが急にコロネの方に話を振る。


「あ、はい」


「お主もやり方を覚えておけ。

 この先また別の魔獣と相手をするとき、お主が使えれば、助けになろう」


 ミカエルの言葉にテオドールがギョッとした顔になり。


「まだ別の魔獣などでてくるのか!?」


 と、ミカエルに尋ねた。


「当たり前だろう。魔獣は全部で5体いるのだ。いつかは復活する。

 その時神道を開けるものがいなければ、魔獣を相手にできるものがいない。

 こい、若い方のコロネ。対象者に影響がないくらいの神道のひらき方を我が教えてやる」



「は、はい!お願いします!」



 言ってコロネが自分が役立てるのが嬉しいのか嬉しそうにミカエルに連れられていく。


「やっぱいいよな!この感じ!突っ立ってるだけでなんとなく話が進んでく感じで!考えなくていいって最高!」


 猫がガッツポーズをとれば


「ええ、そうですね」


 アルファーがきりっと美形の表情で答える。


「いや、君はミカエルがきてから、白痴化が酷いからちょっとは考えなさい。

 考えるのはミカエルに任せればいいやというのが態度にですぎだっっ」


 アルファーが、猫にほっぺをぷにゅーっと引っ張られる。


「すすすす、すびません」


 そんな様子をみて、テオドールは微笑んだ。

 ミカエルとアルファーのおかげで猫が元に戻った事に安堵する。

 猫が未来に戻ってしまうのは寂しいものがあるが、この様子なら未来のコロネはそれなりに幸せにやっているのだろう…と。


 △▲△


「最近、コロネは楽しそうだな」


 食事中。ニコニコと食事をとるコロネに猫が尋ねた。

 あれからそれなりに日数がたち、大分ミカエルもアルファーもこちらの世界に馴染んできている。

 いまはコロネの自宅で夕食をとっていた。


「はい。ミカエル様にいろいろ教わっていますから!

 世界の生い立ちなどの知識は教わっていて楽しいです」


 と、コロネが笑顔で話す。


 どうやら、そういう知識好きは昔からだったらしい。

 昔、コロネが、裏設定集という言葉にやたら反応して、張り切った姿を思い出し思わず猫は微笑む。


「ああ、コロネはそういうの好きそうだ」


「なかなか神力も使えるようになったし、コロネは筋がいい。

 まぁ、未来のコロネを考えれば当然といえば当然かもしれぬが」


 と、むしゃむしゃと生肉を食べつつ言うミカエル。

 いつの間にかすっかり師匠と弟子の関係になりつつある。


「なんだかすっかり置いて行かれた感があるんだが」

 

 ちょっと猫が不貞腐れれば、


「お主だって、白銀騎士団に稽古をつけてやっているだろう」


「そうだけどさー。それとこれとは話が別っていうか何ていうか」


「なんだ妬いているのか?」


「なっ!?そういうのじゃないし!!」


 からかうミカエルに猫がムキになって否定する。


「あれだけいちゃついてて 今更なぜ照れる」


「いちゃついてるとか言うなし!?」


「接吻までしておいて、いちゃついてないはないだろう?」


「うおー!あれはカウントなしだから!!直じゃないから!

 ってかなんでそれを若コロネの前で言うかな!?」


 と、猫がミカエルに猛抗議する。

 そんな猫とミカエルのやり取りに


(やはり、私は将来そういった趣向に走るのでしょうか……)


 心の中でつぶやき、コロネが若干顔をひきつらせるのだった。



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