110話 みつけた
「じゃあ、何か、コロネが自爆呪文使いながら、そのセファロウスの心臓核を破壊するっていうのか?」
コロネの説明を聞いたあと、私は改めて問う。
以前コロネに渡した、ゲームの攻略本にはセフィロウスの超回復の秘密♪などという隠し設定もちゃっかり記載されていたらしい。
その記載によると、セフィロウスが超回復するのはセフィロウスがもつ心臓核のせい。
心臓核はダメージをうけると、すぐさま新しい細胞をつくりだしセフィロウスを修復するのだ。
コロネが超回復を止めることができたのはその心臓核の動きを聖杯が封じる力があったかららしい。
「はい。攻略本にはこう記載されていました。
新たな細胞は、セフィロウスの古い細胞と合致した時、レベル1なのが同レベルになると。
つまり、細胞が誕生した時点ではレベル1です。
なんとか私の自爆攻撃で、セフィロウスから一瞬だけでも、心臓核だけの状態にすれば壊す事が可能ということになります」
「それを壊せれば……回復出来なくなるという事か?」
「はい。うまく行けばそのまま消滅させられると」
「……でも、コロネ いっぱい死ぬ?」
と、不満そうにリリ。
以前女神の嫌がらせで手に入れた魔法書の中に、自らの命と引き換えに、レベル補正関係なしに大ダメージを与える書がはいっていたらしい。
その技を連ちゃんで使えば、コロネの計算では心臓核の場所にまでたどり着けるらしいのだ。
「はい。ですがアルファーとファルティナが復活の魔法を使えます。
同じパーティーに入っていれば遠距離でも復活させる事も可能です。
二人が魔法が再度使えるまでのクールタイムの時間を計算すると、復活の指輪も所持している指輪を全て使うことになりますが……。
私の計算では、それで心臓核まで壊せるはずです。
それにもしかしたらゲームとは違い、ダメージを0にしても心臓核が残ってしまえば、生き返ってしまう可能性もあります。
闇の女神の涙などを使用するよりも確実に心臓核を壊せるこちらの作戦の方が有用かと思われます」
後ろで物凄い嫌そうな顔でレヴィンも聞いているが……やはりこれからの事を考えると対魔王用に闇の女神の涙はとっておきたい。
私達の預かり知らぬ場所で人間の命を捧げて復活しました!とかされる可能性もなきにしもあらずなのだ。
コロネが痛い思いをして死にまくるというのは正直賛同しかねるが……他にいい案も思いつかない。
「……わかった。何か他の作戦をいまから考えるけど、どうしてもダメなようなら、それでいこう」
私が言ったその時。
「……セフィロウス復活した!!」
リリががばっと立ち上がり叫んだ。
「え!?」
その場に居合わせた者の視線がみなリリに集中する。
「大きな大きな気がいま生まれた!! 帝都の近く!!
たぶんあれセフィロウス!!帝都に物凄い速さで向かってきてる!!!」
ああ、くそう!まだザンダグロムも来てないし、作戦も考えてないのになんでこうも速く復活するかな!?
もう少し時間をくれてもいいと思うのだけれど!!
「リリ様!竜化して皆をその場所まで!
レヴィンはこのことをマルクに伝えてください!」
私も慌てて魔力察知してみるが……確かにレベル1000の何かがこちらに向かってきている。
このままだと帝都やばい。マジでやばい。
「仕方ない!!さっきの作戦で!!
皆コロネのフォローを!!
行くぞ!!」
言って、私はコロネに指輪を渡すとひと足はやく、瞬間移動でセフィロウスの場所に向かうのだった。
△▲△
異様な光景だった。
魔獣セフィロウスはもともと、魔獣セギュウムと、よく似ている。
カエルが異形に変形したような姿で、身体の部分の他に無数の取り込まれた人々の顔があるのだが……。
そこに見慣れた顔があったのだ。
セフィロウスの頭のてっぺんに……コロネに残忍な拷問をしたプレイヤーレオンの顔が。
ゲームでは本来そこは宝石だったその場所に。
他にもプレイヤーらしき顔は見られたが、他の顔は瞳に色がなく、ただ、あああああと声にならない悲鳴をあげているだけなのだが……。
レオンの目にははっきりと色があり、愉快そうな笑いを浮かべている。
レオンの顔をもつ魔獣セフィロウスが、物凄い速度で王都に向かっているのである。
魔獣の通ったその道は、どす黒い紫色に変色し、死の香りを振りまいている。
『コロネっリリっ!!姿を隠して!!
まず私が様子をみるっ!!』
今向かっているであろう、リリとコロネに念話を送る。
――なんとなくだが、この魔獣にリリとコロネを見せてはいけない気がしたのだ。
もしかしたら、レオンの意思が残っているかもしれない。
そして、私は精神防御を解除し、リリやコロネ達にも私の見たものが伝わる状態にしておく。
「レオンっ!?」
私が空中で叫べば、魔獣セフィロウスの上部のレオンの顔がこちらを向き――にたりと笑った。
刹那。
私がいた空間を、何かが通り抜けた。
咄嗟にカンで瞬間移動で躱したが、その攻撃は早くてみえない。
魔獣セフィロウスの舌が私の横を通り過ぎ、そして再び口の中に戻る。
そして、私を見ていたレオンの顔がにんまりと微笑み。
「みーーつーーーけーーーた」
狂気じみた笑を浮かべるのだった。










