121話 スパーリング
「よーっしっ!!
まぁスキル書は明日にするとして、レイスリーネは私の攻撃をよける特訓だ!」
「は、はい!!」
私の言葉にレイスリーネが槍を構える。
そういえばレイスリーネの武器は槍なんだよね。
やぁ、槍って中二心くすぐられるものがあるのは何故だろう。
などと思っていると
「しかし、街中で訓練しても大丈夫でしょうか?」
と、レイスリーネ。
「……言われてみれば確かに」
いくら力をセーブするとはいえ、やはりそこはレベル1000超なわけで。
熱中してしまえば物凄い被害がでてしまうかもしれない。
「でもなぁ、あまりみんなから離れるのもあれだし」
異界の神々の襲撃があるかもという話を聞いた後では、皆と離れるのはちょっと。
外に出てる間に襲撃がありましたとか考えたくもない。
などと私が考えていると。
「あれー、猫さんたち何してるんですか?」
と、ポーションを抱えたsionが廊下を歩きながら尋ねてきた。
「あー、sion。ポーション作れたのか?」
「はいっ!バッチリっす!アイテムボックスでも最高級ポーションになってますから!
今からリュートさんに見せに行こうかと!」
ニッコニコで言うsion。
「おーやったな!」
私が言えばsionがピースサインをしてみせる。
よほど嬉しいらしい。
「にしても、PVPの練習ですか?さすが猫さんこんな時でも修行してるんですねー」
と、sion。
どうやらsionの中では私はPVPプレイヤー扱いらしい。
そりゃ初参加のときは修行を頑張りまくったが、そのあと私のスキルが尽くPVPで使用禁止にされてしまったため、PVPは数えるほどしかやっていない。
まぁ、ギルド「暁の騎士団」達とはよくふざけてスパーリングをやったりもしたが……って、ん?
そうだスパーリングだ!
グラニクルオンラインではプレイヤー同士、ステータス画面で合意さえすれば模擬戦のようなものを行えた。
スパーリングしますか?のコマンドに両プレイヤーが同意すればPVPフィールドが作成されるのだ。
街中やダンジョンなどPVPフィールドとなると、本来はPK禁止で闘う事ができないプレイヤー同士で戦う事ができる。
このスパーリングフィールド、使える技や魔法などが指定でき、それ以外の物は使えなくなる仕組みだ。
パーティーを組んでいればそのパーティーメンバー同士で戦えたりする。
また街の中で魔法をぶっぱなしても、街の建物が壊れるということはない。
もちろん他のプレイヤーに被害が及ぶこともなく、魔法をぶっぱなしても他のプレイヤーはその魔法すら見えない。
たぶん、魔法で脅かすとかを禁止するためだろう。
スパーリングしている人以外にはただなにやら怪しいポーズで戦ってんなくらいにしか見えないのだ。
このスパーリングフィールド張れば、訓練も余裕になるんじゃね?
「あー、sion。他のプレイヤーとこの世界でスパーリングフィールド張ったことあるか?」
「自分PVP苦手だし、ないっすねー。
こっちの世界じゃひたすらテイムの手伝いさせられてたくらいだし」
「ちょっと試してみたいんだけど、レイスリーネとPT組んでもらっていいか」
「あー了解っす。でも自分は巻き込まないでくださいねー。
ゲームと違ってダメージ通るとかいったらシャレにならないし」
「OKOK。ちゃんと確認してからやるし!」
言って、まずレイスリーネとsionとパーティーを組み、スパーリングの条件をsionと決めて決闘を申し込みフィールドを発動する。
フィールドの範囲は私たちが拠点としているわりと規模の小さめな神殿の敷地内くらいまで。
ちょうどいい大きさだ。
これで高火力技は使用禁止になっているはずだ。
「それじゃあいくぞー!
まずは建物を破壊しなくなってるか確認だ!」
私が呑気に言って、鎌で庭の石を切れば
サクッ!!!
あっさり二等分された。
………あれ?
「切れてますね。ゲームじゃ効かないはずなのに」
と、sion。
「効果がないのでしょうか?」
と、レイスリーネ。
「えー。何だよ。役にたたないなぁ。
スパーリングフィールドはこっちの世界じゃ無効なのか」
などとsionとレイスリーネの3人でいろいろ試していると
「大変です!!猫様っ!!」
血相をかえたリュートが飛び出してきた。
「どうした?」
私が言えば
「何故か神殿内で魔法が使えなくなりました!敵襲かもしれません!!」
リュートの言葉に私たちが固まる。
あー……そういえばわりと使える魔法を指定してしまったので使えなくなった魔法は多いはずだが……。
フィールドはステータス画面で了承したメンバーにしか効かないはずだ。
まったく無関係の人には効果がないはずなのだが……。
「えーっと、ちょっと待って」
私が言い、sionとスパー解除を行うと
「これでどうだ?」
私が言えば、リュートが明かりの魔法を唱え……
「ああ、使えました。
……犯人は猫様たちでしたか」
と、ジト目で睨まれる。
はい。あのなんだかすみません……。
結局その日は迷惑をかけた神殿の人たちに謝ることになったのだった。
この世界びみょーにゲームと違うからめんどくさい……。










