123話 お風呂その2
「猫様、本当に女性でいらしたんですね……」
半日女に戻れる腕輪で女の姿に戻ると、レイスリーネが呆然とした表情でつぶやいた。
私たちはカンナちゃんのご飯を食べ終わると、リリと一緒にお風呂にきたのだが、護衛でレイスリーネもファルティナもついてきたのだ。
「うん?まぁ、これは結構美化されてる姿だけどね。
にしても、やっぱり守護天使としては男がマスターの方が嬉しかったりするの?」
やや、がっかりしたような雰囲気を感じたので聞いてみる。
「そんなことはありません。猫様。
男女どちらでも絶対の忠誠を誓うのが守護天使ですから」
と、ファルティナ。
「そ、そうです!女性でも男性でも、猫様はマスターです!」
レイスリーネも慌てて身を乗り出して言う。
「うん?ならよかったけど……。
そうだ、二人もお風呂はいる?
ここの風呂結構広いから四人くらい余裕だけど」
「い、いえっ!!猫様とお風呂なんて滅相もありません!!」
レイスリーネが顔を真っ赤にして全力否定してくる。
「私も護衛ですから。遠慮しておきます」
ファルティナにも断られた。
うん。まぁ護衛が鎧脱ぐわけにもいかないよね。
でも、ちょっと寂しいけど。
いや、まぁ、よくある男性向け小説の女同士が胸見せあってキャキャウフフとかそんな事をする気はこれっぽっちもないけれどさ。
やっぱ女同士って一緒に風呂って嫌うよね。恥ずかしいって。
私は結構好きなんだけどなぁ。一緒にお風呂。
「ネコー!はやくー!」
リリはというと、躊躇なく服を脱いでお風呂へダッシュする。
もちろん、石鹸の泡で遊びまくるのはお約束だった。
△▲△
「あー。いい湯だった。
レイスリーネもファルティナも、私が男に戻ったら入ったら?」
お風呂からでて、普段着に着替えた状態で言う。
ファルティナは、眉を潜めると
「……風呂はあまりいい思い出がありませんので」
と、俯いた。
その言葉に私は察する。
マナフェアスがきっと風呂で女性に酷い事をしたのだろう。
いくら守護天使二人には何もできなかったとしても、他の子がされてる所をみるのも辛いものがある。
なんだかんだで、彼女達もまだ傷を引きずっているのだなと、反省した。
最近マナフェアスやレオンを倒したせいで、自分の中で片付いた気になってはいたが……ファルティナをはじめ、心に傷を負った人たちは回復はしてないのだろう。
ちょっと浮かれてたのは反省しなきゃな。
などと思っていると
「そういえばファルティナは以前、お風呂でのぼせた事がありましたね。あの時は大変でした」
と、レイスリーネ。
……うん?そんな理由?
「レ、レイスリーネ!?何も猫様の前でそのような醜態を言うこともないでしょう!?」
「ああ、すみません。口がすべりました」
と、真っ赤になるファルティナと、今にも舌をぺろりとだしそうなレイスリーネ。
どうやら、レイスリーネの話が図星だったらしい。
やっべー。私深読みしすぎてただけだったわ。
ってか、ファルティナも天然系かよ!
うちのメンバー天然しかいないな!?
そんな中
「ねーねーネコ!トランプしよう!トランプ!
リリ ババ抜き やりたい!サラちゃんにトランプもらった!」
と、相変わらず空気はまったく読まないリリちゃんが提案する。
いや、逆に空気を変えようとしてるのかもしれないけど。
こういうのはやっぱり子供の特権だよね。
「よーっし、じゃあトランプやろうか」
リリの頭をがしがし撫でてやればリリは嬉しそうに頷くのだった。
▲△▲
「それは何でしょう?」
コロネの家に滞在して何日か後の夕食後。
リリがピコピコとゲームをやっていればアルファーが不思議そうに尋ねてきた。
私たちは出発前に数日休憩をとって身体を休めようと、コロネの家に滞在しているのだ。
「ゲーム機だけど、マナフェアス達はやってなかったのか?」
私が答えれば、アルファーが頷いて
「コロネ様が似たような物をもっていましたが
このように、いろいろな絵がでるのは始めて拝見します」
と、答えた。
そういえばsionの話ではマナフェアス達が居なくなったのは大分前の話だと言っていたので、コードを入れれば提携企業の品物がゲーム世界に持ち込める仕様が実装される前にこちらの世界にきたのかもしれない。
やはりアルファーもまだ若い男性なだけあって、ゲームに興味があるらしく、目をキラキラさせて眺めている。
わりと心は少年なのかもしれない。
「アルファーやってみる?」
視線を感じたリリがひょいっとアルファーに渡せば
「え、よろしいのでしょうか?」
と、リリと私を交互に視る。
「うん。別にいいぞ。
大体ここはエルフ領で自分の結界も張ってあるし、さらにこの屋敷にはコロネの魔道具の結界もあるんだから襲撃とかもないだろ。
これから忙しくなるんだから少しくらい遊んでもバチはあたらないし」
「じゃあ、やり方は直接脳に送るね!」
と、さらりとチートを告げるリリちゃん。
なるほど、そういう使い方もできるのか。
マジリリちゃん便利。マジ天使。
アルファーはお礼を言うと、嬉しそうにゲームをはじめた。
うん、これでアルファーに現代風の服装させたら普通にゲームを楽しむお兄ちゃんに見えなくもない。
「ああ、皆さんお揃いでしたか」
そんな中、部屋でゲーム機で過去ログを読み漁っていたはずのコロネがひょっこり顔をだす。
流石に滞在5日目とあって過去ログも読みきったのだろう。
「うん?何かあったのか」
「いえ、皆さんにこれを渡しておこうかとおもいまして」
と、コロネが取り出したのは腕輪の魔道具だった。
「……これは?」
「私の密偵に渡しているものと同じ腕輪です。
信号で連絡を取り合うことができます。
まぁ、本当に簡単な連絡のみですが。
念話やパーティーチャットを忘れた時用に、渡しておきますね」
言ってコロネが私やリリ、守護天使達全員に渡すのだった。










