108話 脱走
『猫様っ!!!大変ですっ!!!!』
城からちょっと離れたところにテントを設置し就寝中。
いきなり念話で話しかけてきたのはアルファーだった。
彼はプレイヤー達の処刑の役目があると帝国領に残してきたのだ。
『どうした!?』
私が起きてそのまま問えば
『捕まえていたプレイヤー達が全員消えましました!
コロネ様がつくった牢屋の魔道具ごと連れていかれたようです!!』
と、慌てた様子で報告してきた。コロネも慌てた様子で、私の部屋にローブを羽織ながら入ってくる。
結局あのあと、ローズの襲撃を恐れ、私たちはとっととコロネの密偵に任せて城を後にした。
既に内政のできる人物に話を通してあり、帝国や死霊都市程領土も広くないので、コロネがでばる必要もないのだとか。
少し離れたところにテントを設置し、普通に休んでいたのだが、寝静まった頃、アルファーからの念話である。
『猫様、こちらもです!!マナフェアスが魔道具ごと連れていかれました』
そう言って会話に混ざってきたのはファルティナ。
彼女の話によればマナフェアスもつれていかれたらしい。
『どうなってるんだ!?』
私が言えば
『わかりません。ですが私の魔道具に手をだせたということはレベル800超の存在。
魔族、もしくは異界の女神関連かと。
とりあえず、どのように連れ去られたのか、見てみる必要があるかと。
今ならまだ移動のとき行使した魔力の痕跡をたどれるかもしれません』
『わかった!!アルファー今すぐ行く!!
ファルティナ達も帝都にこれるか?』
私の問いにファルティナとレイスリーネも「はい」と頷くのだった。
▲△▲
「……これは……」
帝都に戻り地下にあるガランとなった牢屋を見て、コロネが息を呑んだ。
確かにコロネが設置した牢屋型魔道具が全てなくなっていたのだ。
わりと結構な大きさだったにも関わらずである。
あのプレイヤー達は後に人間達に法で裁かれ死刑になる予定だったので、私のアイテムボックスには入れてなかった。
こんなことなら他のプレイヤー同様、石化してアイテムボックスに入れておくべきだったのかもしれない。
「魔力の痕跡はたどれそうか?」
私の問いにコロネは首を横に振る。
「既に消えています。
これでは追跡は不可能です」
「しかし、彼らを誘拐することで何のメリットがあるのでしょうか?」
一緒に牢屋へきたマルクさんが尋ねる。
確かに。
コロネの話によれば彼らを誘拐したのはレベル800以上の存在のはず。
レベル200のプレイヤーを連れ去って何のメリットがあるのかまったく想像がつかない。
「その件なのですが」
と、今度はレヴィン。
彼はマルクさんの手伝いで帝国に残っていた。
「何か心当たりでも?」
「不確定な情報なのですが、プレイヤーの一人デュークが自分たちは魔獣セファロウスを復活させる事ができると言っていたそうです」
レヴィンの言葉に、私とコロネが固まった。
『魔獣セファロウス』
ゲーム時代レベル100のレイドイベントのボスだった魔獣の名前だ。
昔、あまりにも凶暴だった魔獣が神々の力で封じられたのだが、現代になって蘇ってしまい、それをプレイヤー皆が一丸になって倒すというイベント。
テオドールがエルフの力を犠牲にして手に入れた聖杯『ファントリウム』でNPCだったコロネが『神々の紋章』と聖杯を使いその魔獣の超回復を防ぐという役割をになっていた。
イベントでは、コロネに刻まれた腕の神々の紋章を通じて次元の奥深くに最後は封印されたはず――ああ、そうか!?
なんで、こんな大事な事を忘れていたのだろう。
コロネの腕に刻まれた紋章には『魔獣セファロウス』を復活させる事ができる可能性があったのか!?
だからコロネを誘い出してまで腕を切り取って奪いとったのだ。
「まさか、コロネの腕の紋章を使って魔獣セファロウスを復活させる気か!?」
「流石に自分ではそこまではわかりません。
ですが、デュークが魔獣セファロウスを復活させることができると言っていた事があると、彼に妾にされていた女性が言っていました」
「何故、そのような大事な事をいままで報告しなかったのですか?」
と、コロネが睨みながら聞けば
「はい、実は昨日口説いて一夜をともにした女性に聞いたばかりの話でしたので。
もう少し裏取りをする予定でした」
と、何故かコロネに睨まれて嬉しそうに報告するレヴィン。
――うん。この人もちょっとMっ気趣味があるのかもしれない。
何この似たもの主従。
私の周りの男性ってどうしてマトモなのがいないのだろう。
てか、リリもいるのにさらりと一夜をともにしたとか言うなし。
「……あなたは女性と結婚する気はないと言っていましたよね?
それなのに肉体関係をもったと?」
「合意の上です!問題ありません!」
きりっと答えるレヴィンにコロネは大きくため息をつき
「その話はとりあえず置いておきましょう。
以前リリ様にプレイヤーの記憶を見せてもらいましたが、そのような情報は一切ありませんでした。
つまり、彼らの記憶を女神は消していた事になります。
こちらに捕まってしまうことは想定済みだったのでしょう。
また魔獣の復活に何故彼らが必要なのか知りたい事は山ほどありますが、私たちが今一番優先して考えなければいけないのは――」
コロネがそこまで言い、大きくため息をついて。
「レベル1000の魔獣セファロウスを聖杯の力なしで私達の手で倒さなければいけないということです」
コロネの告げたその言葉は――わりと絶望的なものだった。








