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140話 魔王と異界の神


「――何故、動ける」


 化け物のような姿に変貌したマゼウスの最初の言葉はそれだった。


 私がその言葉にはっとして、周りを見回してみれば――みんな時がとまったかのように静止していた。

 コロネも守護天使達も、設置した罠も。


 スパーリングフィールドを張っていたはずなのに、神々の技が通用してしまったらしい。


 ただ、


「ネコ!!」


 リリが異変を察知して人型になって私の隣で鍵爪を構えて立つ。

 何故かリリは動けるようだ。


 そしてマゼウスの視線は……私達ではなく、真っ黒な鎧に身を包んだ男に注がれていた。

 漆黒の鎧に、マスクをした男に。

 

「ネコ……これどういうこと?」


 リリが困った表情で私の後ろで固まっているコロネと鎧の男を交互にみる。

 無理もない、鑑定してみてみれば



□□□□


[種族]不明


[名前]コロネ・ファンバード

[職業]魔王


[レベル]2000



□□□□


 と、出るのだ。


 ……コロネがレプリカなのだとしたら、この魔王こそがコロネのオリジナル。

 てか倒したエルギフォスとは別人なのだろうか。

 でも声はエルギフォスと一緒だし、装備やら全て魔王と一緒なのだ。


「答えは簡単だ。

 私は貴様より強い」


 言って魔王が指をぱちんと鳴らせば、黒い円錐のような塊が無数に現れ、その円錐のさきが全てマゼウスに向く。


「……我らをここに誘い込んだのは貴様か?」


 ギロリとマゼウスが魔王を睨めば


「ああ、そうなるな。

 まさか異界の神々がこのような知能の低い集団だとは思わなかったが」


 と、空中にふよふよと浮いたまま答える。


「何が狙いだ」


「この状況を見れば、聞かなくてもわかるはずだが」


 言って魔王は神々の閉じ込められた水晶に視線を移した。

 マゼウスも忌々しげに水晶を見つめ、歯ぎしりする。


「神々の復活か――我らを贄にして!」


 マゼウスが吠えれば、口元だけで魔王……コロネは笑う。


「贄?違うなお前たちが神々から奪ったそれを返してもらうだけだ。


 そこに拒否権などない」


「何者だ貴様は!!」


 マゼウスが叫ぶが魔王は鼻先で笑い


「そこに立っている男の顔を見てもなにも思い出さなかったお前に名乗った所でどうせわからんよ」


 マゼウスは言われてこちらに振り返った。

 私とリリの後ろにいるコロネに視線を移し――何かを思い出したのか表情がかわる。



「貴様かっ!!最後まで我々神々に従わなかったエルフの民!!」


 その言葉に魔王を仮面をとる。

 そこには今のコロネと対して変わらない年齢のコロネの顔が現れる。

 過去イベントではもっと歳をとっていたはずだが……何故か若返っているらしい。


「思い出したか。

 どうだ、取るに足らぬと見下していた存在に殺される気持ちは?」


「何故エルフ如きが審判の御子によって滅んだはずのこの世界を再生できた!!この世界は何だっ!!」


 言った途端。


 ザシュ!!!

 

 円錐の一つが化け物化したマゼウスを貫いた。


「教えてやる必要もあるまい?

 どうせ死ぬのだから」


 魔王コロネが手を振り上げたその瞬間。


 空中に舞っていた全ての円錐が、マゼウスを貫くのだった。



 △▲△


「……これは!?」


 マゼウスが消滅した瞬間、止まっていた時が動きだした。

 コロネと守護天使達が、突如現れた魔王……オリジナルコロネに驚愕の声をあげる。

 説明がめんどいので、私が念話で先ほど見た光景を、コロネと守護天使達の思考に直接送ると、3人とも理解したのかすぐさま身構えた。


 その瞬間、コロネの背後の紋章が眩しく光り輝きだす。


「――なっ!?」


 マゼウスを倒したその力が――いつものように天に昇り、散りじりになると、神々達に降り注いだ。


 そして一瞬眩しく光ったあと、何事もなかったかのように水晶は元通りの状態になる。


「……これでも足りぬか」


 明らかに落胆したように、魔王コロネが呟いた。


「一体これはどういうことなのか、説明してくれると助かるんだが。

 お前は何だ?エルギフォスなのか?」


 私が魔王コロネに話しかければ


「説明……か。

 そうだな。神々が蘇らなかった以上、お前にも知る権利はあるだろう」


 と、私の方に振り向いた。

 コロネとリリが私の前にでて、構えるが魔王は気にした風もない。


「……ついでだ、お前たち全員に教えてやろう。

 何故、これから殺されなければならないのか」


 言って魔王は、残忍な笑を浮かべる。


「……お前と私たちが闘う理由は?」


 私が問うと、魔王は眉一つ動かさず


「すでに、お前たちの知る異界の女神を除いて、現存する異界の神はすべて神々に捧げた。

 だが、神々は蘇る事はなかった。

 残る一人の異界の女神クリファだが――あれでは神力が足りぬ。

 もう一人神の力をもつものを捧げる必要があるのだ。


 それが、私になるか……もしくは神の力を継ぐ可能性がある猫まっしぐら、お前になるか、それだけの違いだ」


 魔王の言葉に私は固まる。

 神の力を引き継ぐ可能性……?え?私が?

 何、オタク時代の私だったら狂喜乱舞しそうな中二病設定!!


「そ、そんな嘘に騙されるとでも!?」

 

 私がきりっと魔王に言ったつもりだったが


「……猫様顔がにやけてます……」

「ネコ悪い癖……」


 と、リリとコロネに突っ込まれる。


 え。だって中二病設定大好きの私が神の力を引き継ぐ!とかモロ中二病満載設定言われちゃったらウレシイに決まってるじゃん!?

 だれでもアニメや漫画をみて、自分もそんな力あったらいいのになと思う設定じゃん!?

 

 うん……私だけかもしれないけど。


 若干、というか、かなり魔王の方のコロネが引いたようだが、気にはしていられない。

 神の力を引き継げる可能性とか美味しい設定はちゃんと聞いておかないといけないだろう。


「……やはりお前は私には計りかねる。

 何故こうも力を求める残念な性格なのか。

 ……流石大神の力を独り占めしようとしただけはある」


 と、何故か哀れむような視線を向けられる。


 くっそー悪かったな!残念女で!

 てか独り占めとかなんの話だよ!まず説明はそこからして欲しいものである。

 そんな私の考えなど他所に


「何を言っているのですか!?

 猫様から中二設定大好きな所を取り上げたら何が残ると言うのですか!?

 そこが魅力なのに残念とは失礼なっ!!」


 コロネが何故か全力でフォローになってないフォローをする。


「さいきょー設定好き ネコ大事な個性!

 否定するのはよくない!!」


 と、リリ。


「そうです!猫様は常に最強を求めるお方!!そこが素敵なのではありませんか!」


 と、上空から飛び降り、私の前で構えるレイスリーネ。


「ザンダグロム、理解。マスター戦闘オタク」


 と、ザンダグロム。


「……。すみません、私は皆さんのノリにはついていけません」


 と、おずおずとアルファー。


 うん、君ら絶対それフォローになってないから。むしろディスってますから!


 そんな私達のやり取りに魔王コロネは大きなため息をついたあと、


「お前は太古の昔、魔獣の元となった異界の神ゼビウスとの戦いで消滅した大神ガブリエラの力をその魂に内包している」


 突然説明しだす。

 うん、私達のやりとりが正直面倒に感じたのだろう。わからんでもない。


「大神ガブリエラは、ゼビウス(異界の神)が魔獣として復活することを予見していた。

 その為、ゼビウスとの戦いで死していった人間やエルフ、竜人達の魂に自らの力を封印して残そうとしたのだ」


「……それは、つまり猫様は……」


 魔王のセリフにコロネが私を見やる。

 そう、魔王の言っている事が本当なら……


「元はこちらの人間だ」


 答える魔王。

 ええええ!?ってことな何!?


 異世界転移しちゃいました✩とか思っていたのが実は帰ってきただけだったの!?


「じゃあ、なんで私は日本に転生していたんだ!?」


「そこは話の本筋とは関係がない。

 話す必要性が感じられない」


 魔王が、事もなげに言ってのける。

 い、いや、大事だから!!そこ物凄く大事だから!!


 私の心のツッコミをガン無視して魔王は話したいことだけ話し出す。


「ただの人間だったお前の魂は……本来多くの魂に振り分けられるはずだった大神の力を、何故か貪欲にその魂に取り込んだ。

 本来なら魂に内包できるはずのない量をな。


 そして、何故か制御に成功した」


 魔王の言葉にリリとコロネが私をジト目で見ながら


「流石猫様……転生前から、最強を目指していらしゃったのですね」


「猫、ゲーム関係ない。昔から最強厨。

 魂まで最強厨だからもう治しようがない」


 各々感想を述べる。


 ……はい。ごめんなさい。魂からしてもう私痛い子だったみたいです。


「だが、その魂に内包した神の力を解き放てば、身体は耐えられぬ。

 だからこそ、ゲームキャラとして、耐えられる器を用意してやったのだ。

 そのプレイヤーの身体なら、神の力を解放しても耐えられるだろう」


 魔王の言葉に私は固まる。


 ……ん?なんだかそれって、この世界がゲーム化したのって私のせいみたいじゃないですか。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!?

 ってことは、この世界が日本でVRMMOでゲーム化したのって私の身体を用意するためだったのか!?」


「それだけの為ではないが理由の一つだ。

 魂に内包しただけの状態では神の力は使えない。

 その力を利用するには、魂から解放する必要がある」


「魂から開放ってどうやるんだ?」


 私の問いに魔王はにやりと微笑んで


「こうやるのさ」


 突如、私の前に魔王が現れたその瞬間。頭に激しい痛みを覚えた。

 魔王の手が……私に触れたのだ。


「さぁ、力を解放してみせろ!!橘楓!!」


 魔王の言葉とともに――私の意識ははじけ飛ぶのだった。



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