106話 ツッコミが追いつかない
私たちが城壁を飛び越えてに入った時。異様な雰囲気だった。
コロシアムから男達の殺せという声が沸き起こり、コロシアムの周りに集まった女性達が祈るようなポーズを捧げていた。
「何事でしょうか?」
瞬間移動と、浮石を駆使して空を飛びつつ言うコロネに
「コロシアム、いま死刑されそうな子いる」
と、リリが答えた。
「死刑?何か罪を犯した人でもいるのか」
「罪状――プレイヤーの服にワインこぼした」
リリの言葉に、私とコロネが固まる。
はい。ちょっと意味がわかりません。
プレイヤーの服にワインこぼしたくらいで死刑にされんの?
「リリもよくわからない。面倒。もう聞こえてくる心の声。ネコとコロネに送る」
送られてきた死刑理由は――とってもくだらないものだった。
△▲△
コロシアム中央に置かれたギロチン台。
その両脇にたたずむ槍をもった兵士達。
そして一人の少女を中央におき、殺せ殺せと大合唱にする異様な目をした男たち。
私たちがコロシアム上空に到着したとき。
まさに死刑が執行されるその直前だった。
「貴様っ!!私とカノに嫌がらせをした数々を忘れたのか!!
私たちが二人で歩いているところを前を横切っただろう」
プレイヤーカノの肩に手をおいた王子が、一番偉そうな観客席から叫び、少女が何か口答えをした。
そして、両脇の兵士達が槍で少女を貫こうとする。
「そのギロチンは何の意味があるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私の絶叫とともに、私の放った一撃で兵士二人が吹っ飛ぶ。
いや、だって目の前にギロチンあるんだよ!?
普通ギロチンで殺すと思わない!?
や、殺させる気はないけどさ!!
「まずそこにツッコミを入れるとはさすが猫様」
少女を保護するかのように抱きかかえ言うコロネ。
「ねーネコ、この人たちはどうするの?全員死なない程度にぶっ飛ばす?
ショック療法!」
と、コロシアムにいる人たちを眺め聞いてくるリリちゃん。
「や、リリちゃんやめて。リリちゃんがそれやったら大惨事になるから」
リリちゃん的に手加減してるつもりでも、まったく手加減できてないのがリリちゃんなのだ。
何かやったらきっと死屍累々になる姿しか思えない。
そんなことになったら復活の呪文をする羽目になるコロネが過労で死んでしまう。
「大丈夫!リリ、手加減の方法漫画で学んだ!峰打ち!」
「爪に峰あるのか?
ってか、爪があたっただけで死ぬから。武器に触れただけで死ぬから
レベル差考慮して!?」
「むむむむむ。人間ヤワイ!」
いや、リリちゃんが強いだけです。
「な、何者だ!?」
一瞬何がおきたのかわからず、ぽかーんとする会場だったが、罪状を読み上げていた神父らしき男が私たちを指さした。
「ネコのペットと!」
「その下僕です」
すかさず私を指さして答えるリリとコロネ。
「お前らぁぁぁぁぁぁぁ!!!それ気に入ったのかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
コロネに抱き上げられた少女から痛い視線を浴び、私は絶叫をあげるのだった。
▲△▲
「何を邪魔をする!!その女はカノのドレスに嫌がらせでワインをかけた極悪人だぞ!!」
観客席の一番いい席から王子らしき美形ハーレムその1が叫び、
「その通りです。あまつさえ、カノの苦手なキュウイを食卓のメニューに並べた!!」
と、女子プレイヤーを守るように前に立、叫ぶ騎士美形ハーレムその2。
「その通りです。彼女はカノに嫌がらせをするという大罪をおかしているのです。
晩餐の時にカノの席だけ用意しなかった!
誰かは存じませんが邪魔はしないでいただきたい」
と、なかなかの中年イケメンだった神官ハーレムその3。
はい。魅惑怖いです。ちょっと何言ってるかわからないです。
なんだよ。子供の嫌がらせレベルの事で死刑とかありえないだろ。
ってか、その大罪とかってこの少女の記憶覗いたけれど、はっきりいちゃもんレベルじゃねーか。
いきなり押しかけてきて、席がなかった✩
キュウイを前日までパクパク食べていたのに、急に苦手なの✩
いきなりぶつかってきてワインをこぼされた✩
とかやったのはそっちのカノとかいうプレイヤーだろ。
いや、別にそれがなくても死刑はありえんが。
「カミュ怖い……」
つい、カノを睨めば、カミュとかいうハーレムにカノがぎゅっと抱きついた。
ピキィィィィィ!!!!
顔が引き攣るのが自分でもわかった。
「あ、ネコ怒ってる」
「そうですね。珍しい」
と、実況中継する二人。
ええええい。五月蝿い!!女の敵は女なのだ。
嫌いなんだよ!!ぶりっこで男たらしこんで、男に嘘吹き込んで悲劇のヒロイン演じるタイプ!
小学生の時いたんだよ、この手のタイプが。
私も一度悪者にされたことがあるんだよ!
もちろん、嘘証明してみせたけど!
「いい加減ぶりっこ演技はやめたらどうだ。
こっちはプレイヤーだ。
お前の誘惑は効かない」
私が言えば、カノは涙目になって
「ぶりっこなんて酷い。
私は止めたの!死刑なんてよくないって!
でも皆がっ」
ピキピキピキ。
レベル203がレベル20前後の雑魚を止められないとかなんの冗談かなー?
魅惑してて止められないとかないだろ、マジで。
「ネコ、本気で怒ってる」
「初めて見ました」
若干、引き気味に避難しはじめる二人。
周りの男達はそんなカノをちやほやと慰めはじめる。
あああ、やばい。もう全員なんでやねんと吹っ飛ばしてやりたい!でもそれやるとマジ死ぬ!
私は地面に一気に魔方陣を書き上げるとトラップを発動した。
【ツッコミのタライっ!!!】
私の一言とともに……その場に居た全員にトラップのたらいが落ちてくるのだった。
▲△▲
「さぁ、取り巻きハーレム共は全員気絶したぞ。
何か言いたい事はあるか?」
コロシアムで、カノ以外の男性達はみなタライの効果で気絶状態におちいっている。
今は私とカノが対峙するのみだ。
「そ、そんな!!なんで!!
別に貴方に迷惑かけてないじゃない!
何で邪魔するの!?」
と、プレイヤーカノ。
「何でも何もないだろう!!
こんな意味のない死刑をやっているのに放っておけるかっ!!
謝れっ!!ローズに謝れっ!!
お前たちがイチャイチャ国政をないがしろにしてたのを一人で切り盛りしてただろう!!
彼女がどんなに血がにじむような思いをしてこの地を切り盛りしていたのかわかるか!!
お前が男達を魅了したせいで、全然仕事のできなくなった男達の代わりに一人で戦ってたんだ!!」
「酷いっ!!
私だって努力したわっ!!
ここの作物がよく育つように魔石をくだいていれたり!!
学校を庶民にまでつくったり!!
何で私の努力を見てくれないの!?
そんな女よりよほど国の為に尽くしたわ!」
「魔石を砕いていれた?」
私が問うと、カノは何故か誇らしげに胸をはって
「そうよ。
ダンジョン産の魔石を農地にまくと、植物がよく育つの。
私が発見して各地に広めたのよ!凄いでしょ?」
「犯人はおまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私の怒りのハリセンがカノに直撃するのだった。








