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149話 ナースの大盾

『ネコ!!大体セルレーン領までついた!!

 プレイヤーと守護天使の気を女神が追いかけてる!!いますぐ来て!!』


 リリの言葉とともに、私はすぐさまリリの視線で転移した。


 リリの視線でたどり着いた場所は大平原と森の広がる緑豊かな地域。

 ゲームでもレベル上げで大分お世話になったセルレーン領だ。

 

 瞬間移動で出現した私をリリがそのまま口でぱくりと銜える。


 どうやら竜姿で瞬間移動を行使していたらしい。


『ネコ、もうすぐつくっ!!もう守護天使の動きが大分遅くなってる!!捕まっちゃう!!』


『わかった、リリ、だいたいの場所を私の頭の中に直接送ってくれ!!』

 言って、アイテムボックスからアルファーとレイスリーネとザンダグロムを解放すれば、二人ともすぐに硬質化を解いた。


 その瞬間、ゾワリと殺気を感じ、私は構えた。


『ネコ!!女神、カンナ追うのやめた!こっちくる!』


『どうやらカンナ様を捕まえるのは諦めたようです。

 ですが女神の気がどうもおかしいです!』


 リリに並行して瞬間移動で飛んでいたコロネが言う。


『わかった!!とりあえずアルファーとレイスリーネはカンナちゃんの護衛に!!

 私とリリとコロネとザンダグロムで迎えうつ!!』


 言った途端、それは現れた。


 カエルのような化け物の顔をした、少女の身体の女神。


 そう――異界の神の最後の女神。クリファだった。



 ▲△▲△▲△



 魔王のくれた記憶によれば女神クリファはこんな顔ではなかったはずだった。


 そして――私はそのカエルのような顔に見覚えがあった。

 そうー、セファロウスなどの魔獣にそっくりなのだ。


『まさか――魔獣を呑み込んでパワーアップを計ったとでも!?』


 コロネが驚きの声をあげたその時。


 ドスッ!!!


 驚く間もなく、コロネが黒い槍で貫かれた。


「がはっ!?」


 盛大に血を吐き出し、そのまま力なく下へ落下していく。


『なっ!?』


 私はそのまま、魔獣女神の方に向かって構えた。

 コロネを助けたいのはやまやまだが、私が後ろを見せればすぐさま私も殺されるだろう。

 そしてリリも。

 私のカンが告げている。目を離したらだめだと。

 正直……先程の攻撃、見ることも感じる事もできなかった。

 カンで避けるしかない。


 ザンダグロムが咄嗟の判断でコロネを追いかける。

 コロネはザンダグロムに任せよう。

 それに――下に居てくれたほうがなにかと都合がいい。


「主よ気をつけよ!!!最初から狙いは其方だ!!

 我らを本気で捕まえる気などその神にはなかった!!」


 下で私の守護天使ミカエルが叫んだ。

 どうやらモフモフミカエルちゃんもこちらに転移していたらしい。


「猫まっしぐら……お主のせいじゃ!!お主のせいで!!

 我の仕える大神が滅んだ!!

 他の神々も滅んだ!!

 双子の姉でさえも滅んだ!!!!

 我は利用されたのじゃ!!あの腹黒魔王に!!


 こうなったらせめて一矢報いてやるわっ!!猫まっしぐらお前を殺し、魔王も殺すっ!!

 そして我が世界の唯一絶対の神として君臨するのだ!!」


 女神が叫ぶ。


「逆恨みもいいとこだろう!?

 そもそも全部お前のせいじゃないか!!

 私を呼んだのも、魔王に利用されたのも!!」


「五月蝿い五月蝿い五月蝿いっ!!

 

 プレイヤーに世界を荒らさせたあと、我がそのプレイヤーを打ち倒し、人々の信仰を集める予定じゃったのに!!

 その計画をお主が全部だめにしたではないか!!」


 まるで三流悪役のようなネタばらしをしだす女神。

 ああ、やっぱりこの子に悪役は無理なのだろう。根がアホすぎる。


 それでも――魔獣で手に入れた力はとてつもない。

 そして魔王が力を失ったせいでレベル制限がなくなったせいか、女神の力が強くなっている。

 鑑定しても女神のレベルは標示されない。


「しかし、魔王が瀕死のおかげでレベルなどという制限がなくなった、我は力を取り戻したっ!!

 ナスターシャに他の神々の(かたき)、いまここでとってくれようぞ!!」


 と、黒い槍を無数に出現させる。

 そしてそれを放ったその瞬間。


 わたしは瞬間移動で転移した。

 もちろんリリもだ。


 だが、黒い槍は私を追ってくる。


 ちっ!!


 追尾型の技か!?


 魔王の力が弱まってしまった今、硬質化も貫かれてしまう可能性が高い。

 技本来の性能がそのまま通用する保証なんてどこにもない。

 システムがほとんど効かなくなっているのだ。

 正直瞬間移動もいつまで使えるか――はやく倒さないと。



 私は女神の前にそのまま瞬間移動で飛び込んだ。


「――んなっ!?」


 やっぱりこいつ、体術はからっきしらしい。

 なんとなく構えとかでそんな気がしたんだよね。こいつ弱いと。

 まさか目の前にクルとは思っていなかったのだろう、思いっきり狼狽する。

 そして、私はその女神の身体をくるりと盾にして、黒い槍に貫かせた。


「うぎゃぁぁぁぁ!!」


 物凄い悲鳴をあげる、クリファ。


 その隙をリリは見逃さなかった。

 すぐさま最大威力のブレスをクリファにお見舞いする。


 ……が、リリの攻撃はさしてダメージを与えられなかったようだ。

 やはり武器効果がない分、ブレスではダメージが低いらしい。


 クリファは自らの槍で損傷した部分を自動再生させながら


「貴様よくもやったな!!許さぬっ許さぬっ!!

 こうなったらこの一帯ごと消し炭にしてくれよう!!!」


 言ってクリファが大技なのか手を天に掲げた途端、物凄い圧量の黒い珠が出現した。


「その身で味わうがいい!レベルやシステムなどというくだらない制約さえなければ!

 人間など神には敵わぬという絶望的事実を!!


 瞬間移動で逃げようとも、ここら一体を消滅させてくれるわっ!!」


「ネコッ!?」「猫様っ!!」「猫さんっ!!」


 リリやアルファー、そしてカンナちゃんが叫ぶ。


 うん。わかってる!!この状況、なんとかできるのは私だけだ。


 そして一かばちか。


 魔王がそのシステムを残してくれたことを祈るしかない。


 女神が大技を放ったその瞬間。


 私はそれを作動させた。


『冥王ナースの大鏡』


 大鏡が、女神の技を全て受け止めた。



 ▲△▲△▲△



「そのようなアイテムがまだ使えると思っていたのか!

 片腹痛いわっ!!」


 異界の女神が笑いながら、私に叫ぶ。


 大鏡は……なんとか発動したが、本来ならダメージを跳ね返すはずがまったく跳ね返さず、私が一人その攻撃を鏡で空中で受け止めている形になっている。


「ネコッ!!」


 リリが駆けつけ、私と一緒に空中に浮いた状態で盾を支えるが、ミシミシと大鏡が割れていく音が聞こえてくる。


 ――くそっ!?もうだめか!?

 こうシステムの力が弱まって、ワザも魔法も思い通り発動しない状態では戦うのはキツすぎる。

 せめてなんとかこの状況を打破しないと!?


 私はチラリとカンナちゃんの方に視線を向ける。

 そう、女神には気づかれないように、とある作戦をたてていたのだ。

 だが私が視線を向けてしまったことで女神にも気づかれてしまったらしい。

 女神の視線がカンナちゃんにむいてしまう。


 くそっ。しまった。

 

 私は瞬間移動で移動中、こっそりコロネに指示していたのだ。

 カンナちゃんの中に眠る神の力をとってくるようにと。

 

 すでにコロネは私と、sionと他の転生者の中に眠っていた神の力を紋章に蓄えているはずなのである。

 カンナちゃんの中に内包される神の力を吸い取れば紋章が光るかもしれないと思ったからだ。


 思ったとおり、シュンとカンナちゃんの隣に背中が光った状態のコロネが現れた。


 ――おおおおやった!?まさかの逆転!!

 カンナちゃんに眠る神の力を紋章に吸収してきたらしい。

 そのおかげでなんとか紋章が補充できるくらい神力がたまったのだ。


「まさか!?させぬわっ!!」


 クリファがコロネに向かうその途中、どこからか現れたのか知らないが私と同じ姿のかなりの数の銅像がクリファを襲う。


「んなっ!?」


「彫刻のスキルあげ中に作った闘う猫まっしぐらさん1号〜1000号です!!」


 と、カンナちゃん。


 カンナちゃんの作った銅像がぎこちない動きで女神を襲う。

 ほとんどゴミみたいな攻撃ではあるが、とにかく数が半端ない女神の気をそらすのに成功したらしい。


 その間にコロネの瞬間移動が成功する。

 sionか守護天使の視界を利用して瞬間移動でいまごろ天界についたのだろう。


 うっしゃ!!これでなんとか!!


「くそっ!!神々が復活する前に!!お主だけでも!!」


 女神が方向転換し、私に襲いかかってきた。

 くそっ!!盾を支えてるせいで、いまの私は無防備そのものである。

 攻撃されたらアウトだ!?


 ん!?待てよ!?



 今攻撃は全てナースの大盾が集約して支えている。


 つまり!


 私は念話でみんなに指示すると皆一斉に動きだす。


「死ぬのじゃぁぁぁぁ!!猫まっしぐらぁぁぁぁぁ!!」


 襲いかかってくる女神に


「全力でぇぇぇぇ断るっ!!!」


 私が盾のちからを引きずりながらをくるっと廻して女神のその技を、女神の方に解き放った。

 そう、女神の力を支えるのではなく、受け流したのだ。

 

 鏡の力なのか、鏡が支えていた女神の攻撃が集約し一条の光となって女神を貫く。


「んなっ!?ま…さ……か」


 自らの技に貫かれ驚きの声をあげる女神ことクリファ。

 ちなみにみんなは反対方向に逃げてあるので巻き添えはいないはず。 

 血を吐き出し――女神が呟いた。


「ば……か…な」


 自ら放ったその強大な力を一身にあび、女神の身体がぼろぼろと崩れ落ちる。


「だ…が…ただではやられぬ……お前らも道ずれじゃ!!」


 女神がそう言い、何かをしようとしたその瞬間。


「しつこいぞ。滅びろ」


 声と共に――女神の身体は霧散した。


 私が声の方に振り向けば、そこには、宙に浮いた状態で魔王が佇んでいるのだった。

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