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163話 天使

「所で、猫、話があるのだが」


 ミカエルに幸せそうにモフモフしている猫にテオドールが真剣な顔で言う。


「うん?何だ?」


「天使が現れたせいで、一目見ようと城下中の市民が城に大挙して押し寄せてきてるのだがどうする?」


 テオドールに言われ、猫が慌てて外を見てみれば、空中に突如現れた神の使いを一目見ようと、城門の前に大挙して市民が押し寄せていた。


「ちょ!?これどうするよ!?」


「私に言われてもな。この二人の天使をどう扱っていいのか私にはわからん」


 テオドールが腕組みをして答えれば


「よし!アルファーあの群集の前で何か気の利いた事を言ってこい!!

 なんとなく凄そうな事を言っておけばご利益があるはずだ!」


 と、猫がびしっとアルファーに丸なげした。


「ちょちょちょ!?ちょっと待ってください猫様!!

 私はそういう事が苦手なのは知っているでしょう!?

 こういうのを考えるのはコロネ様の仕事のはずっ!?」


 と、アルファーがコロネに助けを求めるようにコロネを見る。


「え、えーっと、手を貸していただけるのか、このあと天界に帰られるのかで話が変わってくるのですが」


 コロネが困ったように答え、


「うん、このあと、アルファーもミカエルも一緒だから手を貸してもらえると思っていい」


 と、猫。


「では、そのように話を進めよう。魔獣退治に神々が天使を遣わせたとでもいっておけばいい」


 テオドールがうなずいた。


「あー、うん!それでよろしく!」


「では少しその天使二人をを貸してもらう。私が話す。二人は後ろで立っているだけでいい」


「ええええ」


 ミカエルは普通に頷き、アルファーは嫌そうにうめいて助けを求めるかのように猫を見るが


「よし!アルファー頑張れ!ついでにそのままテオドールの護衛も宜しく✩」


 と、猫がガッツポーズで無情なことを言うのだった。



 △▲△



 わーーーーー!!!


 天使の登場に感動した市民たちから歓声の声が漏れる。

 わりと遠くにいるはずのコロネと猫にもその声が聞こえてくるくらいだ。


「やー天使人気だな」


「それは当然でしょう。天使ですよ?

 神々の御使い。本来聖職者しか見ることのできない存在です。

 天使まで付き従えてるとは……これからは猫の事を様付けで呼ぶべきでしょうか」


 ため息まじりにコロネが言えば


「あーそれはなし。未来コロネを彷彿させるし」


 言って猫の顔が少し寂しげなものになる。

 ミカエルとアルファーとの再会の はしゃぎぶりといい、猫もホームシックにかかっているのかもしれない。

 コロネとテオドールからしてみれば、いつまでも居て欲しいと願ってしまうが……。

 本来猫が好きなのは未来のコロネなのだ。

 頼りない自分より、頼り甲斐のある未来のコロネの方に会いたいのだろう。 

 アルファーのセリフから察するに未来のコロネはそれなりに頼りにされているらしい。

 コロネは自分の不甲斐なさに情けなくなる。



「でもまぁ、気を引き締めないといけないのは確かだな。

 腹黒3号がこのタイミングであの二人を送り込んできたということは……エルギフォスが仕掛けてくるのも間近なのかもしれない」


「……そうですね」


 コロネは歓声のあがる城門の方を見つめた。

 猫との別れもそう遠くない未来なのだろう。


 覚悟を決めておかないといけない。

 コロネはそのままうつむくのだった。



 △▲△


「猫様酷いです……恥ずかしさで死ぬところでした」


 城に戻ってくるなりアルファーが今にも死にそうな表情でぐったりしている。


「マナフェイスの時だって同じような事してたじゃないか」


「あの時向けられるのは憎悪でしたが、今回純粋に崇拝なのですよ!?

 全然状況が違います!!」


「お主は意外とメンタルが弱いのだな。修行がたりん修行が」


 猫に抗議するアルファーにミカエルが突っ込む。


「ミカエル様は場馴れしすぎなのです」


 むすっとアルファーがミカエルに抗議した。


「はい。喧嘩はそこまで。

 じゃあアルファーはテオドールの護衛で、ミカエルはコロネの護衛ってことでOK?」


 猫の言葉にミカエルとアルファーが頷くのだった。


 △▲△


「――にしても、主よ何かあったのか」


 コロネが眠る隣の部屋で。ミカエルと猫が酒を飲みながら話す。

 すでに城にはアルファーを残し、猫達はコロネの自宅に戻っていた。


「うん?どうしてそう思う?」


「こちらの世界に来たとき、会った主の殺気は尋常ではなかった。

 殺気を殺せぬほど切羽詰まっていたのだろう?」


「あーうん。自分のミスで仲がよかった子達が……ね」


 言ってグラスを傾ける。


「こっちの世界はさ。

 魔法とかもしょぼいし、ちょっと人よりいろいろできるから調子にのってた。

 自分ならなんでも出来るんじゃないかって過信してた部分もあると思う」


「実際主はいろいろできるだろう」


「でも、守れなければ意味がないだろ?

 死人がでるのは初めてだったから正直きつかった。

 こっちの世界じゃ生き返らせられないし。


 それに一人でいろいろやってみてわかったけど……。

 やっぱり難しい部分は未来のコロネに守られてたんだなって。

 先回りして自分が傷つかないようにレールを敷いてくれていたのは何となくわかっていたし。

 こっちのコロネもテオドールも頑張ってくれてるのはわかるけど、自分がレールを敷く立場だったからきついって言えばきつかった。

 この世界に来る前に頑張るって心では決めてたけど、実際やるとなると難しいしもんだな」


「……随分主にしては素直だな」


「うーん。そうかもな」


 言ってニヘヘと微笑む。


「ミカエルが来てくれてよかったよ。あ、もちろんアルファーもな。


 でも、そう考えるとあの腹黒3号もこのタイミングを狙って、ミカエルとアルファーを送り込んできたんだから守ってくれてるのかもな」


 猫は言いたい事だけ言ってこちらに送り出した魔王を思い出す。

 彼も彼なりに猫のことを考えて行動はしてくれているのだろう。

 何だかんだ、悪態はつくが、結局はベースはコロネなのだから。


「あー、はやくコロネに会いたい。リリにもカンナちゃんにもレイスリーネにもファルティナにもザンダグロムにも」


 言って猫はウトウトしだす。


「休むといい。護衛は我一人で十分だ。魔族相手なら主より鼻がきく」


「うん。そうだな。じゃあ任せようかな」


 言って猫は微笑むのだった。


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