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114話 コロネ・ファンバードの過去イベント


「……もう時間がない」


 すでに朽ちかけた神殿のような場所で、神官服の男がボソリと呟いた。

 私はこの場所に見覚えがあった。そう聖水を汲みに行ったエルフの隠れ家の神殿だったのだ。

 そして神官服の男の顔を見やれば……確かにコロネだ。

 ただ、私の知るコロネより歳をとっているようにも見える。

 シワも多く、白髪もあるのだ。

 それでも、その精悍な顔立ちはコロネに間違いない。

 これがコロネのオリジナルなのだろうか?


 私は思わず、コロネに手を伸ばすが――するりとすり抜ける。

 他のゲームでのイベント同様、私はここに居ないことになっているらしい。


「……結局、私は何も出来なかった。

 神々が自らの命とともに異界の神々から、守った人間たちは……異界の神々にひれ伏し、見捨てられた」


 そのコロネの言葉とともに、部屋の中央の大きな水晶のようなモノに手を伸ばす。

 私たちが調べた時には何もなかった台座には水晶に入れられた人々が置かれていた。

 そしてコロネが見つめる水晶の中には――金髪の綺麗な女性が眠るようにその中に居た。


 コロネはその水晶の女性に話しかけるように、言葉を続ける。


 その瞳は――とても優しく……きっとこの女性の事が、コロネは好きなのだろうと思わせる。

 そんな表情だ。

 私はちくりと胸の痛みを感じる。

 うん。なんだろうこの感じ。

 ものすごくムカムカする。

 私のムカムカなど知る由もない、過去のコロネは、まだ言葉を続けている。



「本来の神々を退け、別の巨人より生まれし神々が世界を支配したことに、原初の巨人と審判の御子は判決を下した。

 この世界は近いうちに無にかえる。

 魂もなにも――すべて消え失せて存在自体なかったことになってしまう


 そうなる前にせめて――貴方達の魂だけでも――」


 コロネが言いかけたその時、急にコロネは何か気づいたかのように振り返る。


 そして――私と目があった。

 コロネが驚きの表情でこちらを見やる。

 

「――え?」


 いままでイベントムービーでなかった出来事に私は思わず固まる。

 イベントでこちらの存在を気に留めるなどということは決してなかったのだ。

 NPCが勝手にペラペラしゃべって終わりなのがイベントムービーのはずなのだが。

 なのに――

 

 過去のコロネは私を見て……そして認識している。

 先程まで触れる事すらできなかったのに。


「何故――貴方がここに―――」


 過去のコロネが私に手を伸ばし――ー



 △▲△


「猫様っ!!大丈夫ですか!!」


 コロネの心配そうに叫ぶ声で私は目を覚ました。

 いつの間にかコロネに抱きかかえられていたらしい。

 倒れた私の顔を心配そうに皆のぞき込んでいた。


「ネコっ!!よかった!!目覚ましたっ!!」


 よほど心配したのか涙目のリリが私に抱きついてくる。


「大分うなされていましたが、大丈夫ですか?猫様?」


 と、レイスリーネ。


「……ああ、うん。なんだか夢を見ていたらしい」


 私は抱きついてきたリリの背中をぽんぽん叩きながら立ち上がろうとするーーが、目眩にまたコロネに支えられてしまう。


「急激にレベルがあがったせいでしょうか?

 あまり無理をしないでください。もし、目眩がするようなら自分が猫様を運びます」


 と、コロネ。心配そうに私を見つめるその瞳は――恐らく本当に心配してくれている。


 ……でも。もしコロネに今見たことを話せば、コロネはあの女性を思い出すのだろうか?

 恋人か何かで捕まっているのだとしたら――

 その真相を探るために、もしかしたら私達の元から去ってしまうのだろうか?


 よくわからない不安がもやもやと心を占める。


「コロネ、審判の御子って知ってるか?」


 私の問いにコロネは眉根を寄せて――


「それは……ゲームの話か何かでしょうか?

 申し訳ありません、わかりません」


「じゃあ、原初の巨人は?」


 その問いにコロネは黙って首を横に振る。


 そして……私は何故か安心した。


 うん、ならまだ今見たことを話さなくてもいいよね。

 だってわからないんだから。ずるいのはわかってる。

 それでも――今は話したくなかった。

 

 そして、安心したのか――私はそのまままた意識を失うのだった。


 


 △▲△


「レベル1114だと……!?」


 私は上がったステータスを確認して……絶句した。

 特殊イベントをクリアしたおかげか、私もリリもコロネもレベルがきっちり+200されたのだ。


 私   レベル1114

 リリ  レベル1046

 コロネ レベル1037


 ちなみに、私たちはすでに帝都に戻り、城の中にあてがわれた部屋で休んでいる。

 私が目を覚ますと、安心したのかリリはすぐお昼寝タイムにはいり、守護天使達は魔獣セファロウスの放った魔素で生まれてしまったモンスターを倒しにいった。

 ザンダグロムは結局到着することなくコロネの指示で魔王にそなえエルフ領に帰ったらしい。

 いま部屋にいるのは寝ているリリと私とコロネだけだ。


「はい。

 それと、報告なのですが……」


 言ってベットに座っている私の前でコロネが何故か上着を脱ぎだした。


 え!?ちょ!?何故脱ぐし!?

 慌てまくる私を他所にコロネは上着を脱ぐと、シャツも脱ぐ。

 そして脱いだその先には――義手ではなく、神々の紋章の刻まれた右腕がコロネの腕にはあった。


「――何故か私の腕がアルファーの回復魔法で復元しました。

 魔獣セファロウスを倒したのが関係しているのかもしれません」


 と、コロネ。

 ああ、それを見せたかったのか。

 なんだ。物凄くびっくりした。


「おお!?やったなコロネ!おめでとう!!」


「はい。――ただ」


「……ただ?」


「背中に別の紋章ができました。

 猫様はこの紋章が何かご存知でしょうか?」


 言って、コロネが背中を見せれば――確かに以前はなかった紋章がコロネの背中に刻まれている。

 私はじっとその紋章を見つめ――



「………うん。わからん」


 いや、でもどこかで見たことある気もする?

 どこだったっけ?

 なんか中央のちっこい模様がゲームの中で見たことある気がするんだよなぁ。

 罠関連で似たようなのがあった気がする。

 でも罠なら全部文様丸暗記してるしなぁ。

 確か神様関連だった気がするんだけど。


「コロネ、もうちょっと近くに」


「あ、はい」


 コロネがベットに寄りかかり私に近づこうとしたその瞬間


「コロネ様、少しよろ……」


 何故か窓から入ってきたアルファーが言いかけて、その言葉を止める。


 ベットに乗った状態で上半身裸のコロネと私を見比べ――


「も、申し訳ありませんでしたっ!!」


 と、顔を真っ赤にして飛び去ろうとする。

 うん。ちょっと待てや。

 思いっきり勘違いして飛び立とうとするアルファーを私は罠のロープで捕縛した。


「だ、誰にも言いませんからっ!!」


 と、まだ勘違いしてるアルファーに、やっと状況を理解したのか


「そ、そういう事をしていたわけではありませんっ!!」


 コロネが顔を赤くして反論するのだった。





誤字報告ありがとうございました!とても助かります!


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